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瀧本美織が語る、大好きなふるさと鳥取と家族への思い。「本当に幸せなところで生まれ育ったんだなぁ」

さんたつ

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鳥取県出身、天真爛漫にお好み焼きを焼いていた朝ドラのヒロインはいま、33歳。カニすきを囲む仲よし家族への思いと、俳優として「役と生ききる」理由とは?日本海の星、降臨です。

瀧本美織

たきもと みおり/1991年、鳥取県生まれ。2010年に映画『 彼岸島』で俳優デビューし、朝の連続テレビ小説『てっぱん』でヒロインを務める。主な出演作品にドラマ『美男ですね』『GTO』『刑事ゼロ』『財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~』など。声優としてもスタジオジブリ作品『風立ちぬ』のヒロインを好演。『死ぬほど愛して』(ABEMA/Netflix)配信中、『トウキョウホリデイ』(テレビ東京)放送中。
Instagram:@mioritakimoto_official

“ジュニアパイロット”で東京まで通った日々

瀧本 私が小さい頃、鳥取はいまよりずっと雪が多かったんです。胸のあたりまで積もった雪の中をずぼずぼ歩くのが楽しくて、雪だるまを作ったり、校庭で雪合戦したり。

雪が解けたあと、友だちと手をつないで歩いていたら、地面がかちかちに凍っていて、あ!?と思った瞬間、転んで顎(あご)をガーンと強打した思い出もありますね。

——子どもの頃から活発で、走るのも好きだったとか?

瀧本 はい。運動会の思い出といえば、幼稚園のかけっこで先頭を走っていたんです。でもゴール直前で、後ろで友だちが転んだのに気づき、引き返して友だちを助けて一緒にゴールしたことがあって。

そのとき父が「本当の一番はお前だな!」って、すごく喜んでいたのが忘れられない。あの頃のままの自分でいたいなって思います。

——現在、歌手活動もされていますが、もともとは小学生の時に、ダンスボーカルユニットとしてデビューされたんですよね?

瀧本 そうなんです。11歳から中3の春まで、平日は学校、土・日曜は鳥取空港から東京に行く日々を繰り返していました。

“ジュニアパイロット”というのがあって、CAさんが面倒を見てくれるんですけど、隣の席のおじさんも話しかけてくれたりするので、おしゃべりしながら空の旅を満喫していましたね。

私も大人になり、空港もコナンくん仕様に様変わりしたけど、いまでも鳥取空港は頑張っていた自分を思い出す大事な場所です。お土産コーナーで「打吹(うつぶき)公園だんご」や「どじょう掬いまんじゅう」をむかしもいまもよく買います。

明治13年(1880)創業、石谷精華堂の「打吹公園だんご」。「かわいい大きさで口に運びやすくてお気に入り」と瀧本さん。

——東京で一番驚いたことは?

瀧本 スターバックスがいっぱいある……! 当時、47都道府県のなかで鳥取だけスタバがなかったから、かわいそうで。東京のお店を分けてくれてもいいのにと思っていました。

——たしかに(笑)。芸能活動について、地元の友だちはどんな反応でした?

瀧本 先生も同級生もすごく背中を押してくれました。映画の撮影で1カ月以上学校を休んだときは、みんなで撮った写真や絵でデコレーションしたメッセージノートを作ってくれたり。

やっぱり地元では(芸能活動が)珍しかったので、先輩たちが教室まで見にきたりして、恥ずかしかったなあ……。

県民性だと思うのですが、もともと自分から前に出るタイプではなくて。オーディションも父の友人が「美織ちゃん、受けてみたら?」とすすめてくれたのがきっかけなんです。

うちの父は逆に珍しいぐらい社交的で、初対面でもぐいぐい人の懐に入っていくから友だちが多い。地元の人のことは、だいたい知っているんじゃないかな(笑)。

極上のパンと海と、家族で囲むカニすき

——帰省したら必ず行く場所や、することはありますか?

瀧本 大山(だいせん)の麓にある『小さじいち』という、おいしくてかわいいパン屋さんに行きます。あと夏は海。岩美のほうにある東浜海岸は水の透明度がダントツで、私のパワースポットです。

冬は、実家で松葉ガニ(ズワイガニのオス)のカニすきを食べたり。カニ味噌を食べたあと、甲羅に日本酒を入れて飲むのがすごく好き。親ガニ(メス)の味噌汁もカニのお出汁がたまりません~。

——最高の家族団らんです。

瀧本 家族は本当に仲がいいんですよ。私は家族全員を尊敬していて、自分はそれぞれのいいところをもらっているなぁと思います。

特に母は、自分のことをそっちのけで人に尽くす。もっと自分のことやっていいよって思うんですけど、その性分は私も引き継いでいるような気がします。

あと、どんな状況でもおもしろがれるところがあって。母がぽろっとこぼす言葉が普通の人とは少し観点がずれていて、チャーミングなんですよ。

大山を望むカフェベーカリー『コウボパン 小さじいち』。挽きたての小麦と自家製酵母で焼き上げるパンは絶品だ。
瀧本さんが撮影した大好きな東浜海岸。エメラルドグリーンで透明度が高く、表情豊かな海岸線も見どころ。

