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看護師と介護士の違いは?職務内容から給料までを業界動向を踏まえて徹底比較

「みんなの介護」ニュース

阿部 洋輔

看護師と介護士の仕事の違いとは。どっちが大変?

看護師と介護士は、ともに医療・介護現場で重要な役割を担っていますが、その仕事内容には大きな違いがあります。看護師は主に医療行為を行い、介護士は日常生活の支援を中心に行います。

2020年の看護職員就業者数は173.4万人となっており、需要の高まりとともに着実に増加しています。

看護師の主な業務と役割

看護師は、医師の指示のもと、患者の診療補助や療養上の世話を行います。具体的には、以下のような業務を担当します。

医療行為(薬の投与、点滴、注射、採血、処置など) バイタルサインのチェックや症状の変化の確認など、患者の状態を常に観察 患者や家族への指導や相談応対 患者の状態や治療方針について医師や他の医療スタッフとの情報共有 手術の補助や準備 医療機器の操作や管理 病棟の管理や他の看護スタッフの指導・教育(主任や看護師長の場合)

このように、看護師は医療現場の最前線で患者の状態を把握し、適切な医療サービスが提供されるようにサポートする、非常に重要な役割を担っているのです。

介護士の主な業務と役割

一方、介護士は要介護者の日常生活を支援することを主な役割としています。具体的な業務は以下の通りです。

食事介助(調理、配膳、食事の介助など) 排泄介助(トイレ誘導、おむつ交換、ポータブルトイレの管理など) 入浴介助(入浴の準備、体の洗浄、髪の洗髪、着衣の介助など) 移動や歩行の補助(車椅子の移乗、歩行の付き添いなど) レクリエーションの企画・実施(体操、ゲーム、趣味活動など) 家族への介護指導や相談応対 要介護者の状態や家族の意向に合わせたケアプラン作成の補助 グループホームやデイサービスなどの運営に関する業務

介護士は、高齢者や障がい者の尊厳を守りつつ、その人らしい生活を送れるようにサポートすることが求められます。単に身体的なケアだけでなく、精神的・社会的なケアも重要な役割だといえます。

面接だけではない!看護師と介護士に求められる資格とスキル

看護師に必要な資格と教育課程

看護師になるためには、国家資格である看護師免許を取得する必要があります。看護師国家試験の受験資格を得るには、以下のいずれかの教育課程を修了しなければなりません。

4年制大学の看護学部 3年制の看護専門学校 2年制の看護専門学校(准看護師資格を持つ者)

いずれも、解剖生理学や病理学など医学の基礎知識から、看護技術、臨床実習まで幅広い学習が求められます。卒業後も、医療の進歩に合わせて常に新しい知識・技術のアップデートが必要とされる、生涯学習が欠かせない職種だといえます。

介護士に必要な資格と教育課程

介護士の場合、必ずしも資格は必要ありませんが、介護福祉士の国家資格を取得することが望ましいとされています。介護福祉士になるには、以下のいずれかの方法があります。

介護福祉士養成施設(2年以上)を卒業する 実務経験3年以上を積んだ上で、実務者研修を修了する 福祉系の高校卒業後、実務経験9ヶ月以上を積み、卒後1年以内に国家試験を受験する

介護福祉士養成施設では、介護の理論と実践、老人・障害者の心理、社会福祉制度、医学の基礎知識などを学びます。資格がなくても介護の仕事に就くことは可能ですが、専門的な知識とスキルを身につけ、質の高いサービスを提供するためには資格取得が重要だといわれています。

両職種に求められるスキルと適性とは。いじめのない職場環境づくりも重要

看護師、介護士ともに、以下のようなスキルや適性が求められます。

コミュニケーション能力:患者・利用者、家族、他の職種とのコミュニケーションが欠かせない 共感力、思いやりの心:相手の気持ちを理解し、寄り添う姿勢が重要 チームワーク:医師、看護師、介護士など多職種と連携する力が求められる 柔軟性、ストレス耐性:様々な状況に臨機応変に対応でき、心身の健康管理ができること 観察力、判断力:小さな変化を見逃さず、状況に合った適切な判断ができること 倫理観:人としての尊厳を守り、プライバシーに配慮できること

身体的・精神的にタフであることも求められますが、何より、人を思いやる心と奉仕の精神を持つことが大切です。また、知識・技術の習得に積極的で、常に成長する姿勢を持つことも重要だといえるでしょう。

