子どもの困り事の解決に向けて。「専門機関」へ連れていくための“適切な声がけ”とは?
臨床心理士・公認心理師のyukoです。家庭や学校で困りごとがある場合、病院や専門機関の受診を考える方は多いでしょう。しかし、「精神科」「病院」と伝えると子どもが行きたがらないだろうし、伝え方を迷うという悩みをよく聞きます。子どもに受診や心理検査を勧めたいときのコツを考えてみます。
専門の相談機関に連れて行きたいけど、どうやって声をかけよう。
小4の娘。赤点ほど成績が悪いわけではないけど、学年が上がるごとに勉強についていくのが大変そう。授業中もぼんやりとしてることが多く、集中できていないみたい。やる気がないのかな? わからなくて授業が嫌になったのかな? それともこの子には他の子と違う苦手さがあるのかな?
「授業に参加できない」、「登校を嫌がる」など、明らかな困り事があるわけではないけれど、他の子とは少し違う様子の子は多いです。
他にも、
・家族とのコミュニケーションは問題なくできるものの、同級生の友人とのコミュニケーションはちぐはぐになりやすい。
・勉強はなんとなくついていけているようだけど、授業の種類によってはうまくノートが取れない。
・なるべく早くやる課題や、時間制限のある課題になると周りよりかなり遅れをとってしまう。
やる気の問題なのか能力の問題なのかが見えづらく、本人も何に困っているのか言葉にできず、周りもどう支えていけばよいかわからなくなってしまう子もいるでしょう。困った様子がしばらく続くと、専門の機関や病院の受診も視野に入れる方は多いと思います。しかしそんなとき、子どもにはどう説明していけばよいのでしょうか。
まずは、「誰が」「どのように困っているのか」を整理
困っているのは本人に決まってると思われるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
・中学受験をさせたいのに、思うように成績が伸びず困っている親御さん。
・周囲の子と同じペースで作業を進めさせたいのに、遅れを取る子に対してどう声をかけたらよいか迷う担任の先生。
本人は気にしていなかったり、自分が何に困っているのかわからない段階の場合も多いんです。まずは、今悩んでいることについて、誰がどのように困っているのかを整理するところからなんですね。
可能な限り、本人と話し合う
どこかに相談に行くにしても、検査を受けるにしても、子ども本人のモチベーションが重要となってきます。低年齢の子であればある程度仕方ないのですが、小学校中~高学年であっても、相談の目的を親子で共有せずに来られる方は多いです。
それでもなんとなく、「親に連れてこられた。多分僕の勉強のことで心配してるんだと思う」などと言えるくらいであれば、相談には繋がりやすいもの。しかし一方、「何も言われていない。ここで自分が何をするのかわからない」という子は、その後の相談もスムーズに進みにくくなります。
「病院」や「専門の先生」に相談すると伝えると、子どもが嫌がったり、委縮してしまうかもしれないと思う親御さんの気持ちももっとも。しかし可能な限り、子どもが自分事として相談に繋がれるようサポートするのも大切なんです。
・今授業でノートを取るのが少ししんどそうだよね。今より楽に授業を受けられるようになるために、相談に行ってみるのはどうかな?
・この間友だちとの付き合いが難しいって話をしてくれたよね。ママ(パパ)も考えてみたんだけど、フラットに見てくれる先生を頼ってみるのもひとつかなって思うんだ。相談してみることについてはどう思う?
など、親が先に全て決めて「行くよ」と伝えるのではなく、子どもと一緒に考えてから相談を決めるのがおすすめです。
子ども自身が「自分の困りごとをどうにかするんだ」と思えるのが大切。そう思えると、その後検査をした場合、今できる限りの力を発揮しやすくなりますし、相談に繋がった場合、自分ごととしてしっかり考えやすくなります。
親子一緒の方向を向いて、より過ごしやすくなるための方法を見つけていけるとよいですよね。
yuko/臨床心理士・公認心理師