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十勝産ライ麦×宮崎の味噌-宮崎から届ける”伝統”×”伝統”のロブロ【Bread&Butter】(宮崎県・宮崎市)

パンめぐ

ライ麦の香りと醤油に似た発酵の香りのロブロ

「リジェネラティブ・ベーカリー」シリーズvol.24

『環境再生型農業』を応援するパン作りをしているベーカリーを紹介するシリーズ。
宮崎県宮崎市の住宅地に佇む「Bread&Butter」。
私がお店の存在を知ったのは、『ロブロの教科書』の著者・くらもとさちこさんのInstagramのストーリーズで何度も目にしたことがきっかけでした。
プレーンなロブロに加え、みそロブロという他では聞いたことのない商品を焼かれていたので、どのような発想からアイデアを思いつかれたのか気になり、お話を聞かせていただきました。

「地産地消」のパン作り

ハード系から菓子パン、惣菜パンまで幅広い品揃え

原 敬シェフは、もともと自動車部品の設計をしていたという異色の経歴の持ち主。
愛知県の親会社に出向し10数年働いていたところ、同僚が愛知県内のパン屋に転職。
自家製発酵種を使い薪窯で焼き上げるそのお店はイートインも併設し、薪ストーブの温もりの心地よい雰囲気に惹かれ「自分もこのような日常の幸せな光景を提供できるパン屋を開きたい」とパン職人の道へ進みました。

宮崎に戻り、地元のホテルでパン作りの経験を積んだものの、愛知のパン屋への憧れが抑えられず再度愛知へ向かい3年間修業。オーガニックや自家製の素材を大切にする姿勢は、現在のお店づくりの基本にもなっているそう。

自動車部品の設計とパン作りは一見まったくの畑違いに思えますが、“ものづくり”という根っこは同じだと考えています。
ただ、部品の設計は自動車の歯車の一つでしかないけれど、パン屋というのは企画から設計、製造から販売まですべての工程を自分で決めることができる、そんなエンターテインメント性に魅了されましたと話してくださいました。

2022年6月の開店当初から大切にしているのは「地産地消」。
宮崎県産小麦はまだ安定供給が難しいため、隣県を含む九州産小麦をメインで、とこだわっています。
「できるだけ“この土地の恵み”でパンを焼きたい」という想いが、原シェフのパンづくりの原点です。

“ロブロ”を作り始めたことで出会えた国産ライ麦

“美味しさはもちろん、食べてくださる方の健康にも寄り添えるパンを”、 そう考えた時に思いついたのがライ麦を使ったパンでした。
「ベッカライ徳多朗」さんが焼いていたデンマークの伝統食であるライ麦100%で作る「ロブロ」というパンをInstagramで知り、興味を持ったのですがはっきりとした作り方がわからない。
そんなとき、前述した『ロブロの教科書』が発売され、やっとレシピを知ることができました。

当初はドイツ産を使用していましたが、ロブロを作っているシェフ達のSNSで国産ライ麦を使っているお店が多くあることを知り、「アグリシステム株式会社」の北海道産ライ麦と出会いました。

次世代につなぐ生きた土を作るためにライ麦栽培を推進する「リジェネラティブ農業(環境再生型農業)」の理念に共感し、ライ麦を使うことで農家さんを応援できるならと切り替えることにしました。
細挽きに加え、粗挽きと砕きライ麦も今年から発売になったので、ロブロはこれらを組み合わせて使っています。

伝統×伝統──「みやだいず味噌ロブロ」

原シェフの代表作のひとつが「みそロブロ」。
きっかけは、かつて愛知のパン屋で見かけた味噌を使ったカンパーニュ。
デンマークで1000年の歴史をもつロブロに宮崎県都城市の在来種大豆「みやだいず」で作られた味噌を合わせることで、“伝統”ד伝統”というロマンを込めたパンを完成させました。
みやだいず味噌は白味噌仕立てで甘みがあり、大豆の香りが豊か。
発酵食品同士の組合せが合わないわけがない、と考えた原シェフの思惑は当たりました。

