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「集落孤立、停電も」災害時を想定し訓練 釜石港で海保と電力会社、資機材の海上輸送

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 釜石海上保安部(尾野村研吾部長)と送配電事業を担う東北電力ネットワーク釜石電力センター(似内勝之所長)は3日、災害復旧に携わる人員と必要な資機材を海上輸送する共同訓練を行った。地震で陸路が寸断されたうえ、孤立した集落で停電が起きたと想定。釜石港に係留する海保の巡視船「きたかみ」(650トン)の搭載艇を使い、荷物を積み込んだり、降ろしたりして対応を確認した。

 釜石海保が所属する第2管区海上保安本部(宮城県塩釜市)と、東北電力、東北電力ネットワークは2022年3月に「災害時における相互協力に関する協定」を結んでいる。訓練は協定に基づいたもので、有事の際の対応力向上や連携強化が目的。釜石での実施は昨年に続き2回目だが、実際に搭載艇を走らせての訓練は初めて。

釜石海上保安部と釜石電力センターによる共同訓練の参加者


 訓練には約40人が参加。「近年は自然災害の激甚化、頻発化が目に見えるような形で進んでおり、有事への備えがますます重要になってきた。実際の対応に即した手順、要領で連携方法を確認し、問題点あれば修正、改善を図りながら、協定の実効性を高めてほしい」などと、尾野村部長、似内所長が激励した。

 岩手県沿岸を震源とする地震が発生し、釜石市内では震度6弱の揺れを観測。津波の恐れはないものの、唐丹町花露辺地区と平田尾崎白浜地区を結ぶ県道249号が土砂崩れや道路の陥没などで不通となり、孤立した尾崎白浜地区で停電が起きたとの想定。電力センターでは復旧作業に向かうも、陸上からは困難な状況で、協定に基づき海路による搬送の協力を要請し、釜石海保が引き受け、作業員と資機材を巡視船で被災地まで運ぶという流れで訓練をした。

復旧作業に必要な資機材を巡視船に積み込む参加者


安全帯などが入ったリュックの重さは1つ約20キロ


 電力センター配電課の4人は、巡視船の乗組員らと連携し、復旧作業に必要な電線や工具、高所作業時の安全帯など計約120キロの資機材を船に積み込んだ。その後、搭載艇(定員10人)に資機材を移し替え、乗り込んだ搭載艇で釜石湾内を走行して波による揺れなどを確認。岸壁に着くと荷物を積み降ろし、海から活動の現場に向かう手順を確かめた。

巡視船の搭載艇に資機材を移し替える参加者


電力センターの作業員を乗せた搭載艇を降下


岸壁に着いて資機材を積み降ろす作業員ら


 搭載艇での移動を体験した電力センター配電主査の加賀谷聡さん(51)は「波は穏やかだったが、走行中に水しぶきが上がることがあった。波をかぶらないよう資機材を箱に入れたのは良かった」としながら、1箱20キロの資機材について「予想外に岸壁が高く、積み降ろすのが大変だった。小分けにしたり軽くして持ち上げやすくする必要がある」と改善点を見つけた。万一の時に海路を使って早く現場に行ける体制、情報を知る面でも有意義な訓練だったといい、「(災害は)なければ一番いいが、経験を社内で共有して動けるようにしたい」と見据えた。

手渡し、網の使用…重さのある資機材の陸揚げは工夫が必要


訓練を終えて手応えや問題点を伝え合う参加者


 搭載艇を操舵(そうだ)した釜石海保航海士補の千葉彩湖(さこ)さん(21)は「普段より船の揺れが少なくなるよう気を付けた。こうした想定の訓練は初めてだったが、全体の流れが想像できたので、精度を上げ、実働時には安全に人員、資機材を届けられるようにしたい」と気を引き締めた。

 訓練の責任者として見守った釜石海保警備救難課の池田隆課長(51)は「搭載艇からの荷物の陸揚げ、受け入れる漁港などへの連絡方法など検討が必要だと感じたが、全体的には協力し合いながらスムーズにいった訓練」と評価。災害発生時にはいち早く救援、救助に向かうことから、こうした訓練を継続したい考えで、「場所や想定を変えながらレベルアップしていきたい」と話した。

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