上白石萌歌「死ぬまでにやりたいことリストを作るだけでもすごくいい人生になると思う」#学生の君に伝えたい3つのこと
人生の先輩である著名人の方々から、まだまだ自由に使える時間が多い大学生のみなさんに、“学生のうちにやっておいたほうがいい3つのこと”をアドバイスしてもらおうという連載「学生の君に伝えたい3つのこと」。
今回は1月10日公開の映画『366日』でヒロイン・美海を演じた上白石萌歌さんが登場。ご自身の経験からのアドバイスや学生時代の思い出の楽曲を教えてくれました。
【写真】上白石萌歌の撮りおろし俳優・上白石萌歌が<学生の君に伝えたい3つのこと>
1.時間のある学生のうちに旅をしておく
――学生のうちにやっておいたほうがいいと思うことはありますか?
旅ですかね。大学時代は人生の夏休みと例える方も多いくらい比較的時間があって、時間があるときしかできないことをしたり、興味があるところに飛び込んでいけるときだと思うんです。その中でも旅というのは社会人になったり、家庭を持ったりするとなかなかできないことだと思うので、ガイドブックで見てよさそうだなと思う写真が一枚あったら行ってみるという経験も大事なんじゃないかなと思います。
2.死ぬまでにやりたいことリストを作るだけでもすごくいい人生になると思う
――上白石さんも実際にそういう経験があるのでしょうか。
旅行は好きで、大人になった今でもたまに行ったりするんですけど、いくら写真で見ても自分の目で見ないとわからないことってたくさんあって。私は画家のマティスが好きで、マティスが最後に作ったと言われる教会を死ぬまでに見に行きたいと思っていたんですけど、「いや、いつ死ぬかわかんないから行こう」と思い立って南フランスのニースに行ったことがあるんです。そういう記憶って一生残り続けますし、死ぬまでにやりたいことがたくさんあったほうが人生も豊かになる気がするので、そういうリストを作るだけでもすごくいい人生になると思います。
――マティスが作った教会を見に行く以外にも、やりたいことはありますか?
今はスペインのサクラダファミリアが完成したから行きたいというのと、幼少期に3年間住んでいたメキシコに家族全員で行きたいというのが死ぬまでにやりたいこととしてあります。
3.大学生のころはandymoriをたくさん聞いていた
――学生時代に聞いて励まされた楽曲や思い出の曲はありますか?
私は大学生のときが一番音楽を聞いていて、中でも今はもう解散したandymoriというカリスマ的なバンドのアルバムを聞きまくっていたときがあって。『1984』というアルバムが本当に大好きで名盤だと思っているんですけど、アルバムと同じタイトルの「1984」という曲は「5限が終わるのを待ってた」という歌詞から始まるんです。大学生は“何限”という時間に区切られる最後の時代だと思うので、そういう感覚を大事に聞いてほしい一曲です。
赤楚さんと中島さんの持つ力のおかげで自然に空気を作れた
――上白石さんがヒロインを務めた映画『366日』が1月10日に公開されますが、作中では学生時代からの20年という長い時間を演じられています。演じる上で心がけたことや難しさを感じたことはありますか?
映画は2時間くらいの尺なので、その中で20年を見せるとなると、私の気持ち的には朝ドラのダイジェストを撮っているような気持ちというか(笑)、「今日は何歳で今日の午後は何歳、明日は何歳だよね」みたいな確認をしながら撮っていて。沖縄と東京でも撮影が分かれていましたし、恋が実った日と別れて悲しい日を一日で撮らなきゃいけなかったりもしたので、心情的にはものすごく大変ではありました。ただこの美海という役は人に影響を受けてそこにいるというか、人のことを一番に考えられる人で誰かに与えるということが軸になっている気がしたので、そのシーンのその場にいる方のお芝居を信じて受け取っていけば、自然とその年齢に見えるだろうなと考えてお芝居をしていました。周りの環境に助けられながら自分の現在地を確認できたので、気持ちや年齢の切り替えはあんまり苦ではなかったです。
――赤楚衛二さん演じる湊、中島裕翔さん演じる琉晴とのシーンが印象的ですが、それぞれと美海との関係性についてはどう見ていましたか?
