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「この作品をきっかけにいつか未来で出会いたい」──『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』Blu-ray発売記念 星乃 一歌役・野口瑠璃子さん×天馬 司役・廣瀬大介さん×ボカロP・じんさんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2025年1月17日(金)より公開され、大きな話題となった映画『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』がついにBlu-ray化! 2025年10月29日(水)より絶賛発売中です。

Blu-rayの発売を記念して、アニメイトタイムズでは連載インタビューを実施。星乃 一歌役・野口瑠璃子さん、天馬 司役・廣瀬大介さん、エンディング主題歌「Worlders」作詞・作曲を担当したボカロP・じんさんに登場いただき、劇場版の見どころや劇中ユニット曲の好きなポイントなどを熱く語っていただきました。

ゲームのリリースから5周年を迎えた『プロジェクトセカイ』。野口さん、廣瀬さん、じんさんが、これまでの思い出を振り返ります。「ステラ」や「NEO」などの楽曲の制作秘話や歌詞に込められた想いなど、貴重な裏話も明かされました。

【写真】『劇場版プロセカ』野口瑠璃子×廣瀬大介×じん BD発売記念インタビュー

「『プロセカ』ってこれだ!」

──まずは『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』全体の感想をお聞かせください。

星乃 一歌役・野口瑠璃子さん(以下、野口):改めて“音楽の力”を感じる作品になっていて、とても感動しました。最初に『プロセカ』が映画化すると聞いた時は「個性豊かなキャラクター達をどうまとめるんだろう?」「どんな物語になるんだろう?」とドキドキワクワクしていたのを覚えています。

そのあと実際に完成した映画を観たら、すごくパワーを感じる作品になっていて。たくさんの方にも観ていただけて、本当にありがたい時間だったなと感じています。

天馬 司役・廣瀬大介さん(以下、廣瀬):僕も野口さんと同じく「どんな映画を作るんだろう」という気持ちからスタートしたので、こんなにも“人の悩み”や苦しさを緻密に描く作品になるとは思いもしませんでした。

人が悩みから救われるには時間がかかったり、簡単にはいかなかったりしますよね。誰かに共感してもらうことがその助けになると思うのですが、時には他の人の声が届かないこともある。そういった“人の悩み”がリアルに描かれていて、気が付いたらほろほろと泣いていました。ちゃんと、何かが残る作品でしたね。

ボカロP・じんさん(以下、じん):僕にとって初音ミクさんは最初から「歌えない自分の代わりに歌ってくれる存在」なんです。だから今回ストーリーに出てきた“歌えないミク”さんは、僕にとって他人事ではないテーマだったんです。

僕自身、19歳でそれまでやっていたバンドが解散してしまって、音楽がやりたいのに歌ってくれる人がいない。代わりに初音ミクさんに歌ってもらうことで、僕は今まで音楽を作り続けることができました。

“歌えないミク”さんに対して自分には何ができるのか。当時の自分とは真逆の立場になるのは今回が初めてで、とても感慨深かったです。今までこういった切り口の出来事はあまり起きていなかったので、面白い構造をしている作品だなとも思いました。

──本作の中で特に印象に残っているシーンを教えてください。

じん:ミクさんが絶望して、セカイが闇のテクスチャに変わっていく、飲み込まれていく瞬間ですね。あのシーンをきっかけに、作品の前半と後半でガラッと空気が変わっていたのが印象的でした。あそこを機に、ガラッと変わりましたよね?

廣瀬:観ていて、飲み込まれそうになりました。

じん:音響や絵の質感など、一気に色が変わることで壮絶さが伝わってきて……怖かったんですよね。

でも、やりたいことや夢が潰える瞬間は、それくらい恐ろしいものなんだなと。「一人の夢がなくなってしまう瞬間はこれくらい怖いものなんだ」と、制作陣が本気の表現をしているなと思いました。他人事と思っていないことが伝わってくる、痺れるシーンでした。お二人はいかがですか?

野口:私は閉ざされた窓のセカイのミクが、泣きながら歌を届けようとしているシーンで目頭が熱くなりました。もう、もう……「ミクさん、笑って……」と(笑)。

廣瀬・じん:(笑)。

野口:閉ざされた窓のセカイのミクに対しては、終始そんな気持ちを抱きながら観ていましたね……。

ほかに印象に残っているシーンは、ワンダショ(ワンダーランズ×ショウタイム)のセカイのKAITOさんが汽車に乗って助けに来てくれるところです。あそこ、めちゃくちゃ好きで……!

