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コギャル時代が一気に到来!安室奈美恵の大ブレイクによって主役はOLから女子高生へ!

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1995年12月04日 安室奈美恵のシングル「Chase the Chance」発売日

連載【新・黄金の6年間 1993-1998】vol.21
▶ Chase the Chance / 安室奈美恵
▶ 作詞:小室哲哉、前田たかひろ
▶ 作曲:小室哲哉
▶︎ 編曲:小室哲哉
▶ 発売:1995年12月4

変化のタイミングはある日突然やって来る


ミッシングリンク―― “失われた環” という言葉がある。

生物の進化を “鎖” に例えると、ある形態から次の形態に移行する中間を埋める化石が見つからない状態を―― 鎖の途中の環がない―― ミッシングリンクと呼ぶ。そして、多くの生物の進化の過程には、そんなミッシングリンクが存在する。

近年、進化論の研究が進み、ミッシングリンクの正体が分かってきた。それは、生物は緩やかに進化するのではなく、極めて短期間のうちに “大進化” を遂げ、その後は変化のない状態が長く続くというもの。そして、再び “時” が来たら、また短期間で大進化する――。地球の長い歴史のスパンで見れば、短期間なる尺は存在しないに等しく、中間の化石が見つからないのは、そういう理由である。

人間社会も同じかもしれない。未来に向かって緩やかに世代交代が進むのではなく、変化のタイミングはある日突然やって来て、極めて短期間のうちに劇的に世代交代が進む。そして、また変わらない日々が続く―― その繰り返しと。実際、あの時もそうだった。

1996年、いきなりメインステージに躍り出たのはコギャルだった


そう、時に1996年――。
前年までのコンサバティブな空気が一変し、それまで時代の主役だったOL(ex.松下電工のCM “きれいなおねえさんは、好きですか。” の水野真紀ら)に代わり、いきなりメインステージに躍り出たのは、茶髪・ガングロ・ミニスカ・ルーズソックスの女子高生―― “コギャル” だった。またの名をアムラーとも。

思えば、それ以前―― 1970年代後半から1990年代半ばにかけて、時代を牽引したのは、女子大生やOLたちだった。1970年代後半、ファッション誌の『JJ』(光文社)が火を付けた “ハマトラ、ニュートラ” ブームに始まり、1980年のミノルタのCM “いまのキミはピカピカに光って” に出演した熊本大学在学中(当時)の宮崎美子サンのブレイク、そして文化放送の『ミスDJリクエストパレード』やフジテレビの『オールナイトフジ』など、時代は何かと “女子大生” を求めていた。1980年代半ば、かの “おニャン子クラブ” の大旋風で一瞬、女子高生に光が当たるも、ブームはわずか2年半で収束。代わって時代の主役に躍り出たのは、バブル時代を背景に磨きをかけたOLたちだった。

1987年、映画『私をスキーに連れてって』(監督:馬場康夫)でヒロイン・原田知世は秘書課の清楚なOLに扮し、翌1988年のドラマ『抱きしめたい!』(フジテレビ系)で浅野温子は、携帯電話を片手に仕事のできるスタイリストを演じた。22歳以上しか入店できない日比谷のディスコ『ラジオシティ』は、ピンキー&ダイアンのボディコンスーツに身を包んだOLたちで賑わっていた。

1990年代に入ってもその傾向は続いた。1991年のドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)で鈴木保奈美演じる赤名リカは、四国・愛媛から転勤してきたカンチ(織田裕二)を振り回す奔放な同僚社員を演じ、とんねるずの2人が交互にロケを行う『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ系)は、1987年から1994年にわたって、野郎どもが憧れる女子大生やOLたちをフィーチャーした。

ところが―― 前述の通り、1996年に全てが一変する。ストリートの主役は女子高生(コギャル)に取って代わり、メディアも彼女たちを追いかけ始めた。企業も女子高生向けの商品開発に着手して―― 同年、バンダイから『たまごっち』が発売される。そう、ヒット商品はまず女子高生から火が着いた。一方、それまで時代を牽引してきた女子大生やOLたちは透明人間のごとく、その存在感を消してしまった。

安室奈美恵、「Chase the Chance」で自身初のオリコン1位に


そんな1996年の “大進化” のキッカケを生んだのが、誰あろう、前年の1995年末に一躍ブレイクした安室奈美恵、その人だった。今日―― 12月4日は、今から30年前の1995年―― 彼女がソロ名義となって自身初のオリコン1位になった、4枚目のシングル「Chase the Chance」がリリースされた記念すべき日にあたる。

