串本カセの「ご当地釣法」が面白い!【和歌山】ペレットで狙う通称ペレマダイで70cm超えズドン
紅葉が見頃を迎える晩秋、釣り味も食味も最高のターゲットが秋に釣れるマダイ、通称紅葉鯛である。今回は串本カセの老舗、大裕丸にて、新たなご当地釣法であるペレットをエサにした通称ペレマダイで良型マダイを手にした模様をお伝えしたい。
串本カセでマダイ釣り
秋も深まり山が色づき始めた11月中旬、裏の旬と言われる秋の紅葉鯛を狙いに串本カセの老舗大裕丸へ釣行した。串本カセでのマダイ釣りでは大きく分けて2通りの釣り方がある。
1つは天秤にカゴをつけ、4.5mから10m以上の長いハリスを使った天秤フカセ。狙いの棚に入れ時折竿でマキエを出しながら狙うやり方。
もう1つはフロロラインに針だけというシンプルな仕掛けで釣る完全フカセ。マキエと同調させ潮に流しながら釣っていく。水深を計り、その水深分のラインを出して釣るのが串本流とされている。
エサは共にオキアミを使い、警戒心の高い大型に口を使わすようマキエのコントロールが鍵になる。
ところが最近の大裕丸の釣果情報を見ていると、オキアミより、ペレットと呼ばれる練り餌を使った釣りで釣果が上がっている。海の状況は年々変わってきており、変化に対応した釣り方が必要になってきているようだ。
1日目のタックル
ペレマダイ最初の釣行は11月16日。用意したタックルは完全フカセ用と天秤フカセ用のエサをペレットに変えたもの。
完全フカセ用にロッドがダイワ社、紅牙テンヤゲームMX MH-230B。リールはスパルタンMX IC200Hにフロロ5号を入れた。
天秤フカセ用にロッドがアルファタックル社ウルトラV10 301にリールがダイワ社ミリオネアICV300。ラインは、PE4号、リーダーにフロロ7号、仕掛けは扱いやすい4.5mの2本針ハリス5号で用意した。
ペレグレと同じガン玉を使ったズボ釣り用に釣具のイシグロオリジナルブランドTsurinoと宇崎日新がコラボした海上釣り堀用、ディメンショントリガーSP330にリールはダイワ社スパルタンMX IC200Hにフロロ5号、ハリスも5号で用意した。
1日目:釣行開始
当日の潮は満月の大潮、満潮が6時15分、干潮11時45分。天気は曇り後雨予報のためカッパを着込んで乗船した。ポイントは浅海35mと言われるポイント。準備を済ませ釣りに取りかかる。
まずは置き竿用に天秤フカセをペレットに応用した仕掛けを投入する。次に完全フカセのタックルを準備し投入する。しかし数メートル沈んだ所でエサ取りにやられてしまった。
アジと思われるが、狙いの棚まで入らないため、ゴム張りのガン玉1号を打ちズボ釣りに変更しエサ取りの層を突破する。
マダイ&ヘダイを手中
狙いの棚から仕掛けを馴染ませた後はペレットの落下に合うよう、少しずつラインを出していく。
マキエを入れつつ3回撃ち返した所で早速アタリが出てヒットしたのは30cm程だが、本命のマダイ。
続けて天秤フカセの置き竿にアタリが出たが、キャッチしたのはヘダイであった。
天秤フカセは置き竿で入れつつ、ズボ釣りは手持ちでアタリを取っていく。コンスタントにアタリは出るが針にかからないのはアジの仕業だろう。
今までと違う、居食いのような微かなアタリを合わせると重みが乗った。なかなかの引きだが浮上したのは45cmを越える丸々太ったアイゴであった。
25cmのアジをキャッチ
その後ポツポツとヒットするのはヘダイばかり、当たる棚は底付近で変わらないため、効率を上げる為にオモリを3号に変え狙いの棚まで早く入るようにする。
雨は本降りになり、エサのペレットがふやけないよう桶で蓋をして管理しておく。雨の中釣り続けるが当たるのはヘダイばかり、棚を変えるとアジのアタリで25cm程のアジをキャッチした。
昼を過ぎても状況は変わらず、アジのアタリが増えてきたため、胴突き仕掛けにオキアミエサに変更し、40cm越えの大アジに期待する。この日は満月とあってかアジの活性はすこぶる高い。
マキエ無しの胴突き仕掛けが底につくや数秒でアタリが来る入れ食い状態。夕方の下船時刻まで釣り続けたが、最大30cm止まりで大アジも不発に終わり、納竿となった。
下船後船長からオモリの重さを軽く、打つ位置は針から離した位置でとアドバイスを頂いた。マダイの警戒心を少し甘く見ていたと次回は仕掛けを再考して望むことにした。
2日目の釣行
翌週の11月23日、潮は小潮で干潮が4時54分、満潮が12時26分。この日の作戦は朝一アジを釣り、それをエサにして泳がせでアオリイカを狙い、日が出てからマダイ狙いに切り替える少し欲張ったプラン。
