ドラマでも注目!競馬の引退馬に「サードキャリア」を 一緒に泊まれちゃう北海道の牧場を獣医師ママライターが解説
牛や馬専門の獣医師の経歴を持ち、アニマルセラピーにも詳しいママライター「MERI」が、北海道各地の「動物とふれあえるおすすめスポット」とそのおすすめポイントを紹介する【連載】「こころ育む、動物ふれあいスポット」。
ドラマでも話題…!競走馬の世界へ
2025年10月12日(日)にスタートした、TBSテレビ日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』。(北海道では北海道放送(HBC)にて放送中)
日高で馬の獣医師として勤務していた私から見ても内容がとてもすばらしく、競走馬たちの背景がしっかりと描かれているドラマで、楽しみに見ています。
さて、今回はそんな競馬にまつわる場所へ…競馬を引退した馬たちが余生を過ごす場所、日高町の「Yogiboヴェルサイユリゾートファーム」をご紹介します!
引退馬牧場というとただ眺めるだけ…というイメージが強いかもしれませんが、入場料は無料で、場内で販売しているにんじんを馬にあげたりカフェでゆっくり過ごしたりもできるので、小さいお子さまがいるファミリーでも楽しめます!
新千歳空港から約1時間とアクセスがよく、海沿いのドライブも最高!
日高地方は冬も比較的温暖なので雪も少なく、季節を問わず遊びに行きやすいのがうれしいですね。
しかし、一般のふれあい牧場とは違う「引退馬の見学牧場」という性質上、見学の際にはお互いの安全のためにかならず守っていただきたいルールがあります。
見学ルールや楽しみ方のポイントについても解説しますので、ぜひ最後までご覧いただけますと幸いです!## 引退馬たちに「セカンドキャリア」の先を…
牧場内の見学だけでなく、カフェでの飲食やオリジナルグッズの物販もあり、特別な宿泊体験までできちゃう「Yogiboヴェルサイユリゾートファーム」。
入場料は無料で、気軽に引退馬たちに会いに行けちゃうすてきな場所なんです。
ここにいる馬たちは、競馬で数々のタイトルを獲得した有名馬が多く、そのほとんどが種牡馬や繁殖牝馬などの「セカンドキャリア」を経て入厩しています。
写真に登場した「オジュウチョウサン」は障害競走のG1レースにおいて9勝を上げており、現役競走馬時代の総獲得賞金は9億4,137万円。
現在はYogiboヴェルサイユリゾートファームで過ごしながら、種牡馬としても活躍しています。(2025年現在)
ちなみに人間の生涯年収は約2億2千万円といわれていますので、たったの数年間でその4倍以上も稼いでいる計算になりますね…!
競馬を引退した馬たちにはさまざまな「セカンドキャリア」があります。
血統を残すための種牡馬や繁殖牝馬。
観光牧場などの乗用馬。
競馬場のパドックなどで競走馬を先導する誘導馬など…。
ただ、残念ながらすべての馬たちが順調にセカンドキャリアを歩めるわけではありません。
現役時代に優秀な成績を残していればその血統を後世に残すためのキャリアが用意されることが多いのですが、成績が良くなかったりケガなどで体に問題を抱えていたりする馬たちの中には、引退後の行き先が決まらない馬も。
人間のために活躍してくれた馬たちの命を、どうにかつないでいきたい…
その思いから、2018年ごろよりYogiboヴェルサイユリゾートファームがスタートしました。
競馬を引退して自分の生活費を稼ぐ手段がなくなった馬たちのために「サードキャリア」を提案する場所として、Yogiboヴェルサイユリゾートファームでは独自の取り組みを行っています。
馬のそばで…特別な宿泊プラン
Yogiboヴェルサイユリゾートファームでは、今までになかった独自の取り組みを展開して引退馬たちの支援につなげています。
そのひとつが、馬たちのすぐそばで宿泊できるプラン!
元社員寮だった建物を改装した宿泊棟は、小さいお子さまも一緒に泊まれます。
もうひとつのトレーラーハウスは、馬たちがすぐ目の前まで来てくれるウッドデッキを備えていて、特別な宿泊体験ができることが特徴。
放牧地で馬たちが走る音を聞きながら、のんびり過ごす時間…最高すぎませんか!?
ほかにも、東京など全国各地で行われるイベントに馬たちが出張することも!
10月19日に東京の二子玉川で行われたイベントでは、ダンカークとヒルノダムールの2頭が現地に駆けつけ多くのファンを癒していました。
引退馬と呼ばない未来へ
Yogiboヴェルサイユリゾートファームが目指すのは、「引退馬と呼ばない未来」。
人間のために活躍してくれた馬たちを支えていくために、サポーター制度やクラウドファンディングなどを活用しながら馬たちと一緒に生きていく方法を模索しています。
引退馬を支援する活動は、まだまだ一般的ではありません。
だからこそ「ここから全国に活動を広めていきたい」と、Yogiboヴェルサイユリゾートファームの強い思いを聞かせていただきました。
馬たちに癒され、リゾート感あふれる空間にも癒される…
Yogiboヴェルサイユリゾートファームの魅力といえば、その名のとおり“馬たちのリゾート”を感じられるところ!
