モームリ家宅捜索 退職代行“グレーゾーン”の実態と問題点 弁護士法人は全体の3割強
■弁護士法違反の疑い モームリ運営会社に家宅捜索
業界で屈指の知名度を誇る「モームリ」を運営する「アルバトロス」が弁護士法違反の疑いで家宅捜索を受け、退職代行サービスへの関心が高まっている。現在、事業者が少なくとも52法人あり、そのうち弁護士法人は3割強にとどまっていることが分かった。
退職代行は退職希望者の依頼を受けた代行業者が本人に代わって会社に退職を伝えるサービスで、事業者数が近年増えている。中でもメディアで度々取り上げられるなど、知名度抜群なのが「モームリ」。税込で正社員は2万2000円、アルバイトは1万2000円と格安な料金も話題となった。
しかし、モームリを運営する「アルバトロス」は10月22日、警視庁から弁護士法違反容疑で家宅捜索を受けた。代表取締役を務める谷本慎二氏は自身のXで以下のようにつづった。
「弊社が運営する退職代行モームリについて、弁護士法違反の容疑があるとされています。弊社は本件事態を厳粛に受け止めており、引き続き、警視庁の捜査に適切に対応してまいります。なお、本件に関するコメントにつきましては、捜査中につき差し控えさせていただきます」
「また、今回の家宅捜索を受け、新たな管理体制を構築することにより、今後の改善としてまいります。その一環として、現在の顧問弁護士との契約を解除すると共に、役員の体制を見直すことといたしました。現在は退職代行モームリの営業を再開しておりますが、一層の法令順守を徹底することによりサービスを今後も継続いたします」
■退職代行は少なくとも52法人 弁護士法人は34%止まり
民間の調査会社・帝国データバンクによると、退職代行サービスを展開する事業者が全国には少なくとも52法人ある。このうち59.6%が株式会社などの「民間経営」によるもので、弁護士法人は34.6%にとどまった。
設立から10年以内の企業が39法人(75%)を占め、業歴の浅い事業者が多かった。特に2018年、2019年、2021年設立の企業が各6法人と最も多かった。
サービス料金の平均は2万9410円で、弁護士法人では約4万4700円、民間経営では約2万2500円と、約2倍の開きがあった。
退職代行サービスは人手不足による転職のしやすさや、職場トラブルを避けたいニーズの高まりを背景に市場が拡大している。料金体系は、退職意向を電話で伝える簡素なプランから、有給休暇の取得交渉や貸与品返却などのオプションを備えるものまで幅広い。帝国データバンクは「モームリ」の問題に触れ、次のように指摘する。
「民間経営の代行サービスの多くは弁護士による監修があるものの、従前より東京弁護士会などから弁護士法が禁じる斡旋の非弁行為にあたるとして注意喚起がなされており、近時は事業撤退もみられるようになっていた。こうした中、退職代行業務のグレーゾーンに改めて焦点が当てられ、民間企業の参入で急成長が続いた同サービスの先行きに黄信号が灯る形となった。ただ、退職代行サービスはトラブルを回避したい労働者から一定のニーズがあり、有用なサービスといえる」
退職代行サービスの業者は都市部に多いが、静岡県内にも存在する。手頃な金額で嫌なことを代行してもらえる便利なサービスだが、その在り方について再考が必要な時期を迎えている。
(SHIZUOKA Life編集部)