じん:気持ち良すぎるシーンですよね!

野口:本当に! それぞれの世界のバーチャル・シンガーの個性を楽しむことができました。

各セカイのミク同士が会話しているシーンもこの作品ならではだったと思いますし、ライブシーンも大好きで……どのシーンも全部心に残っています。

廣瀬:ライブシーンというと、僕は劇場版を見る前に、全ユニットの曲を一度聴かせていただいたんですよ。最後にレオニ(Leo/need)の曲を聴いたのですが、野口さん演じるいっちゃんの声に「『プロセカ』ってこれだ!」って思ったんです。野口さんの声って『プロセカ』を象徴するような声だなって。

じん:わかります! “プロセカ声”ですよね!

野口:称号が重すぎます……(笑)。

廣瀬:それくらい伸びやかで、スッと入ってくる声なんです。「『プロセカ』と言えばこの声だ」と、自然と認識している自分がいて、改めて声の力に気付かされました。それまでも野口さんの声を近くで聴く機会はありましたが、作品を通して聴いてみると「やっぱり野口さんだよな」って。

じん:決して貴賤はありませんが、野口さんの声は“真ん中にあるタイプの声”といいますか。だからこそ他のキャストさんたちが表現されている、ある意味での尖り方が魅力的に映るんですよね。

だからなんというか……「これからも頑張るんだよ」という気持ちです(笑)。

野口:(笑)。引き続きよろしくお願いいたします!

──これが5年の積み重ねであり、重みであり……。

じん:(ゲームリリースから)5年経ってますもんね……! まさか劇場版にまでなっているなんて思わなかったなぁ。

「いて当たり前の存在」と「人生の先輩」

──劇場版ならではのシーンとして、キャラクターによる日常のシーンも多く描かれましたが、どのような意識で演じられたのでしょうか。

野口:観てくださる皆様に「ゲームの中のキャラクター達がそのまま映画に登場している」と思ってほしかったので、劇場版だからといって何かを変えることはありませんでした。強いて言えば、ゲームからナチュラルに移行してきた、と感じていただけるお芝居を心がけていましたね。

基本的にゲームのボイス収録は一人で行うので、隣から同じユニットの子の声が聞こえてくる劇場版の収録はすごくやりやすかったです。

廣瀬:僕もゲームと変わらず演じるように意識していました。ゲームのボイスは自分の尺感で喋れますが、映画になると決まった時間内に台詞を収めなければいけないので苦戦しましたね(笑)。司はたっぷり喋るので、独特なんです。

アニメーションのアフレコにあたって、人それぞれ、色々な工夫をしていたと思います。(朝比奈)まふゆなど、ゆっくり喋るイメージがあるキャラクターは特に大変だったのではないでしょうか。

──じんさんは日常を描くシーンをご覧になって、いかがでしたか?

じん:ゲームではキャラクター一人ひとりが独立した見せ方や演じ方、そしてプレイヤーの感じ取り方があると思うのですが、劇場版では全員が決められた時間軸の中で会話を続けていて、誰もスクロールボタンを押さないし、タップで会話を進めたりしないんですよね。

そういったメディアの違いもあって、映画ではキャラクターの皆さんの実像感を強く感じました。息遣いやキャラクターの印象をより有機的に感じて、いつもと違う一面を見られているような感覚もあって。

──劇場版ならではの感じ方といいますか。

じん:ひとつの作品として完成した魅力を感じて「もっと見たい!」という気持ちになりました。「『プロセカ』にはまだまだ知らないこともいっぱいあるな……」と(笑)。ファンの方に応援され、見守られながら歩んできたキャラクターたちが、演じられている皆さんの中にすっかり住んでいらっしゃるんだなと思いました。

──ゲームリリース5周年となった今、野口さんや廣瀬さんにとって一歌・司はどのような存在でしょうか。

野口:この5年間、本当に一歌を演じる機会が多かったんです。もちろん歌を歌う機会も多くて。

廣瀬:そうですね。月に2回……ある時は週イチの頻度で演じていたこともあります。ゲームとしては異例の頻度ですよね。

野口:たくさん演じて歌わせていただいているので、台詞が自然に出てくるようになりました。ある程度の方向性はディレクションがあるのですが、後はお任せという感じで日々収録させていただいています。

