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極上エンタメ地獄!?ザ・ダークネス来日公演@渋谷Spotify O-East 2024.1.23

YOUNG

ザ・ダークネス

英国が生んだパーティ・ロックの申し子にしてエンタメ・ロックの権化:ザ・ダークネスが再来日!! 今年1月下旬、東京は渋谷のSpotify O-Eastにて一夜限りのスペシャル公演を行なった!

彼等が日本のファンの前でライヴを行なうのは、2011年の“LOUD PARK”出演時以来。単独公演としては、前回が2006年4月だったから、実に約13年振りとなる。ただ、それだけ来日から遠ざかっていると、どうしてもファン離れが進んでしまうもの。メンバーの不和による解散を乗り越え、2011年に復活を遂げて以降、彼等はこれまでに5枚のアルバム──『HOT CAKES』(2012年)、『LAST OF OUR KIND』(2015年)、『PINEWOOD SMILE』(2017年)、『EASTER IS CANCELLED』(2019年)、『MOTORHEART』(2021年)を発表してきたというのに、正直言って日本では、殊にここ数作はリリース後もあまり大きな話題とはならず、中には「まだやってたの?」なんて冷たい仕打ちの初期ファンもいたかもしれない。

よって今回、動員を心配する声が当初は少なくなかったようだ。ところがいざフタを開けてみたら、当日のO-Eastは超満員! 事前完売とはならず当日券が出てはいたものの、開演間際には観客が扉の外まで溢れんばかりで、「全員入りきるの…?」なんて思ってしまったぐらい。ファン層はざっくり30代が中心との印象で、外国人客の姿もかなり目立つ。日本に限らず「ロックを聴くようになったキッカケはザ・ダークネス!」という若いリスナーが世界中にいて、彼等はかつて“ゲートウェイ・バンド”とも呼ばれていたそうだから、2003年当時、ティーンエイジャーであの衝撃のデビューに洗礼を受けた世代が、30代になってもファンで居続けてくれた…ということか。

今回の来日は、デビュー・アルバム『PERMISSION TO LAND』(2003年)リリース20周年を記念するツアーの一環。よってその噂を聞きつけ「それならば!」と、近作は聴いていないし、しばらくザ・ダークネスのことは忘れていたけど…といったかつてのファンもきっと大勢詰め掛けたのだろう。その“Permission To Land 20th Anniversary”ツアーは昨年10月に北米で始まり、それに合わせて『PERMISSION TO LAND…AGAIN』とタイトルされた拡張再発盤“20th Anniversary Edition”もリリース。翌11月よりツアーはヨーロッパへ舞台を移し、12月に入ると今度は英本国をみっちり廻り、クリスマス前までほぼ休みなく続けられていたから──それから年をまたいでいるとはいえ、バンドの仕上がり具合は上々に違いない。

現バンド・ラインナップは2011年来日時からドラマーのみチェンジし、ジャスティン(vo g)とダン(g)のホーキンス兄弟、フランキー・ポーレイン(b)に加えて、ルーファス・タイガー・テイラー(dr)という4人に。ルーファスはクイーンのドラマー:ロジャー・テイラーの息子で、2015年の加入時にはそれ故に大注目された。驚いたのは、ジャスティン、ダン、フランキーの3人の見た目がデビュー時から殆ど変わっていなかったこと。“LOUD PARK 11”出演時はカイゼル髭を生やしていたジャスティンなんて、すっきりフェイスで(?)むしろ若返ったかに見える。しかもいきなり、胸元からヘソまで大きく露出したトーレドマークのジャンプ・スーツ姿で登場! 彼は来日時、48歳。しかし腹筋バッキバキの肉体美を今も保って(&誇って?)いるのは凄い。

Justin Hawkins(vo)

ダンもまるで年を取らないかのよう。とてもとても現在47歳には見えない。相変わらずジャケットの下にはシン・リジィのTシャツを着用していて、それに気付いた昔からのファンはニヤリとさせられたに違いない。あとフランキーにいたっては、タイムマシーンで2003年当時の彼を連れてきて入れ替えてもみんな気付かないのでは…? 日本初お目見えのルーファスは、とっくにバンドに馴染んでおり、他のメンバーよりも10歳以上若いだけあって豪快なドラミングでバンドの屋台骨を支えていた。時々、叩き方がお父さんそっくりになるのも注目ポイントだ。

