静岡発のクラフトビール 都内に連続オープンの理由 音楽&アート融合の新空間
■静岡市用宗の「West Coast Brewing」 都内に直営店2店舗
静岡市の港町・用宗から生まれたクラフトビールブランド「West Coast Brewing(WCB)」が、東京に相次いで直営店をオープンした。地方の小さな漁港に拠点を置くブルワリーが、なぜ都心の一等地に挑むのか。その背景には、熱狂的なファンの声と、音楽と融合した独自の世界観があった。
WCBは2019年、静岡市・用宗漁港の一角にあった魚の加工場を改装し、醸造を始めた。オーナーのバストン・デレック氏は建築家でもあり、アメリカのクラフトビール文化をルーツに「ホップの香りを生かした個性的なビール」を次々と世に送り出してきた。
WCBは静岡県内に5店舗、大阪に2店舗、沖縄に1店舗を構える。醸造所の隣には“ブルワリーに泊まれる”ビアホテルも併設し、地元の観光スポットとしても注目されている。
そして、6月に丸の内「Hopbeat Records」、8月には虎ノ門「WCB The Room」を立ち上げ、いずれも大きな話題を呼んでいる。東京進出の転機は、六本木「東京ミッドタウン」で実施した期間限定のポップアップイベントだった。2年連続で出店すると、想定を上回る来場者が訪れ、缶ビールも連日完売。ファンの「常設店を東京でも」という声が数多く寄せられ、本格的な都内出店を後押しした。
■2000枚のレコードやDJブース ビール片手に音楽満喫
丸の内「Hopbeat Records」は、東京駅直結の新丸ビル地下1階に立地する。壁一面に2000枚のアナログレコードがずらりと並び、スタッフがその日の気分でジャズのレコードに針を落とす。常時6種類の樽生ビールに加え、10種類以上の缶ビールがテイクアウトできる。新幹線に乗る前に“車内ビール”として買い求める利用者も多く、利便性と遊び心を兼ね備えた店として評判だ。
虎ノ門「WCB The Room」は、20種類のドラフトビールをそろえる大型のビアレストラン。Tex-Mex(メキシコ風アメリカ料理)を中心に、ビールと相性の良い創作料理を提供する。店内にはDJブースと音響設備を完備し、音楽イベントにも対応。昼はランチ、夜は仕事帰りの一杯、週末はパーティーと、オフィス街にありながら多彩な顔を持つ“大人の遊び場”となっている。
両店舗の共通点は「ビールと音楽」、「アートの融合」である。店内の壁には、WCBの缶ラベルに登場するオリジナルキャラクター「Hop Dude」の世界観が広がり、国内外のアーティストによるミューラルアートが空間を彩る。訪れる人は、グラスを片手に音楽に浸り、アートを眺めるひとときを楽しめる。
静岡発のブルワリーが、なぜ東京で次々と店を構えるのか。その答えはシンプルだ。ファンの熱い声に応えるため、そしてクラフトビールの魅力をより多くの人に知ってもらうためである。丸の内と虎ノ門という都心の拠点から、WCBは「静岡の港町から始まった小さなブルワリー」の物語を、全国へと発信しようとしている。
(SHIZUOKA Life編集部)