なので私にとって一歌は、もはや“いて当たり前の存在”です。振り返れば常に隣にいてくれたキャラクターだと思います。濃密な5年間です。

廣瀬:『プロセカ』って色々な事に挑戦しているイメージがあるんです。「ラジオ」や「放送局」「感謝祭」、「クリエイターズフェスタ」などなど……。僕は司くんをきっかけに様々なコンテンツを経験させてもらっているので、まさに“人生の先輩”ですね(笑)。彼のおかげでたくさんの景色を見ることができたので、感謝の気持ちでいっぱいです。

──じんさんから見たキャラクターやユニットの魅力を教えてください。

じん:各ユニットが、それぞれの色をした尖った夢やビジョン、自分なりの正しさを持っていて。今回の劇場版でもそうだったのですが、彼らは普段すごくギラギラしているのに、他の人と交流するとなると誰も他人を否定しないんですよ。あれ、すごくないですか?

廣瀬:ほんっ……とうにそう思います。

野口:一歌と(草薙)寧々ちゃんのやりとりなど、素直に歌を認め合うところが魅力的ですよね。

じん:めちゃくちゃ良い子たちなんですよね。人って臆病になると他人を否定しがちになると思っていたのですが、『プロセカ』の子たちは「あなたの歌も素敵だね」と、全然タイプの違う人に言えるんです。それはきっと自分の中に強いものがあるからなんでしょうね。

劇場版だけの話ではありませんが、有機的なやりとりの中で相手をリスペクトしている喋り方や距離感をより感じていました。

廣瀬:ちなみになんですけど、音楽制作チームやクリエイター同士だと、今じんさんが仰ったようなことは起こるんですか?

じん:いやぁ……悔しさと尊敬のマリアージュみたいなものはありますね! でも声優さんの中にも、そんな瞬間はあるんじゃないかなと思っていて。上手い演技を見て悔しいと思いつつも「最高~!」って思う瞬間といいますか。

廣瀬:あります……! すごくわかります!

じん:良い意味での磨き合いですよね。「あの人にも同じように思ってもらえるように」という気持ちが根底にある気がします。

「5年経っても、まだその羅針盤が指し示す方向性がブレていない」

──『劇場版プロセカ』ならではの要素のひとつである劇中ユニット曲について、まずは野口さんが感じる「SToRY」の魅力を教えてください。

野口:「いくぜー!」という気持ちになれるイントロがとにかく好きです。自分に寄り添ってくれるような歌詞も好きで、背中を押してくれるお守りのような楽曲になっていると思います。

2番の頭にあるラップも、普段聴くことのできないキャラの一面が見られて新鮮でした。全体を通してレオニらしい、強いけれど優しい楽曲になっていたと思います。そんな曲を歌わせていただけて、すごく幸せです。

──「スマイル*シンフォニー」についても、廣瀬さんが感じる魅力をお聞かせください。

廣瀬:僕は「スマイル*シンフォニー」の中に出てくる〈君は全然ダメじゃない〉〈僕は君を信じてる〉という歌詞がすごく好きなんですよ。

じん:エモい!

廣瀬:ヤバいんですよ……! ライブシーンに至るまでのストーリーも、沈みきって暗い闇の底からもう出られないぐらい重い状態で、〈君は全然ダメじゃない〉という歌詞が流れて……。

「大丈夫。できるさ」ではなくて、「そのままで良いよ」と温かい言葉で寄り添ってくれる歌詞がとにかく刺さりました。劇場でひとりギャン泣きしてしまいました(笑)。

ワンダショはショー要素を交えた楽曲になっているので、より感情移入しやすいと思っています。「ちょっともう無理かも」って心が苦しくなってきたときに聴きたい曲です。

──じんさんはこの2曲について、どのような魅力を感じられましたか?

じん:DECO*27さんの楽曲を、全曲違うクリエイターがアレンジするという、面白い作り方の中で生まれた楽曲だなと思っています。『プロジェクトセカイ』の最初の曲(「セカイ」)を作った時から、DECO*27さんにはすごい景色が見えていたんだなと感じました。

5年経っても、まだその羅針盤が指し示す方向性がブレていない。とても力強いですよね。

その力強さを各ユニットが翻訳したような楽曲群で、一見それぞれが全然違うことを言っているように見えるけれど、全員同じ方向を見ている。こういった終わり方をする曲って、中々ないと思うんです。ストーリーにおいても重要な曲だったと思います。

──キャストの皆さんの歌についてはどのような印象を抱かれましたか?

