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現役書店員が選ぶ、つながりを考える1冊──「ほんの入り口」編【NHK100分de名著キャンペーン2024】

NHK出版デジタルマガジン

現役書店員が選ぶ、つながりを考える1冊──「ほんの入り口」編【NHK100分de名著キャンペーン2024】

書店インタビュー


NHK「100分de名著」シリーズ おすすめの1冊(第1回)

シリーズ開始から13年で累計1000万部の発行を記録し、現在全国の書店とNHK出版公式サイトにてキャンペーンを実施中の、NHK「100分de名著」シリーズ。

今回は、現役書店員の方に当シリーズの中からおすすめの1冊を紹介していただきます。

第1回は奈良県奈良市にお店をかまえる書店、「ほんの入り口」の店主・服部健太郎さんにお話をうかがいました。

※第2回は近日公開予定

きっかけは番組テキスト

――まずは簡単に、お店の紹介をお願いします。

服部:2023年の5月に、もともと漢方薬局だった物件をほぼ居抜きで使うかたちで開店しました。店内は約6坪で、だいたい1500冊くらいの本を置いています。奥に3坪くらいの小部屋があるんですが、ここはイベントやギャラリーで使っています。

お店の外観。「本」の一文字が目を引く。

服部:僕はもともと書店員だったのですが、2年くらい前に少し体調を崩してしまって、約11年勤めていたチェーン店を辞めたんです。その時は将来のこととか考えられない状態だったのですが、ずっとぐずぐずしていても仕方がないな、と思っていた時に、家族や友達が「自分で本屋やったら?」って勧めてくれて、それで開店を決意しました。

 ちくまプリマー新書が大好きで、そんなコンセプトの書店にしたいと思い、『ほんの入り口』という店名に決めました。「本が好き」「本屋さんが好き」という人を増やしたいと思っていて、「本がなんとなく気になるけれど手が伸びない」という人に対して入り口を作っていきたいと考えています。ちくまプリマー新書だけでなく、NHK「100分de名著」や創元社さんのシリーズ「あいだで考える」などもたくさん仕入れています。

 ティーンズに向けて専門家の人が誠実に言葉を紡ごうとした本は、大人も含めたいろんな人の入り口になるのではないかと思い、そういう本を集められたらな、という思いで営業しています。

『あいだで考える』シリーズを中心に、こだわりの選書が光る棚

服部:お客さんは地元の方が多いですね。秋口くらいから頻繁にイベントを開催するようになったので、そういう時は大阪や京都からお越しくださる方もいらっしゃいます。

――NHK「100分de名著」シリーズを知ったきっかけは何ですか?

服部:書店員時代に雑誌の担当をしていたので、たぶん番組よりもテキストの方を先に知ったと思います。

 けっこう前に、「あらすじで読む」というコンセプトの本が流行りましたよね。そういった本は僕自身あまり読まなかったし、「名著をあらすじで読んでいいの?」という気持ちがなんとなくありました。

 だけどNHK「100分de名著」にはなぜかあまり抵抗がなく、毎月のラインナップを楽しみにしていました。

NHK「100分de名著」シリーズの棚には原著や関連書籍も並ぶ

誰かとの断絶に胸を痛めている人に

――今回服部さんが選んだ本は、『別冊NHK100分de名著 フェミニズム』です。
どのような思いで、この本を選んだのでしょうか。

服部:2023年1月2日の放送を見て、それがすごく面白かったんです。SNSで事前に放送のことを知って、見たい!と思って。もともとフェミニズムにそこまで関心があったわけではなくて、「いつか勉強しなきゃいけないな」と思っていたところに放送がありました。名前を見聞きしたり本を読んだりしたことのある方がたくさん出演されていて、その幅の広さにも惹かれました。

スペシャル番組だったので、書籍化されると思っていなかったのですが、書店を開業した次の月に本が刊行されて、すごく嬉しかったです。

番組で印象に残っているのは上間陽子さんと加藤陽子さんが会話するところです。階級の違いによる分断に直面した時に、萎縮して終わってしまうのではなく、「そこからなんです」という上間さんの発言に、加藤陽子さんが「今すごく大切なことを言ってもらった気がします」というようなことをおっしゃっていて、すごく共感しました。

上間さんの他の書籍や、フェミニズム関連の書籍をお客さんにおすすめする際にも、番組の内容に力をもらっている気がします。

番組で上間さんが紹介されていた『心的外傷と回復』(みすず書房)は、放送時には手に入りにくい状態だったのですが、その後に増補新版が刊行されて、すぐに仕入れました。

鴻巣友季子さんが紹介されていたアトウッドの『侍女の物語』『誓願』も文庫になったので、手に取りやすいのかな、と思います。

こころよくインタビューに答えてくださった服部さん
お店にはフェミニズム関連書籍も充実している

――この本をどんな人におすすめしたいですか?

服部:男女間に限らず、誰かとの断絶に胸を痛めている人におすすめしたいです。

 ここで取り上げられている問題の多くは一朝一夕に解決できるものではありませんが、「名著」の執筆者や出演者の皆さんなど「問題に共に取り組む仲間」がいることを実感することで、「断絶」と向き合う長い時間に耐えられるだけの気力を得られるのではないかと想像します。

 小さな入り口から、誰かとの連帯につながれば嬉しいです。

ほんの入り口
https://hon-iriguchi.com/
X(旧Twitter)アカウント:@honnoiriguchi
インスタグラムアカウント:@hon.iriguchi

今回ご紹介した『別冊NHK100分de名著 フェミニズム』は、全国の書店、またNHK出版の特設ページでも展開しています。

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