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フィリピンで実写化! 映画『ボルテスV レガシー』マーク A. レイエス V監督インタビュー

Febri

TOPICS2024.10.17 │ 12:01

フィリピンで実写化!


映画『ボルテスV レガシー』マーク A. レイエス V監督インタビュー

往年のロボットアニメ『超電磁マシーン ボルテスV』のリメイクが、同作の人気が非常に高いフィリピンで「実写によるTVドラマと映画」というかたちで実現。現在、フィリピンで公開された映画に再編集を行い、CGのクオリティもアップさせた映画が日本で10月18日に公開を控えており、CGを駆使したダイナミックな映像や、随所にあふれるアニメ版へのリスペクトが注目を集めている。ここではレイエス監督に、アニメ版への思い入れや、実写化に当たってのスタンスを語ってもらった。

取材・文/本澤 徹

※アニメ版と実写版でキャラクターの名前が異なるため、本文はフィリピン名で統一し、カッコ内に対応する日本名を表記している。

インタビュー_TOPICSボルテスV レガシー

リメイクでもポイントになった母の最期

――アニメ版『ボルテスV』との出会いを教えてください。
レイエス 1978年に、フィリピンのテレビ放送で初めて見ました(編注:日本での放送は1977年)。9歳のときです。『マジンガーZ』や『闘将ダイモス』も放送されていましたが、とくに惹かれたのは『ボルテスV』で、「家族の物語」が心に響きました。たぶん、私が幼い頃に父を亡くしていることが影響したのだと思います。アームストロング(剛)兄弟も父を失っていたので、シンパシーを感じたのです。『ボルテスV』の出来事が、私の兄弟にも起こらないかと何度願ったかわかりません。

――成長してからも愛着を持っていたのですか?
レイエス 『ボルテスV』は再放送や、玩具・グッズを通して私の生活のさまざまなところに現れ、いつも一緒にいる旧友のようでした。フィリピンでは『ボルテスV』の人気が途絶えることがなかったのです。そのビジュアル、歌、音楽は、フィリピンのポップカルチャーのノスタルジーに欠かせないものになっています。だから私がプロの脚本家・監督になったとき、『ボルテスV』の実写版を作ることは夢のひとつになっていました。

――アニメ版で印象に残っているシーンはどこでしょう?
レイエス ふたつあって、ひとつは最初に発進するシーンです。「スティーヴ(健一)、あなたは1号、マーク(一平)、あなたは2号……ジェイミー(めぐみ)、あなたは5号」と、マリアンヌ(光代)に声をかけられた皆がコンベアを下りて搭乗し、ビッグファルコンから飛び立つところを鮮明におぼえています。実写版でも、このシーンはアニメ版を忠実に再現しました。並べて見てもらえればわかりますが、本当にそっくりそのままになっています。
――もうひとつは?
レイエス マリアンヌの最期ですね。脳裏に刻まれているというくらい、私にとって鮮烈なシーンです。お母さんが子供たちを救うため、自ら敵に突撃して犠牲になるのを見て、子供ながらに「これは普通のロボットアニメじゃないんだ」ということがわかりました。ストーリーがしっかりしていて、精神性が豊かな作品なんだと感じたんです。そこからアームストロング兄弟への感情移入が深まって、彼らの正義が果たされることや、早く父と再会できることを願わずにはいられませんでした。

――今、マリアンヌの話が出ましたが、峻厳な部分が前面に出ていたアニメ版に比べて、実写版では優しい母としての面が強調されているのが印象的でした。このようなアレンジを行ったのはなぜでしょう?
レイエス フィリピンは家族を大事にする社会、とりわけ母親がリスペクトされる母権社会なので、マリアンヌの母親像は人気の要因のひとつになっています。アニメ版では第2話という早い段階で死んでしまいますが、フィリピンのTVシリーズはより大河ドラマ的で(編注:アニメ版が全40話なのに対して、実写版TVシリーズは全90話)、視聴者はフィリピンの放送スパンで2週間ほど彼女と付き合うことになるので、母親としての存在感をより打ち出す必要がありました。そのため、アニメ版とは少し違うところでタフさを見せる人物像にしています。