不思議とお互いに何にも相談せずに、よーいどんで始めた本読みの時点から関係性ができていたというか。琉晴といると美海は本当に心から安心した振る舞いになるなとすぐわかりましたし、湊といるときはまた別のベクトルというか、違う空気が自然と生まれていたので、それぞれの役を演じていらっしゃった赤楚さんと中島さんの持つ力のおかげで変に考えることなく、自然に空気を作れたかなと思います。作品を観ても美海と琉晴のやりとりはすごくほっこりするというか、本当に理想的なふたりで。同時に切なくもなるし、もうずっとこのまま一緒にいてほしいな、みたいな気持ちが生まれるんですけど、湊は湊でものすごく魅力的で、ふたりでいるとすごく刹那的な美しさがあって。こうも一緒にいる人によって生まれる表情とか空気が違うんだなと、美海をお母さんみたいな気持ちで見ている自分もいて(笑)、それはすごく不思議でしたね。
迷う前に飛び込んでみるということはものすごく大事
――題材になったHYさんの「366日」について、演じる前と作品が完成した今とで楽曲の印象や捉え方に変化はありますか?
私が「366日」を初めて耳にしたのは多分10代の半ばとか、それよりもっと前だと思うんですけど、当時は恋の痛みとか失ったものに対しての悲しみみたいなものを多くはらんでいる曲だなと思ったんです。この映画を撮り終えて大人になった今考えると、そういう痛みですらものすごく幸せというか。誰かに対して大事だなと思ったり、その中で生まれる苦しみや悲しみみたいなことも全部ひっくるめて美しいものだな、すごく幸せな曲だなと思いますね。
――美海が将来を決める上で自分の夢はもちろん、湊と一緒にいることもすごく大切にしていましたが、お仕事や将来のことを決める上で上白石さんが軸にしていることや大切にしていることはありますか?
迷う前に飛び込んでみるということはものすごく大事かなと思っています。今まで自分が携わってきた作品とかいろんなことを振り返ったときに、これまですべての出会いがあってよかったなと思うんですけど、やっぱり何事も飛び込む前が一番怖いんですよね。「この役は自分には無理かもしれない」といつも思うんですけど、でも飛び込んで出来上がったものを見て、自分が携わった意味みたいなものが少しでも作品の中にあると本当にやってよかったなと思うので、迷うんだったらやってみるということが軸としてあります。
PROFILE
上白石萌歌
2000年2月28日生まれ、鹿児島県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、デビュー。近年の主な映画出演作に『羊と鋼の森』(18)、『未来のミライ』(18/声の出演)、『劇場版ポケットモンスター ココ』(20/声の出演)、『子供はわかってあげない』(21/主演)、『KAPPEI カッペイ』(22)、映画『アキラとあきら』などがある。
映画『366日』1月10日(金)全国公開
2024年2月29日、東京。音楽会社に勤める湊の元を、一人の少女が訪れる。戸惑う湊に彼女が渡したのは、一枚のMD。そこに入っていたのは、15年前に別れた恋人・美海からのメッセージだった――。 20年前、沖縄。高校の後輩・美海と出会い、初めての恋をした湊は「いつか湊先輩の作った曲、聴きたいです」という美海の言葉に背中を押され、東京へ。2年後に美海も上京し、湊と再会。2人の幸せな日々が始まる。「こんな幸せな日々が、365日ずっと続きますように」そう願っていた2人。しかしある日、湊は突然別れを告げて、美海の元を去ってしまう。失恋の悲しみを抱えたまま美海は沖縄へ帰郷。2人は別々の人生を歩むことに…。 あの時伝えられなかった想い。果たせなかった約束。 美海からのメッセージを聞いた湊は、ある決断をする――。
https://movies.shochiku.co.jp/366movie/
取材・文/東海林その子
撮影/米玉利朋子