元プロ選手の指導に目キラキラ! 釜石で野球教室 4市町のスポ少団員レベルアップへ気合十分
元プロ野球選手がスポ少団員を指導する野球教室が8日、釜石市の平田公園野球場で開かれた。釜石リアスライオンズクラブ(LC、大澤賢一会長、会員20人)が青少年健全育成事業として初めて企画。釜石、遠野、大槌、陸中山田4LCが共催した。講師として招かれたのは現役時代、読売ジャイアンツ(巨人)や横浜DeNAベイスターズに所属し、現在はジャイアンツアカデミーコーチを務める東野峻さん(39)と大田泰示さん(35)。4市町から6チーム計80人が参加し、憧れのプロ経験者からの指導を受けた。
教室は午前と午後の2時間ずつ行われ、午後からは釜石野球団Jrとおおつちタイガース(大槌町)の計35人が参加した。教室は投球、捕球、打撃の3本立て。2人は各フォームの良い例と悪い例を示して、どれが正解かを団員らに問いかけながら、正しい姿勢を保つために意識すべきポイント、練習方法などを教えた。3球団で投手として活躍した東野さんは、肘のけがを防ぐためのボールの投げ方を指導。「トップの形をつくる時は肩の位置より肘が高くなるように。ボールは外側に向けて。肘が下がるとけがをしやすくなる」とし、意識しながらのキャッチボールを促した。
大田さんはゴロの捕球について、「グローブは必ずボールの真正面に出して。送球に移る時はグローブの真下に右足を出してステップ」と教えた。団員らは捕って投げる一連の動作を繰り返し練習。大田さんと東野さんが足の開き具合や体の向き、ステップの良し悪しをチェックした。来季の巨人二軍打撃コーチ就任が発表されたばかりの大田さんはバッティングも指導。構え→テイクバック(力をためる予備動作)→トップと動作の流れを示し、弓矢をたとえに「手の位置が後ろにあるほうがいい。トップの形を大きく取って大きく振って」と呼びかけた。素振りの練習の一つとして、歩きながらスイングする方法を紹介。「1、2、3」の掛け声に合わせ、団員らが実践した。「練習から相手ピッチャーをしっかりイメージし、タイミングを取って振ることが大事」と大田さん。
2人の特別講師の話に熱心に耳を傾けた団員ら。短時間の指導ながら、コツをつかんで改善につなげる子も多く、今後の成長への期待が高まる貴重な時間となった。釜石野球団Jrに所属する佐々木耀太さん(鵜住居小5年)は「分かりやすく教えてもらった。守備の基礎練習で、今までできていなかったところも改善できた」と満足げ。「歩きながら素振りをするとか、家でもできる練習を教わったのでやってみたい」と上達への意欲を見せ、「野球は長く続けたい」と願った。
同団Jrコーチの阿部駿さん(32)も2人の教え方に感動。「子どもたちを引き付ける力がすごい。まとめるのもうまい」と、指導者目線でも多くの学びがあったよう。野球人口が減っている中でも「まずは楽しく。野球の楽しさを感じながら、どんどん打ち込んでいってほしい」と期待を寄せた。
閉会式で、父母ら家族や一緒にプレーする仲間への感謝の気持ちを持つことの大切さを説いた2人。「プロ野球選手になりたい人!」との問いには複数の団員が手を挙げた。同地域からは30年ぐらいプロ野球選手が出ていない。東野さんは「震災があったことも忘れずに、誰よりも努力してプロ選手を目指してほしい」。大田さんは「プロ野球に憧れを持ってほしい。ドラフトにかかるような選手が1人でも多く輩出されることを願う」とし、野球選手の輩出がまち自体の活力を生むことも示した。
釜石リアスLCの大澤会長(45)は紫波町出身。2001~17年度まで、母校の不来方高(当時)で野球部のコーチをしていた。その間、11年度から3年間、同部のマネジャーをしていたのが本年度、釜石市地域おこし協力隊に着任した佐々川有妃さん(日本製鉄釜石シーウェイブス広報担当)。2人の釜石での再会が今回の野球教室実現のきっかけとなった。LCの奉仕活動として「未来ある子どもたちに何かできれば」と考えていた大澤会長に、前職でDeNAの二軍場内アナウンスをしていた佐々川さんが東野さんを紹介し、同クラブ初の企画に至った。
大澤会長は「子どもたちがキラキラした目で教わっていたのが印象的。指導者からも感謝の声をいただき、やって良かった」と肩の荷を下ろした。野球指導の経験者の立場から「野球を選んでくれた子たちが高校までやってくれるようなきっかけを作ってあげたい」とも話し、今後、教室の継続開催への道も探っていきたい考えだ。