看護師、介護士のどちらの職場でも、人間関係が複雑になることも少なくありません。人への思いやりは患者や入居者だけでなく、同僚に対しても意識する必要があります。

看護師と介護士の給料の差

看護師の平均給与と給与体系

2022年の調査によると、介護職員処遇改善支援補助金を取得している事業所における介護職員(月給・常勤)の平均給与額は、2021年12月が300990円、2022年9月が317540円と16550円の増加となっています。

一方、看護職員の平均基本給等の増加額は、18350円となっており、介護職よりも多く増加していることがわかります。

看護師の給与は、勤務先の病院の規模や、経験年数、役職、専門性によって大きく異なりますが、全国平均でみると以下のような傾向があります。

新卒の看護師(常勤)の月給:23~27万円 経験5年程度の看護師の月給:27~33万円 経験10年以上の看護師の月給:約30~40万円 看護師長クラスの月給:40~60万円

賞与(ボーナス)は年2回、4~5ヶ月分が支給されるのが一般的です。また、夜勤や休日勤務などの手当も別途支給されます。

大学病院など大規模病院は給与水準が高い傾向にありますが、中小病院や診療所、介護施設などは必ずしも高いとは限りません。一方、訪問看護や介護施設などは、比較的ワークライフバランスが取りやすいといわれています。

介護士の平均給与と給与体系

介護職員等ベースアップ等支援加算を取得している事業所の介護職員(月給・常勤)の平均給与額は、2021年12月が300740円、2022年12月が318230円と17490円の増加となっています。

介護士の平均給与は、看護師と比べるとやや低い水準にあるといえます。勤務先による差も大きく、大手の介護施設や病院に勤務する介護士の給与は相対的に高く、中小の施設では低めの傾向があります。全国平均でみると、以下のようになっています。

新卒の介護士(常勤)の月給:19~23万円 経験5年程度の介護士の月給:22~28万円 経験10年以上の介護士の月給:25~35万円 介護主任・リーダークラスの月給:30~40万円

介護士の場合、賞与は年2回、2~3ヶ月分程度が一般的です。また、夜勤手当や資格手当などが支給されるケースもあります。

近年、介護職の処遇改善が国の施策としても進められており、介護報酬改定のたびに処遇改善加算が拡充されてきました。今後も、介護の質の向上と人材の確保のために、さらなる処遇改善が期待されています。

看護師と介護士のキャリアパスと将来性

看護師のキャリアパスと専門性

看護師には、経験を積むことで、以下のようなキャリアアップの道があります。

主任看護師、看護師長などの管理職:病棟運営や後輩指導などのマネジメント業務を担う 専門看護師、認定看護師:がん看護、精神看護、感染管理など特定分野の専門性を追求する 訪問看護師:在宅療養する患者の看護や、家族支援を行う 養護教諭:学校の保健室で児童・生徒の健康管理を行う 看護教員:看護学校などで看護学生の教育を担当する

このように、看護師は臨床現場だけでなく、在宅医療、学校保健、教育などさまざまな場で活躍することができます。また、医療ニーズの高度化・多様化に伴い、今後ますます看護師の役割は拡大し、需要も高まっていくと考えられています。

特に、高齢化の進展に伴い、地域包括ケアシステムの構築が進む中で、訪問看護や在宅療養支援に携わる看護師の重要性が増しています。また、医療の高度化に伴い、特定行為研修を修了した看護師など、より専門性の高い看護師へのニーズも高まっています。

介護士のキャリアパスと専門性

介護士の場合も、以下のようなキャリアパスが考えられます。

介護主任、介護リーダー:介護チームのマネジメントや後輩育成を担う 認知症ケア専門士:認知症ケアに特化した専門性を追求する 介護支援専門員(ケアマネージャー):要介護者の介護サービス計画(ケアプラン)を作成する 社会福祉士:高齢者や障がい者の生活支援、権利擁護などを幅広く担う グループホーム、小規模多機能型居宅介護などの管理者:事業所の運営管理を担う

介護ニーズの増大に伴い、介護士の需要は今後ますます高まることが予想されます。特に、認知症高齢者や独居高齢者の増加により、認知症ケアや地域密着型サービスを担う人材が重要になっています。

また、介護現場でのICT化の進展に伴い、介護ロボットやセンサー技術を活用した介護など、新しい分野のスキルを身につけることも求められるようになってくるでしょう。介護の質の向上と効率化を図るため、介護士にはさらなる専門性とスキルアップが期待されています。