——2023年はお母さまと二人旅をしたそうですね。

瀧本 『禅坊 靖寧(ぜんぼうせいねい)』という淡路島のお宿が、雑誌の表紙に出ているのを母が見て「すごく気になるね」と。一緒に過ごす時間がなかなかなかったので、「じゃあ行こう!」と。

そうしたらすっごくよくて。ゆったりくつろぐというより、お坊さんのような生活をするんです。

食事は植物性食品が中心の料理ですが、彩り豊かでボリューミー。360度、森を見渡せるところでおいしいご飯を食べ、瞑想とヨガをみんなでやって、朝は鐘の音で目覚める。最後は、全員で雑巾掛けをするというプログラム。

汗を流して心を整え、その場所をきれいにして帰るって、全部がつながっている……と感動しちゃって。心身ともに本当に癒やされて、体がすごく軽くなりました。母と「温泉にも浸かってないのに不思議だねぇ」と。

とてもよかったので、そこで売られている瞑想用のイスを買っちゃいました。

——お土産にイスを! お父さまは?

瀧本 今回は留守番だったので、寂しがっていました。父が一人で東京に来た際、ちょうど私がメイクさんやスタイリストさんたちとのご飯会をセッティングしていた日があって。ただ、私が仕事で行けなくなってしまって。

そうしたら「じゃあ、俺、行ってくるよ」って、父一人で行ったんですよ! 全員女子の中に交じって、すごく楽しそうな写真が送られてきました。

淡路島の大自然の中で心と体を開放できる『禅坊 靖寧』。坂茂(ばんしげる)氏設計の建物はどこも美しい。

——わははは。楽しいご両親ですね。祖父母さまもご健在とか?

瀧本 おじいちゃんとおばあちゃんには、いつも会いたい。おじいちゃんは晩酌が日課なので、帰省すると「瑞泉(ずいせん)」を一緒に飲むのが楽しみなんです。

おじいちゃんは戦争も経験しているので、生きざまが大尊敬で。普段、口数は多くないんですけど、お酒を飲んで気持ちがふわっとしたときに、少し饒舌(じょうぜつ)になるんです。

むかし戦争で体験したことを話してくれて、海外に渡ったことや、そこで関わった仕事のことを、ぽつり、ぽつりと伝えてくれる。私たちが想像すらできない現場を見てきたんだなと。

——戦争といえば、スタジオジブリ映画『風立ちぬ』でヒロインの声を務めましたね。

瀧本 想像することしかできないんですけど、おじいちゃんが過ごした時代を、役をとおして体験できたことはとても貴重でした。仲間をすごく大切にするおじいちゃんなのですが、飲み仲間もだんだん亡くなって……。

おじいちゃんには、まだまだ元気でいてもらいたいな。いま、99歳です!

復讐する役でも生ききる。祖父は見ないかな(笑)

——多様な役を演じられていますが、ご自身に近い役といえば?

瀧本 『てっぱん』の天真爛漫なあかりちゃんみたいな役かな。作品との出会いも、役との出会いも衝撃的だったんです。初めてのドラマだったので、役作りとかもわからないなかで、心のままに体が勝手に動くんですよね。

鳥取の言葉と舞台の尾道弁が似ていたのもなじんだし、台本の言葉がすうっと入ってきて。セリフもセリフと思って言っていませんでした。

父親役のエンケン(遠藤憲一)さんに「お前は、俺の教科書だ」って言ってもらったんですけど、その言葉の意味が、大人になるにつれてわかってきて……。あのときのあの気持ちは、あの作品でしかなかったんだなって。

——近年は、ドロドロの愛憎劇でも俳優としての新境地を開拓。台本を読んだときの感想は?

瀧本 そうですね……。私は、みんなから本当に悪い人といわれている人も、悪いだけじゃないからって思っているんですよね。

例えば自分に素直だったり、過去に辛い体験があって、それを乗り越えるために人生を変えようとしていたり。それが物語になるんだと思うんです。だから探します、悪いところだけではないところを。

そのうえで、役も一人の人として昇華させたい。言葉が正しいかわからないけど、浄化させてあげたい。生ききらせて、成仏させてあげるために、私も一緒にゴールに向かって過程を生きていく、ということかなって。

でもおじいちゃんは、復讐ドラマは見たくないかもしれません。孫だから(笑)。

——最後に、夜空も名物な“星取県”への思いを。

瀧本 おばあちゃんやおじいちゃんが夜、人に会うと「ばんなりましたなあ」って挨拶するんです。その方言がすごく好きで、鳥取に帰ってきたなあって思います。

大人になるにつれて、地元の大事さが深みを増しています。がむしゃらに頑張るしかない時期を越えて30代になり、家族もそうだし、海にも山にも恵まれて、おいしいものもたくさん食べられる。

夜には、大量の星がこぼれ落ちそうなぐらい輝いていて、本当に幸せなところに生まれ育ったんだなって、いま一番感じているかもしれない。

聞き手=くればやしよしえ 撮影=千倉志野
ヘアメイク=窪田健吾(aiutare)
スタイリング=井阪 恵(dynamic)
衣装協力:プランクプロジェクト(プランクプロジェクト 青山店☎03-6758-0605)

『旅の手帖』2025年4月号より

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