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大橋純子「MAGICAL」シティポップ・ブームで再注目!世界に受け入れられた40年前の作品

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1984年07月01日 大橋純子のベストアルバム「MAGICAL 大橋純子の世界Ⅲ」発売日

1983年に渡米するまでの楽曲から構成されている「MAGICAL 大橋純子の世界Ⅲ」


2024年12月にデジタル配信された大橋純子の『MAGICAL 大橋純子の世界Ⅲ』が、今回はアナログ盤2枚組というスタイルでこの8月にリリースされる。

大橋純子は1979年にそれまでのソロ名義、美乃家セントラル・ステイション名義の楽曲から「シンプル・ラブ」「たそがれマイ・ラブ」などを含むベストアルバム『MOTIONS & EMOTIONS(大橋純子の世界)』を発表、さらに1982年に「シルエット・ロマンス」「カナディアン・ララバイ」などを含むアルバム『MINDS 大橋純子の世界Ⅱ』を発表している。そして美乃家セントラル・ステイションを解散し、国内での活動にいったんピリオドを打って1983年に渡米するまでの楽曲で構成されているアルバムが『MAGICAL 大橋純子の世界Ⅲ』だ。

もんたよしのりとのデュエット曲「恋はマジック」


『MAGICAL 大橋純子の世界Ⅲ』はベストアルバムという体裁になっていて、アルバム『Tea for Tears』(1981年)、『黄昏』(1982年)『POINT ZERO』(1983年)からの楽曲が選曲されている。しかし、収められている12曲中、この3枚のアルバムに収録されていなかった楽曲が4曲も収録されているという点でやや特殊な作品といえるだろう。ちなみにアルバム未収録の4曲は「恋はマジック」「A LOVE AFFAIR」「I LOVE YOU SO」「LOST LOVE ~愛の踊り場~」。

アルバムの1曲目に置かれている「恋はマジック」はもんたよしのりとのデュエット曲。「ダンシング・オールナイト」などのヒットで知られるもんたよしのりと大橋純子は同じプロダクション(北島音楽事務所)に所属していたこともあって、前年の1983年にもデュエット曲「夏女ソニア」をヒットさせていた。ちなみに「夏女ソニア」は “もんたよしのり with 大橋純子” 名義で発売されたが、「恋はマジック」は “大橋純子 with もんたよしのり” 名義となっている。

「恋はマジック」はスクーターのCMソングとしてオンエアされたが、「夏女ソニア」がソウルミュージックのテイストがありながらも歌謡ポップスとしてまとめられていたのに対して、こちらはスケールの大きい本格的なソウルバラードで、大橋純子、そしてもんたよしのりの歌唱のすばらしさが遺憾なく発揮されている。企画性が感じられるデュエット曲を1曲目に置くことにちょっと違和感がないでもなかったが、実際に聴いてみれば納得するしかない。

シティポップ・シンガーとしてイメージを体現している「A LOVE AFFAIR」


「A LOVE AFFAIR」はもんたよしのりとのシングル「恋はマジック」のカップリング曲として収められていたもので、こちらはデュエットではなく大橋純子のソロ曲。まさに1980年代コンテンポラリーソウル色たっぷりのダンスチューンで、最近クローズアップされているシティポップ・シンガーとしての大橋純子のイメージを体現しているような​​楽曲だ。

その後、この「A LOVE AFFAIR」はオーディオメーカーのCMに採用されることになり、この曲をA面として、アルバム『MAGICAL 大橋純子の世界Ⅲ』から再度シングルカットされることになる、そのカップリング曲となったのが「I LOVE YOU SO」だ。この曲もグルーヴ感たっぷりのアーバンソウル・サウンドと絡み合う大橋純子のボーカルの素晴らしさがいかんなく堪能できる名曲だ。そして「LOST LOVE ~愛の踊り場〜」は、1982年に渡米前の最後のソロシングルとして発表された曲だ。

この他の収録曲は『Tea for Tears』から「テレフォンナンバー」「ANOTHER DAY, ANOTHER LOVE」。『黄昏』から「香水」「黄昏」「シェリー」、そして『POINT ZERO』から「DANCIN」「IN YOUR LOVIN」「素顔のままで」というラインナップになっている。

シティポップ再評価によって世界的に受け入れられているアルバム


アルバム全体を通して強く感じるのが、ベストアルバムにありがちなバラけた感じが無いということだ。コンテンポラリーなアーバンソウルのテイストがアルバム全体に漂っていて、耳馴染がとても良いのに、それぞれの曲にしっかりと聴きごたえがある。聴いていて、この時期の大橋純子がやりたかった音楽のエッセンスが高い純度で集められている。

大橋純子は1981年にシングル「シルエット・ロマンス」を大ヒットさせている。であれば、当然、レコード会社はこのヒット曲に通じる歌謡バラードのテイストを持った楽曲を歌って欲しいと考えていたと想像する。しかし、大橋純子自身はもっとソリッドなテイストの音楽を志向していき、その距離感が彼女の渡米の大きな要因になったに違いない。

もちろん、これはどちらかが正しいとか正しくないかではなく、リスナーがアーティストに求める世界と、アーティストが表現したい世界との間にズレが生じることは当たり前にあることなのだ。そのズレに対してどう向き合うかはアーティスト次第で、それがそのアーティストならではのキャリアをつくっていくのだ。だから、大橋純子の場合は「たそがれマイ・ラブ」や「シルエット・ロマンス」といったヒット曲を生んだ、あの時代の日本のリスナーのニーズと彼女自身がやりたかった音楽とのズレがそのキャリアを作っていった、ということなのだろう。

しかし、当時の日本のリスナーのニーズからはズレていると思われた『MAGICAL 大橋純子の世界Ⅲ』のテイストが、シティポップ再評価によって魅力あふれる音楽として世界的に受け入れられているということを考えると、時間という要素がなければ見えてこないこともあるのだなあと、とても感慨深いものがある。2001. 9. 11に失われたニューヨークの世界貿易センタービル(ワールド・トレード・センター)の写真が使われたアルバムジャケットからも “時” の重みが感じられる。

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