大友克洋が原作・脚本、江口寿史がキャラクターデザイン!豪華すぎるスタッフが集った、知る人ぞ知る名作アニメ『老人Z』
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は『老人Z』についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
豪華スタッフが集った、知る人ぞ知るアニメ
調べてみたところ、5月12日(ラジオ放送日)はナイチンゲールの誕生日ということで、看護師にちなんだ記念日がいろいろ設定されています。というわけで、看護師――正確には看護学校の生徒――が主人公の『老人Z』を紹介したいと思います。
『老人Z』は1991年のオリジナルアニメです。原作・脚本は『AKIRA』を描かれた大友克洋さん、監督はOVA『ジョジョの奇妙な冒険』や『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の監督、『攻殻機動隊』のゲームのオープニングなどを手掛けた北久保弘之さん、キャラクター原案は『ストップ!! ひばりくん!』などで知られる漫画家の江口寿史さんという非常に豪華なスタッフで作られています。
主人公は、看護学校に通っている19歳の晴子。高沢さんという寝たきりのおじいちゃんの介護をボランティアでやっています。本来は看護師になってからでないとナースキャップは被らないのですが、そこはアニメなので、ちょっとデザインの異なるナースキャップを被って、看護師の姿になることもあります。
ある日、その高沢さんが、厚生省が開発した最新型介護ロボット「Z-001号機」のモニターに選ばれて、連れて行かれてしまいます。晴子は高沢さんがかわいそうだと助けに行くのですが、その介護ロボットが突然意思のようなものを持ち始め、高沢さんを取り込んだ状態で、ビルを飛び出して移動を始めてしまいます。
移動の途中で、介護ロボの高性能コンピューターが周りにあるいろいろな機械を自分のパーツにして、どんどん巨大になっていきます。途中で自衛隊みたいなものが重機を使って止めようとするも、その重機も自分の一部にしてしまいます。それを止めるために、晴子がスクーターで追いかけていくというアクション色の強い作品です。
ストーリーはそんな状況になってしまった高沢さんを救うため、晴子が一生懸命、介護ロボを追いかけていくという形で進行します。そこには機械の力だけでなく、介護には心が大事だというセリフも出てきますが、原作・脚本が大友さんなので、ちょっとブラックユーモア的なひねりも含まれているのがおもしろいところです。本作も老人介護は題材であってもテーマではないんです。そして最後になぜコンピューターが暴走していたかの答え合わせもありますが、晴子の高沢を心配する気持ちが基調にある物語だけに、「答え」も人が人を思う気持ちにフォーカスした内容になっています。
スタッフが豪華だと先ほどもいいましたが、例えばメカデザインや原画などで参加していたのは、後に『電脳コイル』『地球外少年少女』の監督をされる磯光雄さん。また、まだ監督になる前の今敏さんも美術設定で参加していたりと、いきのいい若手スタッフが大勢参加しています。だから非常にビジュアルのクオリティが高く、そういう意味では今見ても全然色あせないクオリティです。むしろ今だったらCGで描くであろうメカなどが、全部手描きで表現されていて、今では実現不可能なレベルの作画を堪能できます。
Amazonプライム・ビデオやU-NEXTなどで配信されているのでぜひご覧ください。というわけで今回は、知っている人は知っているが、知らない人は知らない、でも面白いアニメで看護師が出てくる、ということで『老人Z』をご紹介しました。