エサのアジは早々に確保し泳がせ仕掛けを投入すると直ぐにアタリが出たが針にかからず、続く2投目もアジをかじられて終わってしまった。
アジ狙いの胴突きに30cm程のチャリコが混じった事もあり、早々に見切りを付けてマダイ狙いに切り替える。
今回のタックルは2セット。ズボ釣り置き竿用にダイワ社極鋭マダイ360にリールがスパルタンMX IC200Hにフロロ5号、オモリは3号で棚を決め待ちつつ、前回と同じズボ釣り用のタックルを手持ちで探っていく。
釣行開始
開始早々に手持ちの竿にアタリが出るが、またしてもヘダイ、しばらくして同サイズのヘダイを追加したが、完全に日が出てからは食いが渋くなり、時折アタリはあるものの針がかりしない時間が過ぎる。
晴天無風のベタ凪で警戒心も高まっていると予想し、手持ちのタックルは食い渋り対策で用意した3.5号フロロを入れたダイワ社のライトゲームX150にリールを交換。針もグレ針8号にし、エサをマキエサイズと同じくらいの大きさにした。
70cm超えマダイを手中
上げ8分を迎える昼前、時合と読んでいたタイミングに入ってもアタリが来ないため、効率は落ちるが、オモリで落とす水深を17mまでにし、以降はペレットの沈下に合わせて、ラインを送り込んで行くことにした。
試す事2投目、突然ロッドが絞り込まれる強いアタリ、合わす間も無くラインが引き出され一気に30m以上持っていかれた。リールのカウンターは60m以上になっている。
幸い魚は正面向きに走ったため他船とのお祭りは避けられたが、正面にはマグロの養殖生け簀が設置してあり、あまり走らせるとロープに巻かれるリスクがある。
3.5号フロロのため無理はできない、慎重に寄せてはまたラインを出されと一進一退の攻防が続く、焦らず魚のスタミナが切れるのを待ちながらじわじわと寄せてくる。
時折見せる突っ込みにはドラグとクラッチで対処し、なんとか水面浮上に成功。ネットインしたのは70cmを越える良型のマダイであった。針は口の中に掛かっており、ラインは歯で傷が入りギリギリのファイトであった。
無事キャッチできた感動に我を忘れ、思わず一人拳を握りガッツポーズした。
日常生活では絶対に味わう事のできない感動を味わえるのが釣りの醍醐味である。
ヘダイを追加
十分満足な釣果を得られたため、この後は朝逃がしたアオリイカを狙い泳がせを再開した。手持ちでズボ釣りを続けたが、アタリが無くなった為、泳がせを上げると置き竿にしていたペレットにヘダイがヒット。
本命ではないが、泳がせを入れると魚の寄りが悪くなる事を実感する出来事であった。最終の迎えの時間まで、オモリの重さや入れる棚など色々試すが、釣果には繋がらず納竿となった。
ペレマダイについて
ペレットで狙うマダイについてはまだまだ開拓途中の釣りと思われる。今回の経験から手返し効率の向上と食わせの難しさをどう攻略するかが課題と感じた。
効率と食わせを両立した、新たなやり方を見つけていく楽しさもある。現時点での攻略法としては、今回メインとした、ズボ釣りと完全フカセを状況で使い分けるのが良いと思う。
ズボ釣りでのオモリの活用法として、早く棚まで入れ効率を上げる他、潮の流れで養殖生け簀から離れ過ぎないようにする意味もある。
しかし入れ過ぎると警戒心を与えるため、状況でどの水深までオモリで落とすかの見極めは重要になる。
乗船するカセは、エサがペレットだけあってアンカーカセなど、養殖生け簀に設置されていないカセでの効果は未知数。この辺りは利用する渡船店としっかりすり合わせしておく必要がある。
なお、大裕丸は経営元が岩谷水産という水産業者で、紀州梅マダイや梅クエなど、ブランド魚の養殖を行っている。
その養殖生け簀に設置してあるカセから狙うため、ペレマダイが成立している。エサのペレットにおいても大裕丸オリジナルで、養殖のプロが長年のノウハウで作り上げたペレットが釣れない訳がない。
今後の展望
今後の展望として、イワシフカセで狙う鰤が最盛期に突入する。パターンでは朝イチの青物の時合終了後に真鯛狙いが定番であり、冬でも十分釣果は見込める。
今回得た釣果はしっかりと調理し堪能した。 マダイは握り寿司、酒蒸し、刺身、アラ汁、しゃぶしゃぶ、煮付けと何れも絶品である。裏の旬と言われる秋の紅葉鯛、余す所なく頂いた。
ヘダイは刺身、昆布締め、干物と、真鯛には劣るものの非常に美味である。アイゴは炙りで頂いた。
丸々太っていたため霜降りのような身をしており、こちらも絶品であった。
養殖生け簀に着き、ブランド魚のエサのおこぼれを食べている魚の食味は抜群だ。そんな食味抜群な魚が狙える串本カセでのペレマダイ。機会があれば是非とも挑戦していただきたい。
<稲垣順也/TSURINEWSライター>