じん:皆さん、勘どころが良いなと思いました。歌詞は詩的で、あまり意味が説明されていませんよね。歌詞にいちいち米印で説明が付いていたら「うるさ!」ってなりますから(笑)。

今回もそういった歌詞の説明は当然ないのですが、皆さんの歌はこの楽曲の目指す方向と合致しているんだろうなと感じました。とはいえ完璧に一緒というわけではないので、それが太さ、強さといいますか、予定調和ではないものになっていく。そういった良いバランスで生まれている曲たちだと思いましたし、あとはシンプルに悔しいですよね。僕が書きたかったです(笑)。

廣瀬:おぉっ!

野口:次、ですかね!

廣瀬:聞きましたか!? カラパレ(Colorful Palette)の人!(笑)

じん:(笑)。でも、良い曲を聴くと気持ちがグッとなりますね。それは皆さんも同じだと思います。

──じんさんによる劇場版エンディング主題歌「Worlders」を歌って、いかがでしたか?

野口:「これこれ~!」って感じでした! 収録した時はもちろん、劇場で聴こえてきた時も感動しましたね。皆の声が響いて、胸に迫ってくるような迫力を感じました。

『プロセカ』では、これまで全員で歌う楽曲はあまりなかったので、そういった意味でも嬉しかったです。これが『プロセカ』のみんなの声なんだって。聞いたところによると、じんさんは「(この曲を)全員で録りたかった」とおっしゃっていたとか。

じん:そうなんですよ。全員で一発録りしたかったんですよね。

廣瀬:うわぁ! アツい!

野口:それができたら楽しいだろうなと思っていました(笑)。

じん:その提案をしたとき、プロデューサーさんは「あ、なるほど……うーん……」って気絶しそうになっていました(笑)。

野口:(笑)。

廣瀬:個人的に、一番目立つところで〈ドレミファソラシド〉が歌詞になっていることに痺れました! 全ての音の起源となる「ドレミ」がストーリーともリンクしていて、本当に緻密に考えていらっしゃるんだなと思いましたね。じんさんにぜひ、制作秘話を聞いてみたいです!

じん:この曲のテーマは「ドレミの歌」です。みんなで歌える楽曲を考えていた時に「ドレミの歌」のメロディーの良さに気付いて。全員で歌えて、覚えやすい曲なんですよね。あまりゴチャゴチャしていない感じが良いなと思っていたこともあって「ドレミ」を取り入れました。

初めて皆さんで歌われる曲になるということで、僕も最初は「どうなっちゃうんだろう」と思っていたのですが、目指すべきポイントは決まっていて。曲の終盤で皆さんの声が揃う〈今ありのまま〉に圧を感じたかったんです。

あのフレーズが大好きなんですよ。ハモリもとんでもなく複雑になっているのですが、そのぶん声が豊かに響き合うんですよね。心を打つような部分にしたかったので、突き詰めて考えました。

廣瀬:改めて「Worlders」のデータを見返したのですが、コーラスラインが8本くらいあって。

じん:8本(笑)。たしかにそれくらいありました。

野口:だからこその厚みですよね……!

じん:楽しかったです!

──そしてじんさんと『プロセカ』といえば、3周年アニバーサリーソング「NEO」も大きな話題となりました。

じん:劇場版でミクさんが消えてしまったシーンで、(ミクの声が消えてしまったことを確かめるために)一歌さんが数多あるサムネイルから「NEO」をクリックしてくれたんですよ。

野口:「まさか……!」って(笑)。

じん:ありがたかったです(笑)。

──野口さん、廣瀬さんは、収録の際に印象に残っていることはありますか?

廣瀬:多くのボカロPの皆さんがそれぞれ楽曲を書かれる中で、じんさんのイメージはレオニやビビバスと繋がりやすいなと思っていたんです。だからじんさんの描く世界観にワンダショが絡めるとは思っていませんでした。

だからなおさら「NEO」を歌えることが本当に嬉しくて……! 歌詞に思いを馳せながらがむしゃらに収録をした記憶があります。

じん:イベント「天の果てのフェニックスへ」で、限界に気が付いた司くんにも繋がる歌詞だなと思っていました。「生まれながらに光っているわけじゃない」「だからこそ歌うんだ」という部分に繋がりそうだなと。個人的に好きなエピソードでもあったので、ミーニングも感じていました。

野口:3人で出演したラジオ番組でも「NEO」について話しましたよね。

じん:あの時から「NEO」の印象って変わりました?

