巨匠カーペンターの“低予算・自主制作”な伝説的SF映画をスクリーンで!50周年『ダーク・スター』劇場公開
巨匠ジョン・カーペンターの長編デビュー作
『要塞警察』(1976年)や『ハロウィン』(1978年)、『ニューヨーク1997』(1981年)に『遊星からの物体X』(1982年)、『ゴースト・ハンターズ』(1986年)、『ゼイリブ』(1988年)などなど、ジョン・カーペンター監督が手がけてきたサスペンス、SF、ホラー作品の数々は、いまだ多くの映画ファンの心を掴んで話さない。
そんな巨匠カーペンターのデビュー作『ダーク・スター』(1974年)は、ジョージ・ルーカスやロバート・ゼメキス、ロン・ハワードらと同じく南カリフォルニア大学(USC)の映画学科に通っていたカーペンターが、親に借りたわずかな資金で1970年から取り組んだ最初の企画だった。
大学の同級生で、のちに『エイリアン』(1979年)の脚本を手がけることになるダン・オバノンと共同で制作した本作は、のちに数万ドルの資金を得て長編化。1974年に限定的に劇場公開されるとじわじわ人気を集め、80年代にVHSが発売されたことでカルトSFコメディとして長らく愛される作品となった。
いま『ダーク・スター』をスクリーンで観たい!
カーペンターいわく、スタンリー・キューブリックの『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964年)と『2001年宇宙の旅』(1968年)がインスパイア源という本作。自身で音楽も手がけ、オバノンも共同脚本だけでなく美術と編集、出演を兼任している。
地を這うようなシンセ音楽をはじめ、のちのカーペンター作品の代名詞的な要素がみっちり詰まっている本作。一方、オバノンは当時『デューン』の映画化を進めていたアレハンドロ・ホドロフスキーに声をかけられるも制作が頓挫したことで、ヤケクソ気味な“徹底的に恐ろしいSF”としての『エイリアン』誕生につながっていく。
『ダーク・スター』は低予算ゆえの(思いきりがよすぎる)チープな描写も多いが、“いまの基準”での鑑賞に耐える唯一無二の魅力が満載。狭小空間で繰り広げられる、SFであることを忘れそうになるオフビートでシュールなやり取りが、深い考察とユルい笑いを誘う。“低予算SFコメディ映画”自体が制作困難であろう現在となっては、ある意味ロストテクノロジー映画と言えるかもしれない。
そんな『ダーク・スター』が劇場公開50周年を迎える今年、〈デジタルリマスター版〉でリバイバル上映。12月12日(金)よりシネマート新宿ほか全国で順次公開中なので、ぜひカーペンターとオバノンの才能が垣間見える、苦労の結晶、のちの教訓、仲違いの原因でもある(?)本作をスクリーンで味わおう。