寂しい思いしてる?反抗期の自閉症姉、手のかかる弟に挟まれたきょうだい児長男を頼りがちに。母が伝えるべきことは
監修:新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)中1娘と5歳下の弟の関係は
広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある中学1年生の娘には、5歳下の弟がいます。長男が産まれた時、私は発達障害がある姉がいる長男のことを心配していました。
私が娘にかかりきりになって寂しい思いをしないか……発達障害があることで一般的な姉弟と違う関係になってしまうのではないか……姉弟関係がうまくいくのか、不安でした。
会話が上手くいかなかったり、娘がイヤイヤ長男の相手をするという時期もありましたが、成長を重ねていき、2人は、私が想像していた以上に良い関係を築いてくれました。
しかし、娘が中学校に入学してからは、勉強や部活に忙しくなり……娘と長男が過ごす時間は少なくなりました。そして、今まで赤ちゃんだった次男が成長し、長男と次男が一緒に遊ぶことが多くなりました。
同時に反抗期真っ盛りの娘と私がもめることも増え……長男は、そんな様子をただ黙って見ていました。
母親の私がいうのもなんですが……長男は察することが得意。今何をしたらいいかや、言わないほうがいいことを、説明しなくても理解しています。そのため、私はついついしっかりしている長男に頼ってしまいます。
もしかして長男は寂しい思いをしてるかも?
空気の読むのが上手な長男ですが、実は、3姉弟の中で生粋のママっ子。
口には出しませんが、もしかしたら姉と弟のことで忙しい私に気を使って遠慮し、寂しい思いをしているかもしれない……。
私は、少しでもフォローになればと、休日に長男と2人で、出かけることにしました。
「ママとカフェに行きたい」という長男のリクエストで、2人でカフェに行くことになりました。カフェでのんびり食事をし、外を散歩することにした私たち。歩きながら私は、長男に話をしました。
日頃の感謝と、私の反省を長男に伝えると
日頃の感謝と、私の反省を伝えると、長男は「いいんだよ」「ママは頑張ってるよ」と言ってくれ、こんな怒りんぼうな私をちゃんと見ていてくれることが、うれしくてたまりませんでした。それから私は、娘の話をしました。
私は、長男が小さな頃から、娘のことは説明していました。まだちゃんと理解できるまで、専門的な用語は使いませんが、娘の苦手な部分に関しては、隠さず話してきました。
私が娘に対して、厳しいことを言うことが多くなってから、私の本当の気持ちは娘に届きにくくなりました。「あなたのことが大好き」と娘に伝えても、反抗期の娘は無言……。自分の思いが伝わらないまま、声かけをしていくことがしんどくもなってきていました。
せめて長男には、私が思っていること、考えていることをちゃんと分かっていてほしいと思いがありました。私は、娘への思いをそのまま伝え、長男にしてほしいことを伝えました。
ありがたいことに、長男は理解してくれました。
それから私は、定期的に長男と出かけるようにしています。長男が好きなゲームセンターに行ったり、公園で鬼ごっこをしたり、長男の話をゆっくり聞くようにしました。長男はいつもお出かけを楽しみにしてくれていて、2人きりの時間はとても楽しそうです。
長男は、いつも私やきょうだいたちをよく見ていて、空気を読んで動いてくれます。しかし、しっかりしていても、まだ小学1年生。長男に甘えすぎないで、ちゃんと向き合う時間をこれからもつくっていきたいと思います。
執筆/SAKURA
(監修:新美先生より)
発達障害のあるお姉さんとその弟さんとの関係について、詳しく教えて下さりありがとうございます。あーさんと弟さんのやり取りがほほえましく、ほっこり読ませてもらいました。
一般的に、病気や障害のある方の定型発達のきょうだいは「きょうだい児」と呼ばれることがあり、さまざまな場面で我慢を強いられやすく、きょうだい児ならではのストレスがかかると言われています。
とは言え、ご家庭ごとに事情は異なります。大切にしていくことは、障害などがありケアに手がかかるお子さんも、そうでないお子さんのことも、一人ひとりの人格を尊重していくことかと思います。負担が大きい場合は、それぞれの個室をつくる、別々に活動する時間を増やすなど、障害や病気のないほうのお子さんも、自分らしく過ごせる時間を確保することも大切です。
SAKURAさんのご家庭では、姉弟仲もよく、弟さんがとても良く気がつくタイプで、自然にフォローしてくれたりするのですね。頼りになる分、負担がかかっていないかな、無理をしていないかなと心配になることもあったのかもしれません。弟さんとお母さん二人の時間をつくり、気持ちを聞いたり、子どもらしく甘えられる楽しい時間をつくるというのはいいですね。弟さんの場合は、負担に思っていることはなかったようですが、それでも、こんなふうな特別な時間が過ごせることはうれしかったことでしょう。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。