野口:今もあの時と変わらず「じんさんの曲だ……!」という喜びと感動と緊張があります。この曲を届ける責任感のようなものはずっと感じていましたね。

曲の印象で言うと、周年曲なのに良い意味で周年曲らしくないといいますか。明るく盛り上げるというよりも、ジーンと胸に来るような曲ですよね。またどこかで皆と一緒に歌いたいです。

──言葉にならない、熱い気持ちになる曲ですよね。

じん:辛い想いをたくさんして、全然上手くいかなくて。それでも足掻いて馬鹿にされながらも歌う。そこで初めて「歌っていることになる」といいますか、それまではともすれば歌ではないかもしれない曲なんですよね。

ゲームリリースから3年経った当時、この作品に関わっている人も疲れたと思う瞬間があったと思うんです。でも頑張って歌うぞ、という瞬間こそ「初めて歌った」ことになるのかもしれない。「もう疲れた。でも頑張って歌うぞ」という瞬間の歌でもあります。

「『プロセカ』ってアツいんですよね」

──ゲームリリースから5周年を迎えた『プロセカ』ですが、特に思い出深かった出来事を教えてください。

廣瀬:ボカロPの皆さんがこんなにお優しい方々だとは思ってなくて……(笑)。

野口・じん:(笑)。

廣瀬:本当に衝撃だったんですよ!(笑) レコーディングでお会いするまで、ボカロPの方をどうしても楽曲先行のイメージで想像してしまっていて。「曲はこうだから、ちょっと怖いのかな」と思っていたら、とても朗らかな方がいらっしゃったり。

しかも皆さんがもちろん音楽を愛していて、加えて僕たちのことも愛してくださるので、レコーディングが毎回楽しかったです。僕たちがやりやすいように配慮いただきながら、良いものを目指してくださっているのが伝わってきて、皆さんのことが大好きです。

──ちなみに廣瀬さんとじんさんの初対面は「NEO」の収録のときだったのですか?

廣瀬:そうですね! 「NEO」を録るときにお電話をさせていただきました。

「NEO」はちょっと異例で「アナザーボーカルver.」と「セカイver.」でキーが違っているんです。「セカイver.」の収録が終わったあと、「アナザーボーカルver.」を収録する日にお電話で「『セカイver.』めちゃめちゃ良かったです!」というお言葉をいただいて……もう緊張でガッタガタですよ(笑)。震えちゃって震えちゃって。

──そのお電話を経た初顔合わせの時、じんさんは廣瀬さんに対してどのような印象を抱かれましたか?

じん:司くんのイメージもあったのですが、実際にお会いして「格好良いな。でも怖い人だったらどうしよう」と思っていました(笑)。

廣瀬:(笑)。

じん:お話ししてみたらめっちゃ良い人じゃん!と(笑)。

廣瀬:お互いに同じようなことを思っていたんですね(笑)。野口さんはどうですか?

野口:プロジェクトの立ち上げから思い出すと、胃が痛くなりますね……(笑)。特に一歌は基盤、基準になることが多かったので、レコーディングを何度もやり直すなど本当に色々なことがあって。でも今では、本当に色々なところに『プロセカ』ファンの方がいてくださるので、頑張って良かったなと思います。

立ち上げのころは、人間の声とボカロの共存が受け入れてもらえるのかなど、不安な気持ちも大きかったんですよね。でも皆さんに受け入れていただけて、ボカロを好きになってくださる方もいるし、『プロセカ』キャラのことも好きになっていただけて……。

気づけば5周年を迎えるコンテンツに成長していて、様々な好きが集まった作品になってくれたので『プロセカ』に出会えて本当に良かったです。

廣瀬:ちなみに野口さんって、5年前はおいくつだったんです……?

野口:25歳です。だから立ち上げの時は24歳でした。

廣瀬:24歳でプロセカを背負っていたんですか!? それは不安な気持ちにもなるよ……!

野口:それが30歳になるまで続いていて嬉しいです(笑)。

──最初期というと、やはり「ステラ」の存在は外せない要素かなと思います。

野口:そうですね。「ステラ」がきっかけで『プロセカ』を始めた子もいるんですよ。なんて良い曲なんだ……!

