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子どもの教育のため軽井沢に移住。その真意とは?

ソトコトオンライン

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子どもの教育をきっかけに移住を決意した人、やりたいことを邁進するために地域で家を借りた人、二拠点が今の暮らしの形に定着している人。少し前をいくニュー・移住者のみなさんに、それぞれの暮らしをより詳しく知るための質問に答えていただきました!

Case1. 教育移住

子どもの教育にふさわしい環境を求めて地域に移住する「教育移住」。建築家の加藤匡毅さんは、自主的に考え、行動する力を養ってほしいと長野県・軽井沢町にある私立の学校に長男を入学させました。それを機に、両親の仕事や生活にも変化が!

かとう・まさき●一級建築士。工学院大学建築学科卒業。『隈研吾建築都市設計事務所』、『IDÉE』を経て、2012年に『Puddle』を設立。著書に『カフェの空間学 世界のデザイン手法』(学芸出版社刊)。主な作品に『SANU Apartment Ichinomiya』『DANDELION CHOCCOLATE KURAMAE』など。

Q:便利な都心ではなく、自然が身近にある地域に移住したのはなぜですか?

A:自分で意味づけする力を養ってほしいからです。
息子の小学校入学を機に、東京都渋谷区での暮らしと仕事にピリオドを打ち、長野県・軽井沢町に移住しました。友人家族から聞いた私立の学校に、息子を入学させたいと考えたのです。渋谷での暮らしは、人によって意味づけられた建物や公園などに囲まれて営まれています。一方、自然は一つだけの意味を見いだすことのできない多様なものなので、向き合おうとすると自分で意味づけすることが必要。「こうすることに何の意味があるのか」と自分で考え、行動するようになるはずです。そこに教育移住の魅力を感じました。何度か軽井沢を訪れ、息子も「行きたい」と自ら決めたので、家族3人で移住。合格する前から土地探しをはじめたほどワクワクしました。

Q:入学して4年目。息子さんは、どんな学びを得られていますか?

A:息子だけでなく、私たちも素直な気持ちで生きています。
この春から息子は4年生になります。学校生活で印象的だったのは、子ども同士で「ピザをつくろう!」という話が持ち上がったときのこと。具材となる野菜を育て、ピザ窯を組むための日干しレンガをつくるところから始めるというから驚きました。ピザを口にするまで何か月間かかるのやら。でも、そんな活動を楽しんでいる息子の様子を見ると、移住してよかったと感じます。私も都会で働き続けることに疲弊し、年に2週間は自然の中で心と体を休ませていましたが、軽井沢に住んでいる今はその必要はありません。自然はすぐそばにありますから。私も、成長する息子と共に、意味を見いだしにくいものからクリエイションを行う時間を楽しんでいます。妻の奈香は植物療法士としてワークショップを開催しながら、森の枯れた植物を剪定し、リースにする活動を始めています。息子の教育移住を機に、私たち親自身の本質もあふれ出てきて、「やりたいことをやろう」と素直な気持ちで生きることができるようになりました。

Q:学校は9年間で修了しますが、卒業後はどうされる予定ですか?

A:もちろん息子次第ですが、新たな教育移住先の候補も。
息子の通う学校は9年生(中学3年生)まで。もともと「16歳になったら独立するんだよ」と3歳の頃から言い聞かせているので、卒業したら息子は軽井沢を離れるかもしれません。独立して次の学びの場所に一人で向かうのか、私たちも併走するのか、まだわかりません。私がおぼろげながら次の候補地として思い浮かべているにはオーストラリアです。南半球の自然に近い都市に暮らし、日本と行き来しながら仕事ができれば、と。息子が望めば、3人と1匹(犬を含め)で行くことになるでしょう。その場合はコミュニケーションツールとしての英語を習得し、多様な人々のコミュニティに入っていくにはどうしたらいいかを自主的に気づき、学んでほしいです。それには、自分自身とよく話し、好きになることが大事です。そのうえで、他者を愛せる人になってくれたらうれしいですね。物事を鵜呑みにせず、咀嚼して意味を考える、その考える自分が存在していることの喜びを、軽井沢で感じてほしいです。

『Puddle』が設計した「風越の家」。開放的な室内に和やかな家族の時間が流れる。
東側の窓から眺める雪景色。長男に、「大人になっても故郷の家として帰ってきてほしい」と加藤さん。

『Puddle』・加藤匡毅さんの、移住にまつわる学びのコンテンツ。

Book:教育の力
苫野一徳著、講談社刊
数学者でもあり、哲学者の苫野一徳さんの考えは、子どもたちの「根」になると同時に、僕自身の指針にもなっています。自分で考えたことを他者と共有しながら、一緒に何かをつくっていく姿勢を学んだ一冊です。

Website:Motor-Fan
移住を機に、軽井沢を運転するのにふさわしい4WD車に買い換えました。車選びのためにさまざまなサイトを参考にしましたが、『Motor-Fan』もその一つ。山道、凸凹道、泥んこ道、雪道を走る車は4シーズンブーツのような存在です。

Website:軽井沢ナビ
私が尋ねた不動産屋の社長は、軽井沢とその界隈を案内してくださり、地域の環境や個性を教えてくれました。そのときに見ていたウェブサイトです。結果、歩いて通学できる地域に土地を買い、家を建て、毎朝出かける息子を見送っています。

text by Kentaro Matsui

記事は雑誌ソトコト2024年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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