ロブロとみそロブロを実食

こちらがプレーンなロブロ。ライ麦全粒粉とライサワー種、水、粗塩といったシンプルな材料で作られています。
爽やかなライ麦の香りと醤油に似た発酵の香り。 ライ麦シュロートのコリッとした粒感、里芋のようなねっとりさとなめらかさがあります。
噛むごとに甘みがあり、口からなくなるタイミングでごくわずかな酸味を感じます。
こちらがみそロブロ。
袋を開けた時から香ばしく甘い味噌のいい香りが広がります。 プレーンに比べると発酵×発酵の相乗効果で奥深さを感じます。
しっかり焼き込んだ香ばしさと、苺のような甘酸っぱさ。 みそロブロも里芋やとろろのように口の中を覆いつくしてから溶けていく感じがクセになります。

どちらも日が経つごとに熟成が進みまろやかな味わいになっていきます。
ロブロは常温で約1週間、冷蔵保存ではさらに日持ちがし、乾燥が進んだものはそぼろ状にしてヨーグルトと合わせるなど食べ方のアレンジができるのも魅力です。

他にも人気の商品をご紹介

左からショコラバゲット、明太フランス、あんバターフランス

◆ショコラバゲット
「はる風ふわり」という佐賀県産の小麦100%使用。お店で一番高加水のパンなのだそう。
ソフトで歯切れよくもっちり。チョコレートが甘すぎないので赤ワインやナッツと一緒にいただくのも良さそうです。

◆明太フランス
「さちかおり」「ミナミノカオリ」という九州産の小麦をフランスパン生地に使用。
「さちかおり」はその名の通り強い風味と焼いた時の香ばしい香りが特徴。バターがじゅわ~と全体に染みわたり、噛むごとに明太の旨みとバターのコクが混然一体となって口いっぱいに広がります。

◆あんバターフランス
お店で炊いている粒あんは豆の風味がしっかりと感じられ、バターの塩分で甘みがキュッと引き締まるよう。
ソフトな生地なので食べやすくそのままでも美味しいのですが、粒あんとバターを一度取り出し、パンを軽くトースターで焼いてから中身を戻すと、外はパリッと香ばしく、中はむっちり。生地の美味しさがより引き立ちます。

左:パン・ド・ロデブ、右:パン・オ・ルヴァン

◆パン・ド・ロデヴ
気泡が大きく、ふんわりむっちり。外はやや引きがあります。
少し水分を与えてトーストすると、外カリッ、中ほわっ&むちっ&とぅるん。お米のような甘みが感じられます。
外と中の食感の対比がロデヴの魅力。

◆パン・オ・ルヴァン
食指をそそる芳醇な香り。外は軽い酸味と香ばしさで歯切れがいい。中はきめ細かく密度はありながらほわっとした食感で、口の中の水分と合わさり心地よく消えていきます。
合わせるものを選ばない、食事にピッタリなパン。

これまでと、これからと

住宅街の中に佇む、自宅を改装したこじんまりとしたベーカリー。
ハード系を中心にしながらも、地元の年配の方のために柔らかな食パンやブリオッシュなどもラインナップしています。
都会のお店に見られるハード系を好む方が宮崎には多くいらっしゃること、最近は年配の方でもハード系を購入していかれる方が増えていることが嬉しいとおっしゃる原シェフ。
開店から3年が経ち、地元の方々にその味が受け入れられていることを実感されています。

自分自身が好きなクロワッサンやデニッシュなども、広い厨房のある物件が見つかれば作りたい。
コーヒーも大好きなので、ゆくゆくはベーカリーカフェがやりたいですね。

お客様にお伝えしたいことは?とお聞きすると
「“美味しい”と感じていただけたら、ぜひ感想を聞かせてください。何よりの励みになります。これからも地元に根ざしたパン屋として、少しずつ進化を続けていきたいです。」と明るい口調で話してくださいました。

今年の4月に掲載された『エル・グルメ(ELLE gourmet)』のデジタル版の影響で、全国からロブロの注文が増えたそうです。
ロブロが気になる、食べてみたいという方はBread&ButterさんのInstagramhttps://www.instagram.com/breadandbutter.hara/のDMから注文してみてくださいね。

SHOP INFORMATION
【店名】Bread&Butter
【住所】宮崎県宮崎市東大宮3-9-23
【電話番号】070-8466-5162
【営業時間】10:00~15:00(無くなり次第終了)
【定休日】月・火

※写真の商品の種類、価格は、2025年10月現在の情報となります。
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗もしくはSNSなどでご確認ください。

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