――映画だけを見ても、アームストロング兄弟とマリアンヌの関係を描くシーンが数多く追加されていることがわかりました。
レイエス (登場期間が長かったために)息子たちとの関係性を深く描くことができましたし、彼女がビッグファルコンにおいて重い責任を背負っていることもわかるようにできました。その分、マリアンヌがバイザンガに突っ込むシーンでは、演じる役者も感極まっていましたし、視聴者も感動すると同時に「バイザンガに復讐しなければ!」という気持ちになったと思います。この場面に引っ張っていくことを意識して、あのような母親像にしたのです。

ボルテス・チームの戦闘服にはかなりこだわりました

――実写化に当たって、アニメ版から意識して変えなかったことと、逆に変えた部分はどこでしょう?
レイエス ストーリーラインはアニメ版を踏襲するというのは、最初から決めていました。エンディングのあとで新しいストーリーを追加するなんてことをしようものなら、東映と交渉しなければなりません(笑)。ただ、TVシリーズでは、より有効なストーリーテリングをするために、出来事を語る順序を変えるという工夫をしています。
――具体的には、どのように変えたのでしょう?
レイエス 第1話目はアニメ版と同じですが、そこからボアザン星(編注:敵側の母星)に視点を移しています。アームストロング兄弟の父親の背景がちゃんとわかるように「ボアザン側には、こういう背景と物語がある」というのを先に描くことにしたんです。

――ボルテスVなどのデザインを現代化するうえで心がけたことはありますか?
レイエス (フィリピンでの公開年である)2023年のオーディエンスに納得していただけるように、ということです。今のお客さんは『アベンジャーズ』や『パシフィック・リム』などを見ていて、目が肥えていますからね。
――とくにこだわった要素は?
レイエス ボルテス・チームの戦闘服には相当こだわっていて、2021年から2年をかけてデザインを仕上げていきました。『パワーレンジャー』のハリウッド版が、オリジナル版から大きく改変した衣装にして不評を買っていたので、あまり独自のものを作ってしまうのは良くないと思い、「ちゃんとオマージュしつつ、今の観客の目に耐えるものにする」ことを強く意識して作っています。ちなみに、一着一着がすごく高価なので、撮影で間違いは許されないという状態でした。

――ビースト・ファイター(獣士)も、アニメ版のデザインを残しながらしっかり現代化されています。
レイエス ビースト・ファイターのルックスはとても重要なので、大胆に変えるのはやめようと最初から決めていました。元のデザインを残しつつ、脅威となる存在であることがわかるような表現を意識しています。たとえば、ドクガガは蛾であることを意識させつつも、羽が引っ込む機構を追加することで、メカとしての説得力を加えました。TVシリーズでは設定を加えることもしていて、たとえば、ガルド(編注:侍型の獣士、アニメ版では第4話に登場)には武将のDNAを用いているというバックストーリーを追加しています。

――合体シーンやバトルシーンの演出で、とくに意識した点をお願いします。
レイエス 重量感、質量感を大事にしています。「ボルテスVやビースト・ファイターとて、重力の法則から逃れることはできない」ということをわかってもらえるような、重たそうに見える映像を狙いました。たとえば、天空剣でビースト・ファイターを斬るシーンでは「金属が破壊されている」ということが伝わる、抵抗感やインパクト感を感じられる描写を心がけています。
――「天空剣 Vの字斬り」で斬り下ろしから斬り上げに転じるときに、ブースターを点火する演出が素晴らしいと思いました。
レイエス そこは皆さん気づいてくれたみたいで、映画館で拍手をしている人もいました(笑)。

マーク A. レイエス VMARK A. REYES V 監督、脚本家、プロデューサー。1990年代から、フィリピンのテレビ界を中心に活躍。代表作は2005年にスタートしたファンタジー・シリーズ『Encantadia』。リブート版を含めて、現在までに500話近くが制作・放送されている大人気シリーズで、フィリピン国内外で数多くの賞を獲得している。作品情報

『ボルテスV レガシー』
2024年10月18日(金)公開
配給/東映

監督/マーク A. レイエス V
脚本/スゼッテ・ドクトレーロ
シニア・エグゼクティブ・プロデューサー/ヘレン・ローズ・セセ、ラーソン・チャン
エグゼクティブ・プロデューサー/ダーリング・プリドトレス、ティージェイ・デル・ロザリオ、白倉伸一郎

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