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「大人のラブストーリーってこういうことか」恋愛から遠ざかっている人に見てほしい『平場の月』【映画感想】

Sitakke

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映画『平場の月』 2025年11月14日(金)公開

15歳の瑞々しい初恋と、大人の切ない恋愛。
堺雅人さんと井川遥さんが出演する映画『平場の月』が、11月14日(金)から公開されます。

原作者の朝倉かすみさんは、「恋愛映画のくくりに入るのかもしれませんが、ちょっと恋愛から遠ざかっている人に見てほしい」と話します。

「HBC演劇エンタメ研究会(通称“エンケン”)」の森結有花アナウンサーが、いち早く試写会で映画を見てきました。
「大人のラブストーリーってこういうことか」と沁みる、映画の魅力をお伝えします。

映画『平場の月』ストーリー

妻と別れ、地元に戻って印刷会社に再就職し、慎ましく、平穏に日々を生活する、主人公・青砥健将(あおと けんしょう)。

その青砥が中学生時代に想いを寄せていた須藤葉子(すどう ようこ)は、夫と死別し今はパートで生計を立てている。

お互いに独り身となり、様々な人生経験を積んだ二人は意気投合し、中学生以来、離れていた時を埋めていく――。

ある日、アパートの部屋から月を眺めていた須藤。
「お前、あのとき、何考えてたの?」
青砥にそう問われ、
「夢みたいなことだよ。夢みたいなことをね、ちょっと」
そう答えた須藤。

再び、自然に惹かれ合うようになった二人。
やがて未来のことも話すようになるのだが・・・。

少し…想定外の映画

HBCアナウンサーの森結有花です。

“大人になって偶然再会した2人のラブストーリー”
“堺雅人さん、井川遥さんが出演”

事前の情報はこのくらいしか入れず映画を見た私には、少し…想定外の映画でした。

ラブストーリーってキラキラしていて、ロマンチックなイメージではありませんか?
しかも堺さんと井川さんだなんて、「大人の色気漂う、洗練されたラブストーリーに違いない!」と思っていました。

そんな予想とは裏腹に、作品はとても現実的で、お2人はいつもの華やかさはどこへやら、私たちの周りにもいそうな“普通の人”なのです。

©2025映画「平場の月」製作委員会

まず、堺さん演じる青砥と井川さん演じる須藤の仕草や言葉が、私たちの日常と共通する部分がありすぎます。

たとえば青砥がお弁当のおかずを詰めながら、残ったおかずをささっと口に入れるシーン。
「やるよねえ。あ、箸は分けないと食中毒の危険があるんだって~」と目の前の人に話しかけるように頭の中でツッコミを入れていました。

他にも細かーいところですが、共感できるところがまだまだたくさんあります。

私は共感するあまり、胸に少しチクリときた2人のやりとりがありました。

©2025映画「平場の月」製作委員会

青砥が須藤に自転車の2人乗りを提案するのですが、「青春過ぎる」と断ります。
それを見ながら、確かに私も2人乗りなんて恥ずかしくてもう絶対できないし、洋服や髪形、言葉遣いも「もうそんな歳じゃない」と思うことが多くなってきました。

“〇〇は何歳まで”なんてルールもないのに、勝手に制限をかけてしまうのです。
現在36歳。アラフォーの私。これからあらゆる選択肢が少なくなっていくのだろうか…。

なーんて話を、青砥と須藤に缶チューハイ片手に聞いてもらいたくなるほど、2人がとても身近で愛おしく感じるのです。


「大人のラブストーリーってこういうことか」

©2025映画「平場の月」製作委員会

また、「大人のラブストーリーってこういうことか」と思ったのが、登場人物がそれぞれ介護、離婚、病気、親の死など年齢を重ねるにつれて直面する問題を抱えていることです。

リアルな問題が描かれているからこそ、見る方それぞれに共感できる表情や言葉もあるのではないでしょうか。

私が特に印象に残っているのは、どんどん変わっていく須藤の顔が鏡に映るシーン。
「本当に井川遥さんなのだろうか?」と思ってしまいました。

鏡の自分って残酷で、疲れているときや余裕がないときに「私、こんな顔だったっけ?」とショックを受けることはありませんか?
どんな気持ちで須藤が自分を見つめているのだろうと、とても胸が締め付けられました。

そして、「須藤に青砥がいてくれてよかった」と心から思いました。

©2025映画「平場の月」製作委員会

あれ?あれれれれ?
読み返してみると、ここまで歳を重ねることの残酷さばかりが目立っています?
違う!ここからがとても大切!!(ここまでが長すぎる…)


日常と重なる「幸せ」

私はこの作品を見て、“自分の日常”をとても愛おしいと思えたのです。

仕事の帰り道に飲むお気に入りの缶飲料とか。
居心地の良い居酒屋とか。
そこで大切な人と飲むビールとか。
自分の周りに誰かがいてくれることとか。

作品の中の2人の日常の中に、私の日常と重なる幸せがたくさんありました。
ドラマチックではないけれど、私の日常も良いもんです。(笑)

そして作品から小さな幸せを見つけることができたのは、まだまだ未熟ではありますが、自分も歳を重ね、少しずつ制限ができ、色々な問題を抱えながらも懸命に生きているからだと思うのです。
もしかするとこの映画は10年後に見ると、また違う感想を持つかもしれませんね。

©2025映画「平場の月」製作委員会

こんなまとめをしましたが、実は穏やかに終わる映画ではありません。
特に最後の須藤の選択は、共感できる、できないが分かれると思います。

私はラスト20分はずーーーーっと祈り、結末に「な、なんでだあああああああ」と声が出そうになりました。

みなさんは劇場でご覧になって、どこに共感するのでしょうか?
そして大人の恋の結末を見て、どんな感想を持つのでしょうか?

“あの居酒屋”でお父さんに見つめられながら語りたいなあ~。
(このお父さんがとにかく最高!)

©2025映画「平場の月」製作委員会

後編の記事では、原作小説『平場の月』(光文社文庫)著者の朝倉かすみさんに、HBC佐藤彩アナウンサーがインタビュー。原作に込めた思いや、映画を見た感想を聞いています。


映画『平場の月』

2025年11月14日(金)から公開。
詳細は公式サイトからご確認ください

出演

堺雅人 井川遥
坂元愛登 一色香澄
中村ゆり でんでん 安藤玉恵 椿鬼奴 栁俊太郎 倉悠貴
吉瀬美智子 宇野祥平 吉岡睦雄 黒田大輔 松岡依都美 前野朋哉
成田凌 塩見三省 大森南朋

主題歌

星野源「いきどまり」(スピードスターレコーズ)

監督

土井裕泰

脚本

向井康介

音楽

出羽良彰

原作

朝倉かすみ「平場の月」(光文社文庫)

制作プロダクション:TBSスパークル
配給:東宝

文:HBC演劇エンタメ研究会・アナウンサー 森結有花
編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は取材時(2025年11月)の内容に基づきます

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