 Just Chase the Chance
 信じてる道は
 Chase, Chase the Chance
 まっすぐに生きよう
 夢なんて見るモンじゃない
 語るモンじゃない
 叶えるものだから

作詞:小室哲哉・前田たかひろ、作曲・編曲:小室哲哉。いわゆる小室ブーム真っ只中に作られた楽曲である。この年、小室サンはプロデュース業に転じて3年目。最も脂が乗っていた時期で、まず1月から3月にかけて、trf(現:TRF)に3ヶ月連続でシングルを提供して、いずれもミリオン。続いて、H Jungle With t(ダウンタウン 浜田雅功)に提供した「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」が、あれよあれよとダブルミリオン。8月にはglobe、9月には華原朋美を立て続けにデビューさせて、10月―― 満を持して取り組んだのが、安室奈美恵のプロデュースだった。

SUPER MONKEY'Sのメンバーとなり、地元のテレビ局で活動


安室奈美恵―― 1977年9月20日、沖縄県那覇市出身。小学5年生の時、友人の付き添いで『沖縄アクターズスクール』を見学した際、マキノ正幸校長にスカウトされる。当初は引っ込み思案な性格だったが、スクール内で見たジャネット・ジャクソンのミュージックビデオに衝撃を受け、自ら歌とダンスを志すようになる。

最初の転機は1991年、中学2年の時だった。スクール内で選抜されたグループ “SUPER MONKEY'S” のメンバーとなり、地元テレビ局で活動するうち、ライジングプロダクションの平哲夫社長の目に止まる。翌1992年、グループは週末のみ東京で活動するようになり、同年9月にメジャーデビュー。1993年にはメンバー全員、アクターズスクールを卒業し、活動拠点を東京に移した。NHKの『ポップジャム』にアシスタント出演したり、アニメ『忍たま乱太郎』のエンディングテーマ曲をリリースしたり、徐々に知名度を上げたのがこの頃である。

1994年―― この年、安室奈美恵は第2の転機を迎える。4月、彼女のみ『ポンキッキーズ』(フジテレビ系)のレギュラーに抜擢され、鈴木蘭々と “シスターラビッツ” を結成する。恐らく、僕も含めて、多くの人がこのタイミングで安室ちゃんを知ったんじゃないだろうか。更に、7月にはグループ名を “安室奈美恵 with SUPER MONKEY'S” と改名。事実上、彼女がグループの顔になった。

ついに小室哲哉プロデュースのシングルがリリース


しかし、本当の転機はここからだった。1995年1月、初めてavex traxのMAX松浦がプロデューサーとなり、ユーロビートのカバー曲「TRY ME 〜私を信じて〜」をリリース。カラオケ人気も手伝い、70万枚を超える大ヒット。第3の転機である。更に同年4月、グループで『THE夜もヒッパレ』(日本テレビ系)のレギュラーに選ばれ、翌5月、trfの『Overnight Sensation』をダンス付きで披露したところ―― テレビでそれを見ていた1人の人物がいた。小室哲哉である。

たまたま見ていた『THE夜もヒッパレ』で、安室さんがtrfの楽曲を歌っていて、この程度なら余裕で歌って踊れると(僕に)アピールしているようだった。ならば、trfの路線に、等身大の彼女の魅力を足せば、渋谷の109あたりのティーンの女の子にウケるんじゃないか


同年10月25日、彼女にとって初めての小室哲哉プロデュースとなる、ソロ名義3作目のシングルがリリースされる。「Body Feels Exit」である。

 Body Feels EXIT
 Body Feels EXCITE
 ここまで どんな 道を歩いて
 あなたにやっと たどり着いたかを
 何か見えずに だけど何かを
 見つけたかったよ 部屋に1人きり
 膝をかかえて 動けなくたって
 Body Feels!!

同曲を歌う安室奈美恵は、ロングヘアーに大人びたメイク、低音から高音まで響く歌声、そしてスリムな体から繰り出される華麗なるダンスと、それまでのアイドル路線から脱し、ダンスミュージックを歌い踊る1人のシンガーへ急速に舵を切ろうとしていた。

そして、そのわずか1ヶ月半後の12月4日、先にも記した4枚目のソロシングル「Chase the Chance」がリリースされる。オリコントップに立つのは、翌々週の12月18日である。時に彼女は、完全にディーバ(歌姫)に変わっていた。その短期間の変身ぶりは、同コラムの冒頭でも紹介した “大進化” そのものだった。

1996年のコギャル元年の幕明けまで、もう2週間を切っていた。

Previous article:2023/12/18

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