ケンカやいさかいが絶えないチーム、真面目な子に迷惑がかかるから解決したいけど、どうすればいい?
子どもたちのいさかいが絶えないチーム。「ケンカしててサッカー上手くなるの?」と問いかけをしているが変化が感じられない。来年高学年で公式戦も始まるし焦る。
なにより真面目に練習している子に迷惑がかかっている。お父さんコーチとして自分に何ができる? という質問をいただきました。
今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ご自身の経験をもとにアドバイスを送ります。
(取材・文 島沢優子)
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<お父さんコーチからの質問>
こんにちは。
子どもが所属している少年団で父親コーチをしています。(指導年代:U-8、U-10)
ご相談ですが、1番の悩みは子どもたちの不協和音です。技術の相談でなくて申し訳ないのですが、けんかや言い合いが絶えません。他の真面目に練習をしている子たちが迷惑している状況です。
基本的には子どもたち同士で解決した方が良いと思って見守っています。中にはけんかを注意する子もいますが、相手の子が受け入れられず状況が変わらない事がほとんどです。
私としても「けんかをしていていいの? それでサッカーは上手くなるのか?」などの問いかけも繰り返していますが、子どもたちの変化を感じる事ができずにいます。
本当に変化していないのか、変化に気付けていない自分の捉え方に問題があるのか、悩みは深まるばかりです。
来年からは高学年として公式戦にもいかねばならないメンバーがいる中で、チームをまとめようと焦る気持ちも出ているのだと思います。
問題は子どもたちではなく、自分の考え方、とらえ方だと自覚しており、なんとか抜け出すきっかけを模索する日々です。
纏まりのない悩みですが、どうしていけば良いのか御意見を頂きたいです。よろしくお願い致します。
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
指導されているのが8歳以下と10歳以下とあります。このカテゴリーは、やんちゃ盛りでまだまだ自分を律することは難しい年代です。つまりギャングエイジに近い層と言えます。
■今の対応でOK、ケンカしないよう無理に押さえつけない方が良い
いざこざが起きる年代なので、ある程度のけんかは仕方がないでしょう。いさかいが起きた際に「それでサッカーは上手くなるの?」と問いかけている、と書かれています。良い対応です。そうやって大人が言い続けて育てるしかありません。
逆に「絶対けんかするな」とか「けんかするならボールは触らせない」などと走らせるようなことはしないでください。無理に抑えつけて言いたいことが言えない空気になるのは良くありません。
ご相談文に「けんかを止める子もいる」とあるので、引き続き「みんなで注意しよう」とことあるごとに伝え続けてください。
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■飛び級などもケンカの原因になりがち、両方のケアを
その一方で「来年からは高学年として公式戦にもいかねばならないメンバーがいる」とあり、そこが心配です。全員ではないかもしれませんが、一部の子どもだけ高学年の試合に呼ばれる。
つまり、飛び級する子どもが出てくるようです。そうなると、それが引き金になって、けんかの種になりがちです。飛び級する子どもも、そこに入れない子どもたちについてもケアする必要があるかも知れません。
■犯人捜しではなく、みんながサッカーを楽しむにはどうしたらいいか話し合う
こういうとき、いじめたり暴言を吐いた子どもが誰なのかといった犯人捜しをするケースが多いようですが、それはやらないほうがいいでしょう。仮に目星がついていたとしても、個人を特定するのではなく全体の問題にすべきでしょう。
例えば「チームワークってどんなことなのかな?」「チームワークがいいチームって、どんなチーム?」などと問いかけて、選手全員とコーチとで話し合ってもいいでしょう。「みんなにも起きるよ。どうしたらいいかな?」と当事者として考えてもらいます。
さまざまな意見が出ると思うので、そこでコーチが「選手同士がいつもけんかしてるようでは、チームワークがいいとは言えないかな」と話してもいいかと思います。
とはいえ、試合をしている場面で大きなけんかが普段と同じようにあるのであれば、少々重症かもしれません。言い合いが頻繁に起きるようでは、みんながサッカーを楽しめないことを伝えてください。
そのうえで、「みんながサッカーを楽しむにはどうしたらいい?」と問いかけて、考えてもらってください。そうではなく、試合でけんかすることはなく、まとまってプレーできるのなら大きな問題ではなさそうです。
■すぐには解決できない問題だ、とどっしり構えていよう
次に、コーチご自身のことです。焦っているかも? と自問自答しています。それは十分考えられます。
課題解決は遅いより速いほうが良いかも知れませんが、結果を急がないようにしましょう。この問題が起きたからこそ「みんなが仲良くなるには?」「チームワークとは?」と子どもは考えることができ、学べるわけです。
このことに限らず、すぐには解決できないのだ――そんなふうに構えておいてください。
少し長い目で、うまくいかなかったとしても仕方ないな、というくらいどっしり構えてほしいです。
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サッカー少年の親の心得LINEで配信中>>■池上さん自身、いさかいが絶えないチームを担当した時に行ったこと
私自身もいさかいが絶えないチームを担当した経験があります。争っている2人だけの問題にせず、チーム全体の話にしました。
これは男子の中に2人だけ女子がいる中学生のサッカー部の話です。女子2人。他の十数人は全員男子。中学生男子は下ネタのようなジョークを女子に向かって言いたくて仕方がない年頃です。しかし、それを女子は嫌悪しています。もっと言えば、男子の中もそういう話が嫌な子もいます。
仲間に嫌な思いをさせるのは良くありません。これから先、同じことが起きないようにするのはどうすべきか? そういったことを話し合ってもらいました。
すると、仲裁に入る、両方の言い分を聞くなど、さまざまな意見が出てきます。常に話し合うことで解決するという経験をさせてあげましょう。
■時に対立したり、意見を言い合うことは成長のプロセスとして大事
けんかしろとは言いませんが、時に対立し自分たちの意見を言い合うことは、成長のプロセスとして重要です。自分が発言するときに「こういうふうにしゃべったほうが相手を尊重できる」などと学びがあります。
例えば練習の中で、けんかしている子ども同士をペアにしてもいいでしょう。それもコミュニケーションが円滑にできるようになるひとつのやり方です。そのためにも、いつも練習する相手を変える習慣をつけておきましょう。
池上 正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。