広い放牧地に、高級感漂う厩舎、かっこいい馬運車…
この非日常感、みなさんもぜひ味わってほしい…!!
こんなすてきな場所で悠々自適な生活を送る馬たちは、さぞ幸せなことでしょう…
このかっこいい馬運車に馬たちを乗せて、全国出張にも行くとのこと。
乗り物が大好きな息子は「乗りたい!」と大騒ぎでした…(笑)
そして場内には、競走馬以外の動物も…!?
こちらのかわいらしいミニチュアホースは、新冠にある優駿記念館にいたゆうこちゃん。
大きい馬たちばかり見ていると、ミニチュアサイズの馬が余計に小さく見えますよね…!
とってもかわいいけど、馬は馬。
ふれあう際は馬の後ろに行かないようにするなど、十分にご注意くださいね!
さらに、場内には犬と猫もいます!
息子の体よりもはるかに大きいバーニーズ・マウンテン・ドッグ!
なかなか大型犬とふれあう機会がない息子は、馬よりも夢中になっていました。
場内ではにゃんこも暮らしています!
自由に移動しているため、どこかで寝ていて姿が見えないことも多いそうなのですが、この日は運良く出会えました。
馬も犬も猫も、みんな幸せそうー!!
広大な放牧地が見渡せるカフェの雰囲気もとっても素敵!
場内にあるカフェは、フードメニューやコーヒー・ハーブティー・ジュースなどのドリンク類、そしてソフトクリームやケーキなどのスイーツまでとっても充実!
おいしいだけじゃなくて、カップがとーってもかわいいんです…!!!
かわいいカップでいただくドリンクは格別ですよね…!
もちろんこのカフェの売り上げも、馬たちのために使われるそうです。
Yogiboヴェルサイユリゾートファームに遊びに行った際には、ぜひカフェにも立ち寄ってみてくださいね!
遊びに行く前に知っておきたい見学ルール!
牧場に到着したら、まずは受付へ!
ここでもらえる場内マップには、見学ルール、それぞれの馬たちの放牧場所、にんじんをあげて良い馬/あげたらダメな馬など見学に必要な情報が載っていますので、しっかりと確認するようにしましょう。
ここは「引退馬の見学牧場」。
ふれあい牧場ではありません。
引退馬は元競走馬や種牡馬など、気性が荒いことも少なくありません。
馬も人も安全に過ごせるように、ルールをしっかり守って見学してくださいね。
特に小さいお子さま連れの場合には、子どもが走り回ったり大きな声を出したりすると馬が驚いてしまうことがあります。
また、放牧地の柵は子どもが入れるほどの隙間がある場所もありますので、安全のためかならず目を離さないようにしてください。
場内で販売しているにんじんをあげる際には馬の様子をよく観察しながら、かならず大人が付き添ってあげるようにしましょう。
指をにんじんに添えて差し出したり背中を向けたりすると、馬たちの機嫌によっては噛みつかれてしまうことも考えられます。
にんじんはできるだけ端をグーの手で持ち、馬を焦らすことなくササっとスマートにあげるのがコツですよー!
引退馬たちに会える貴重な場所を守るためにも、一人一人がしっかりとルールを守って見学しましょう!
引退馬たちと心でふれあう素敵な時間を
今回は日高町にある「Yogiboヴェルサイユリゾートファーム」をご紹介しました。
現在、新しい厩舎を建てるためにクラウドファンディングに挑戦中とのこと!
牧場に足を運んで応援するも良し、クラウドファンディングという形で応援するも良し。
好きな形で自由に馬たちを応援できる取り組みを、私も馬好きのひとりとして応援したいと思います!
馬たちの魅力的なグッズもたくさんありますので、ぜひグッズショップものぞいてみてくださいね!
【Yogiboヴェルサイユリゾートファーム】
所在地:北海道沙流郡日高町庫富739
公式HP
〈入場料〉無料
〈休場日〉毎週木曜日(祝日の場合は翌日休場)
〈営業時間〉9:00~15:00 ※カフェラストオーダー 14:30
〈駐車場〉無料
〈アクセス〉新千歳空港より車で約1時間/日高道「日高門別IC」から約6分
※不定期で牧場〜南千歳駅間の送迎バスあり。日程は、YogiboヴェルサイユリゾートファームのSNSやホームページ等でご確認ください。
【連載】「こころ育む、動物ふれあいスポット」
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文:MERI
1991年生まれ、1児の母。東京都出身、2016年より北海道に移住し現在は安平町在住。
牛と馬の産業動物獣医師として勤務したのち、ライター&カメラマンに転身。動物やペットに関する記事を多数執筆。大学時代には馬の飼養管理を担当しながらアニマルセラピーの研究を行う。動物に関する豊富な知識と経験を生かし、動物とのふれあいを積極的に取り入れる子育てを実践中。
編集:Sitakke編集部あい