Dan Hawkins(g)

Frankie Poullain(b)

Rufus Tiger Taylor(dr)

ABBAの「Arrival」をイントロSEに、AC/DC彷彿のリフ・カッティングに導かれ、ショウは『PERMISSION TO LAND』冒頭曲の「Black Shuck」で幕を開けた。ジャスティンはのっけからハイ・テンションで駆け回り…と言いたいところだが、実際はゆっくり登場しながら満員のフロアを見渡し、ダンがイントロを弾く横で、まずは観客の様子をつぶさに伺って…と、意外やスロー・スタート。しかし、既にテンション・マックスでサビを唱和する観客の盛り上がりっぷりに気を良くしてか、中間部では大きなアクションでエア・ギターを奏で、終盤になると最前列の観客からスマホを奪い取って自らフロアを撮影し、エンディングにはジャ〜ンプ!! 海外ライヴのように紙吹雪が舞う演出はなかったが、凄まじい歓声の中、「Yo! コンバンワ…Mother F**kers!!」と軽い挨拶に続いて「Get Your Hands Off My Woman」のイントロがハジけると、あちこちから悲鳴のような歓声が上がる。

ジャスティンのヴォーカルは「マジで…?」というぐらいに完璧。鋭いシャウトも例のファルセットも難なく出せていて、もしかすると“LOUD PARK 11”で観た時よりもコンディション良好だったかも。普通だったら経年で幾らか劣化して当然なのに、やっぱり彼は普通ではない。ギター・ソロの前にはドラム・ライザーで三点倒立し、両足を打ち合わせて手拍子を煽る大技も。エンディング間際のブレイクでは、ジャスティンが「Moooother……F******ker…」と囁いたり叫んだりして、観客にもリピートさせるのが定番になっているが、「日本語では何て言うの?」と問い掛け、“お母さん”“クソ野郎”と教えられると、「オカァァァサン……くそヤァアァァロォウ…」と言って盛り上げる。まだ2曲目なのに、もうショウがピークに達したかの大騒ぎだ。

そして3曲目にいく前に、「みんな英語は分かる?」と訊いてから、改めてデビュー作の20周年ツアーで来日したことが告げられ、「全曲プレイするからな!」と言って「Growing On Me」がスタート。ここでジャスティンが初めてギターを手にしてソロを2度弾き、最後にはネックを舐め上げるサービス(?)も。ここまでアルバムの曲順通りだったので、そのままいくかと思ったら、4曲目にはシングル『GET YOUR HANDS OFF MY WOMAN』(2003年)のB面曲「The Best Of Me」が披露された。そう、アルバム全曲をやるとはいってもそのまま曲順通りに再現していくのではなく、以降はシングルのカップリング曲や『PERMISSION TO LAND』以外のアルバムからもセレクトされ、最後の最後に“アルバム全曲やりました〜”的な構成になっていた。

最初、白のレスポールを弾いていたジャスティンは、途中でAtkin Guitarsの“JH3000”(これも白)に持ち替え、その後もほぼ2〜3曲毎にその2本を使い分け。曲の始まりはギターを持たずにハンド・マイクで動き回り、ソロの直前にクルーからギターを受け取ることもしばしば。ソロの割合は、ジャスティンが6でダンが4といったところか。いや、「弟には美味しいソロを執らせない!」とばかりに(?)、“7:3”ぐらいだったかもしれない。ジャスティンはアドリブも多めで、「How Dare You Call This Love?」(2003年のシングル『GROWING ON ME』B面曲)のエンディングで長めにインプロしまくり、溜めて溜めて延々引っ張って盛り上げたりも。

一方、ダンは数本のレスポールをこれまた何曲かおきに持ち替え、「Love Is Only A Feeling」(『PERMISSION TO LAND』収録)でカポを使用したりしつつ、多くの場面で主役を兄貴に譲るも、楽曲によっては印象的なソロをステージ中央で熱奏! 中でも「Love Is Only A Feeling」のエモさ満点のソロと、「I Believe In A Thing Called Love」(『PERMISSION TO LAND』収録)の歌うようなソロは、共にハイライトだったと言えよう。また、兄弟でハモったりユニゾンしたりする曲も幾つかあり、ジャスティンの背面弾きが飛び出した「The Best Of Me」では、見事ツインを決めたあとに2人でハイ・タッチを交わしたりも。