看護師と介護士の魅力と役割

看護師と介護士の違いと連携。利用者の尊厳を守るために

看護師と介護士は、医療と介護の現場において、互いに連携しながら重要な役割を果たしています。看護師は主に治療的ケアを、介護士は生活支援的ケアを担うという役割分担がありますが、ともに利用者の尊厳を守り、安全・安心で質の高いケアを提供するという点で共通しています。

給与面では、看護師の方が高い傾向にありますが、近年は介護士の処遇改善も進んできています。ただ、両職種とも、必ずしも高い給与水準とはいえず、仕事の重要性に比して待遇面での課題があるのも事実です。

とはいえ、少子高齢化が急速に進む日本において、看護師と介護士のニーズと重要性は今後ますます高まることが確実視されています。医療・介護のいずれの分野でも、高い専門性とスキルを持った人材が求められており、やりがいを持って働き続けられるキャリアパスも多様に用意されています。

看護師と介護士、どっちがいい?それぞれの魅力と求められる人材像

看護師を目指す人は、医療の知識・技術はもちろん、より高度な実践力や専門性を追求したい、病院での臨床にとどまらず地域医療や在宅医療で活躍したいという志を持つ人が求められるでしょう。

一方、介護の仕事は、日々、利用者の生活に寄り添い、その人らしさを尊重しながら、QOL(生活の質)の向上を支援するという大きなやりがいがあります。介護の現場から社会を変えていきたい、という使命感を持つ人に向いている仕事だといえます。

ただ、両職種に共通して言えるのは、対人援助の仕事である以上、自分自身の人間性を磨き、相手の気持ちを理解する力を養うことが何より大切だということです。知識・スキルはもちろん必要ですが、それ以上に、誠実さ、謙虚さ、協調性、柔軟さといった人間力が問われる仕事でもあります。

超高齢社会を支えるために、看護と介護の両輪でシームレスな連携を図り、多職種協働のチーム医療・チームケアを推進していくことが強く求められています。看護師も介護士も、お互いの専門性を理解し、尊重し合いながら、協力して働くことが何より重要です。

また、医療・介護の現場を志す人たちには、常に学び続ける姿勢を持ち、時代の変化に対応しながら、自己研鑽を積んでいくことも求められます。

困難な課題も多い分野ですが、だからこそ、新しい課題解決のために自分の力を発揮し、より良い医療・介護の未来をつくっていく、そんなチャレンジ精神を持った人材が求められているのです。

看護師、介護士のどちらの道を選ぶにせよ、専門職としての誇りと使命感を持ち、利用者の尊厳を何より大切にするという価値観を持つことが何より重要です。その上で、それぞれの適性や興味・関心に合わせて、キャリアを積んでいくことが望ましいでしょう。

医療と介護の世界で活躍する看護師と介護士。人々の健康と幸せな生活を支える、なくてはならない存在です。社会から大いに期待され、また、大きなやりがいと魅力のある仕事だからこそ、これからもさらに重要性が増していくことでしょう。

次代の医療・介護を担う若い世代の皆さんには、ぜひ看護と介護の世界に飛び込んで、より良い社会をつくっていく担い手になってもらいたいと思います。

まとめ

看護師と介護士は、ともに人々の健康と生活を支える重要な役割を担っています。医療と介護の現場で協働しながら、それぞれの専門性を発揮し、利用者の尊厳を守るケアを実践しています。

資格取得までの道のりや、業務内容、給与水準などには違いがありますが、どちらも対人援助の仕事であり、高い倫理観とコミュニケーション力、そして何より利用者本位の価値観を持つことが求められます。

少子高齢化が進み、医療・介護ニーズがますます増大する中で、看護師と介護士の役割はこれからも拡大し、ニーズも高まり続けるでしょう。人生100年時代を見据え、医療と介護の連携を推進し、地域包括ケアシステムを担う中核的な人材として、ともに大きな期待が寄せられています。

超高齢社会における医療・介護の未来を創造するのは、他でもない、これからの看護師と介護士です。自らの仕事にやりがいと誇りを持ち、専門性を追求しながら、より良い社会を築いていく担い手として、ぜひ活躍してもらいたいと思います。

看護師と介護士、それぞれの道は異なりますが、目指すゴールは同じ。人々の幸せと尊厳を守るという崇高な使命を胸に、これからも力を合わせて、よりよい医療と介護の未来を切り拓いていきましょう。

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