ティモシー・シャラメ『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』で全編ライブ演奏 ─ 5年猛特訓でボブ・ディラン徹底再現、髪にマイク仕込んだ
映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』でボブ・ディランを演じたは、全編ライブでの生演奏・生歌唱に挑んでいる。通常の音楽映画ではありえないこの選択は、シャラメ自身の強い希望で叶えられたという。
プロダクション・ミキサーのトッド・A・メイトランドは、とある重要なシーンを撮影する10分前に、シャラメが自分のところに突然やってきたエピソードを語っている。「ライブでやる、と彼が言うんですよ」。
事実、シャラメは本作の企画が動き出してから5年間にわたって歌と楽器の猛特訓を重ねてきた。2020年に新型コロナウイルス禍でハリウッドが完全に停止したときも、2022年に『デューン 砂の惑星PART2』の撮影をしていたときも、2023年に全米映画俳優組合のストライキで再び業界が一時停止を余儀なくされたときも、シャラメはボブ・ディランの曲を聴き、ひたすら練習を続けていたという。
あらかじめ劇中の楽曲はレコーディングされていたが、撮影が始まって早々、それらは撮影現場では一切使用されないことが決まった。俳優が装着するイヤモニや、タイミングを測るための機械さえも使用されなかったのは、過去に16本の音楽映画に参加してきたメイトランドにとっても初の試み。「まるでアルバムのレコーディングと映画の撮影を同時にやっているようだった」という。
シャラメによる渾身のパフォーマンスを支えたのは、録音チームの高い技術だ。ディラン本人のごとくギターを高い位置で構えるシャラメのため、マイクは身体ではなく髪に仕込んだ。また40本以上のマイクを用意し、シャラメのボーカルとギター、バンドのメンバーそれぞれ、さらには観客の反応をすべて別々に録音。本編では生演奏の臨場感はそのままに、細部までこだわりの詰まったライブパフォーマンスを堪能できる。
映画の見せ場となるニューポート・フォーク・フェスティバルのシーンでは、キャスト&スタッフが一丸となって23分間のコンサートを一発撮りで再現した。撮影の複雑さは全編でも屈指だったというが、シャラメが見事にやり遂げたことは「うれしい驚きだった」とメイトランドは語る。
「最初はギターやボーカルなどを大幅に差し替えることになるだろうと思っていました。しかし実際、差し替えたのはほんのわずかでした。ハーモニカも差し替えましたが、それでもすごく上手だった。結局はどれだけ仕事をしたかという問題です。カメラが回っていないときも、彼(シャラメ)はセットのエネルギーを保つためにずっと演奏していたんですよ。」
ちなみに、シャラメをはじめとする俳優陣が事前にレコーディングした楽曲の音源はオリジナル・サウンドトラックに収録されている。映画本編ではライブ演奏、サウンドトラックでは音源と、それぞれの魅力をたっぷりと楽しんでほしい。
映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』は2025年2月28日(金) 公開。
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