クルーといえば、曲中に絶妙のタイミングでジャスティンにギターを手渡し、曲終わりで受け取るだけではなく、「Friday Night」(『PERMISSION TO LAND』収録)でアコを弾いたり、アンコール1曲目の「I Love You 5 Times」(2003年のシングル『CHRISTMAS TIME』B面曲)ではエレピを弾いたり…と、何気に大活躍。しかも「Friday Night」ではアコを弾きつつ、ソロ・パートの前にはダンの演奏だけになるパートでちゃんとジャスティンのもとへギターを運んできて、ツイン・リードを促す見事な仕事っぷりでも、オーディエンスから歓声を浴びていた。

セットリストで着目したいのは、ショウ中盤にプレイされた『PINEWOOD SMILE』(2017年)収録の「Japanese Prisoner Of Love」。この曲はUSツアーでも、欧州ツアーでも、はたまた日本のあとのオセアニア・ツアーでもセットに入っておらず、どうやら“ご当地ソング”として特別に選曲してくれたようだ。ヘヴィに始まるも、緩急あって、シン・リジィ的なツイン・フレーズに加えて、みんなで「ヘイ!」と叫ぶブレイクも盛り込まれ、日本のファンには文字通りスペシャルなプレゼントとなったことだろう。あと『PERMISSION TO LAND』以外からの楽曲としては、レディオヘッドのヘヴィ・ヴァージョン・カヴァー「Street Spirit (Fade Out)」(2012年『HOT CAKES』収録)のウケがすこぶる良く──アルペジオに転ずるところでそのまま「Holding My Own」(『PERMISSION TO LAND』収録)のイントロにつなげられ、それぞれフルでは披露されず、メドレーのようなヴァージョンになってはいたものの、少なくとも最初の2分間ほどはハード&ヘヴィ寄りのファンの頭を豪快に振らせていた。

外国人観客が多かったことは上述の通り。ただ、ジャスティンのMCに絡んできたり、いきなり友達みたいに話し掛けてきたりすることが度々あり、それにはちょっとビックリさせられた。いちいち対応するジャスティンも最高だ。中には、ホーキンス兄弟の出身地である英ローストフトの生まれだと言うヤツもいて、軽く地元トークを交わしたりも。あと、セカンド『ONE WAY TICKET TO HELL…AND BACK』(2005年)の曲をリクエストするヤツや、ルーファスに「疲れてるんじゃないの〜?」なんて突っ込むヤツもいて、前者には「あのさ…これがデビュー作の周年記念ツアーだって分かってる?」と返しつつ、笑顔で「F**kin’ idiot…!」と呟いて、フロアを大爆笑させたりもしていたが。

大爆笑と同時に、ほのぼのしたムードになったこともあった。ある女性ファンが「ママが大ファンなの!」と叫ぶと、思わず「Sick…」と溜息をつきながらも「じゃあ、メッセージ・ビデオを撮ってあげるよ、スマホを貸して。え〜と…ビデオ通話で話そうか? 電話してみて!」とジャスティン。そして、電話越しにそのファンの母親と「Friday Night」のサビの掛け合いをやってのけたのだ。但しジャスティンが「Monday Tuesday Wednesday Thursday…♪」と歌うと、続けて「Dancing on a Friday Night♪」と続けるところ、その母親は「Monday Tuesday…♪」と繰り返してしまい、ジャスティンが「いやいや…そうじゃなくて」とやり直しても、また同じパターンでみんな大爆笑。それにはおしおきだとばかりに、スマホをパンツの中に押し込むジャスティンであった…!!