廣瀬:(大きく頷いて)

じん:ありがとうございます(笑)。

野口:「ステラ」の収録はプロジェクト立ち上げの時に行ったので、私たちも『プロセカ』を深くわかっていない状態だったのですが、とにかく曲が良いことだけはわかっていて(笑)。名曲に出会えたということにすごく感動していました。

じん:野口さんがおっしゃったように、「ステラ」を作った時は情報がほぼ何もない状態で、スタッフさんの熱意だけがありました(笑)。「この子たちはLeo/needというユニットで、こんなに良い子たちで……!」と力説されて。

廣瀬:(笑)。5年前はミクさんと人間が歌うという発想自体もちょっと特殊でしたよね。

じん:ボカロPは人間とボカロの混ざり方に対して、一人ひとり強い考えを持っていますからね。ボカロPは化け物の群れなので……。

廣瀬:じんさんもその中に?(笑)

じん:わたくしもその中に(笑)。そんなボカロPを相手に、スタッフさんたちも覚悟をしてきたのだろうなと感じました。カッコよかったですね。その熱意がガツンと刺さって、僕も「ステラ」を書くことになりました。

廣瀬:スタッフさんも嬉しいだろうな……!

じん:「ステラ」を作った時のことは鮮明に覚えていますね。新しく生まれたプロジェクトって、長く続くとは限らないじゃないですか。時間が経って続けられなくなってしまうことも珍しくなくて。「それでも本気で取り組めるのか」といった悩みはどうしても生まれてしまうものだと思うんです。

でも先ほどもお話ししたとおり『プロジェクトセカイ』のスタッフさんはとんでもない熱量だったんです。最初から「良いものにするんだ!」と。

廣瀬:アツい……!

じん:「ステラ」の2番のサビに好きな歌詞があるんです。〈所詮僕は僕だった〉なのですが……普通は書かないですよね(笑)。余所行きならこんな歌詞は書かないハズなんです。

でもスタッフさんが本気で来てくれたから、僕も本気で書いた。曲のテーマに対して言葉を選ばないといいますか。自分が正しいと思った言葉を書く、おべっかを使わない……だから2番の歌詞は特に暗くなってしまいました。

でもそれがあるからこそ歌うんだ、という気持ちは伝わるだろうと思っています。小さい子が「『ステラ』がすごく好きです」と言ってくれているのを聞くと「小さいうちから良い曲を聴いたね」って褒めたくなりますね(笑)。

野口・廣瀬:(笑)。

じん:それくらい自信を持って出せるような作品をご一緒させていただけて、本当にありがたいです。

『プロセカ』ってアツいんですよね。「こんなアツい生まれ方をするコンテンツが令和にもちゃんとあるんだ」と知らしめた作品なんじゃないかなと思います。

廣瀬:それをじんさんが言ってくれるのが本当に嬉しいです。

じん:多分皆さんが思っていることですよ。

──最後に、Blu-rayで本作を見届けるファンの皆さんに向けて、メッセージをお願いします。

廣瀬:Blu-rayをご購入してくれようとしている方、そしてご購入してくださった方、本当にありがとうございます。このインタビューでかなり密度の濃い会話をしていたのですが、それくらいアツい想いの詰まった作品の劇場版となっております。

どのシーンも素敵で、どの楽曲も胸に刺さるものがたくさんあると思います。そして最後には「本当に良いものを見たな」と思っていただける自信がありますので、ぜひご自身のみならず、多方面に宣伝していただけたら嬉しいです!

野口:何度も劇場に足を運んでくださった皆さんも、Blu-rayを手に取ってくださる皆さんも、本当にありがとうございます。「ここを見てください」というシーンが選べないくらい見どころ満載で、スタッフの方々含め、多くの方々の情熱が一つに詰め込まれた作品となっています。

「音楽っていいな」「時には言葉より伝わるものがあるよな」と思わせてくれるような力のある作品なので、何かに悩んだ時には特に見てほしい作品です。ぜひ何度でもご覧になっていただければと思います!

じん:このインタビューを読まれている方は、きっとBlu-rayをご購入されていることでしょう(笑)。物語はもちろん、キャラクターの魅力や皆さんの演技、さらに監督さんのお見事なビジョン、音楽家の考え方や情熱など、たくさんの魅力が込められた作品です。我々が頑張ってこういうものを作っていることをぜひ感じていただけたらと思います。

また、こういった作品を作ったり人に届けたりといったことに興味のある方と、この作品をきっかけにいつか未来で出会いたいと思っています。もちろんどんな方でも必見の内容になっていると思いますので、楽しみにしていてください。

【インタビュー:西澤駿太郎 撮影:MoA 文:柴山夕日 編集:太田友基】

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