本編の最後、「I Believe In A Thing Called Love」を始める前にも、特筆すべき出来事が。始める前…というか、厳密には一旦ダンがイントロを弾き始めたのを制止して、観客に「このあと…まぁアンコールもやるんだけど、とりあえず(本編)最後ぐらいはスマホなしで観ないか?」と提案。ショウ序盤には、「せっかくの日本公演だ。どんどん撮影しまくって拡散してくれ!」と言っていたのに、せめて1曲だけ…ということか。ただおかげで、誰もスマホをかざさない、まるで20年前──『PERMISSION TO LAND』のオリジナル・リリース当時のような状況となり、それはそれでなかなか新鮮だった。

次いで、アンコールでも粋な演出アリ。全観客が満面笑顔で歌い、踊った「I Believe In A Thing Called Love」でショウ本編が終わり、一旦メンバーが退場してから5分以上──なかなか出てこないな…と思っていたら、何と全員が黒い着物をまとって再登場したのだ。要は、着付けに時間がかかったということね? これには全オーディエンスが沸きに沸き、しかもまずプレイされたしっとりバラード「I Love You 5 Times」にて、ダンがドラム、フランキーがアコースティック・ギター、ルーファスがベースというパート・チェンジ(そして、上記の通りクルーが鍵盤)まで! さらには、エンディング間際にジャスティンが「“I love you”って日本語で何て言うの?」と質問し、「アイ…シテ…ルウゥゥゥ〜♪」と歌ってシメたのも大ウケに。

いや、まだまだ終わらない。次に控えし「Love On The Rocks With No Ice」(『PERMISSION TO LAND』収録)の曲名にも“love”とあるからか、その前に“愛してるジャム”とでも言うべきお遊びタイムが炸裂! それは、ロック/メタルの有名曲の歌詞をすべて“I love you”にして歌う余興の日本語ヴァージョンで、エクストリームの「More Than Words」、ガンズ・アンド・ローゼズの「Paradise City」、AC/DCの「Highway To Hell」などが即興で披露された(他にニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」などのリフをちょこっと弾いたりも)。

そして「Love On The Rocks With No Ice」では、中間部でギター・ソロを弾き始めたジャスティンが、ステージ下で待つクルーに肩車されたかと思うと、そのままソロを弾きながらフロア外周をぐるり! 大歓声の中、観客を掻き分けゆっくり一周してステージに戻っても、スイッチング奏法などを交えてもっとソロを弾き続け、そこから奇声も発してのおふさげモードで観客とコール&レスポンスをしばらくやり、メンバー紹介からの延ばしに延ばしまくった長い長いエンディング──“ジャンッ!”で終わったかと見せかけ、「ヘイ! ヘイ! ヘイ!」と観客を叫ばせつつ、さらにさらにキメを何度も何度も反復し、レッド・ツェッペリンの「Heartbreaker」(1969年『LED ZEPPELIN II』収録)のリフまで盛り込んで……ようやく大団円! CDでは6分弱の曲が倍以上に引き延ばされ(15分ぐらいあったか?)、本当に最後の最後まで見せ場だらけだった。

いや〜、あまりに濃密! あまりにゴージャス! あまりに痛快! そして、すべてが良い意味で過剰!! このクドいまでの極上エンタメ地獄は何だ? これほどまでに観客を魅了し、心底楽しませ、我を忘れるぐらい熱狂させのめり込ませるライヴを、ザ・ダークネスの他に誰が出来ようか? しかも、アリーナ・ショウばりのスケール感を有しながらも、ヤケにフレンドリーで、観客との距離が異常に近い…ときた。彼等には是非、来年も来日してもらい、今度は『ONE WAY TICKET TO HELL…AND BACK』の20周年ショウをやってもらわねば! いや勿論、『MOTORHEART』に続く新作も待ち遠しいし、近作からのナンバー多めのライヴにも期待したい! ホント…もう毎年来日してくれ〜!!

ザ・ダークネス 2024.1.23 セットリスト@渋谷Spotify O-EAST

1. Intro:Arrival(ABBA/SE)〜Black Shuck
2. Get Your Hands Off My Woman
3. Growing On Me
4. The Best Of Me
5. Makin’ Out
6. Givin’ Up
7. Love Is Only A Feeling
8. Japanese Prisoner Of Love
9. Stuck In A Rut
10. How Dare You Call This Love?
11. Street Spirit (Fade Out)*〜Holding My Own
12. Friday Night
13. I Believe In A Thing Called Love
[encore]
14. I Love You 5 Times
15. Aishiteru Jam
16. Love On The Rocks With No Ice
17. Outro:(I’ve Had) The Time Of My Life(Bill Medley & Jennifer Warnes/SE)

*…レディオヘッドのカヴァー

(レポート●奥村裕司 Yuzi Okumura Pix●野田雅之 Masayuki Noda)

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