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今日は三浦で昼から飲む! 逗子『つ久志』のガッツリ昼酒アワー

さんたつ

お~い、呑兵衛のみんな。ちょっと、思い出してもらえるかい? ホラ、今(2023年)から2、3年前の間、酒場に行っても酒が飲めなかったのがフツーだったってことをさ。 し・か・も!だよ。“昼飲み”なんてとんでもない話で、店先に“お酒飲めます”なんてノボリを立てようもんなら魔女狩りのごとく密告(チク)られたじゃない? それでも「そんなん気にしない」と飲(や)ってはみるものの、なんだかちょっと飲みづらいし、何より楽しくない……これが当たり前だったと思うと、本当に恐ろしくなるよね? 夜に酒を飲むのが好きなのは当たり前だが、私はそれと同じくらい昼飲みが大好きだ。ランチタイムが過ぎた13~15時くらいのにわかに喧騒が去った、あのマッタ~リとした空間で飲む酒のウマさったらない。ハムエッグ、マグロブツあたりをチビチビつまんで、時折テレビに耳を傾ける。マスターは新聞を読み、女将さんは掃除なんかを始める。ちょうどいい気分になったくらいで店を出てみると、まだ外は明るいもんだから「もう一軒行っとくか」だなんて、こんな幸せな時間は他にないだろう。 こんな当たり前の昼飲みが出来なかったなんて……もうね、あんなの二度と御免だ。二度とあんなことが起こらないことを切に願って、私は何度だってこの当たり前の幸せを呑兵衛たちにリマインドしていくことだろう。 今の楽しみと言ったら昼飲みは当たり前で、そこから如何に“良(い)い昼酒場”を探し出すかだ。まぁ……普通のことなんですがね。そんな酒場っていうのは、突然「ポーン」と逢着するもんだから、うれしいやら難しいやらで……そんなある日、神奈川の避暑地「逗子」へ「ポーン」と訪れた。

毎年訪れていた逗子海水浴場も、件の流行り病で3年間行くことが出来なかった。夏に訪れてはBBQをやってのんびりと過ごし、日焼けで火照った身体のまま電車で都心に戻る。新宿の酒場で打ち上げをして、ヘトヘトで深夜に帰宅というのがお決まり。

久しぶりの逗子ではBBQはいったん置いて、しっかり逗子の街を楽しもうと昼下がりの街並みを散策していた。

「出たっ!」

と、思わず歓喜にも近い声が出た。ほら、またこうやって酒場と逢着したのである。

逗子駅からすぐ、『つ久志』が目の前に現れた。私はよく“酒場が現れた”と表現するのだが、この“現れた感”がたまらない。分かりやすく例えるなら“はぐれメタルが あれらわれた!”に近い。

ナチュラルグラデーションのモルタル外壁、深緑色のテント。長めの縄のれんに店先のチャリンコ……謎のショーケースの趣き……あれ、これって所謂(いわゆる)“完璧な外観”じゃないか?

気になるのは、今はまだ15時を回ったところ。経験上、この佇まいだと少なくとも17時くらいからの営業だろうが……

営(や)ってるんですよ! 調べたら12時からやっているというガッツリ昼酒場だったという!

こんなの……絶対に入るでしょう。この状況を目の前にして、入らない人とは仲良くなれる自信がない。はやる気持ちを抑えつつ、パカッと縄のれんを開脚して中へと入った。

くぅぅぅぅっ、ナカもいいですねぇ……! 入り口から扇状に広がる店内に合わせてカウンターとテーブルが末広がりで並ぶ。レトロな照明群、焦げ茶色の壁と天井……なんとなく、店全体が霞みがかっている感じがまたイイ。大至急、テーブルに座って飲(や)ろう。

あっという間に届けられた「ホッピー」セット。面白いのが瓶をテーブルに置いてみると、わずかに中心へ向かって反っているのだ。これだと酒をこぼしてもテーブルの中心に酒が溜まり、床には垂れないという仕組みか(想像)。

ぐびんッ……つくしんッ……ぐびんッ……、ハッハッハッうまいじゃないか! ここのテーブルと同様、背中を反らして胃袋の中心に向かってホッピーを溜め込む。背後にお天道様を浴びる昼酒は、まさしく背徳感。やはり、たまりませんなぁ。

さーて、まずは「アジ刺し身」から。いやはや、シッカリした切り身、箸先からでも新鮮だと分かる。

うまいっ! 脂ノリ強めだが、アジの爽やかな食感が素晴らしい。それと初めて見たのだが、一緒に皿に乗っている“ツマ”の色どりが楽しい。ショウガと赤カブだろうか、ツマにしっかりと味わいがある。こんな手の込んだツマだったら、これだけで頼んでもいい。

一個850円という、こんなに高価な「床伏煮」は初めてだ。アワビと値段が変わらないところをみると、これは相当おいしい床伏煮なんだろうと思っていたが、ズバリその通り。

小ぶりながら、貝の旨味成分であるコハク酸がビンビンに舌を刺激する。今までの床伏煮のイメージだと煮詰まった醤油味しかなかったが、これはもっと床伏本来の旨味と食感が存分に楽しめる一品。

食べ終わった後の殻もアワビそっくり。これでペンダントを作って、未来の奥さんにプレゼントすることを夢見よう。

シブく落ちついた店内で、品のあるおいしい料理たち……そして、そとはまだまだ明るい。この“ウッキウキ”なテンションで飲(や)る感じ……あれ、これって所謂“いい昼酒場”じゃないか?

三浦半島に来てゼッタイに外せないのが「三崎マグロ」でしょう! 普段見ているマグロと全ッ然ちがうっていう。“赤いところ”と“脂のところ”どちらも、どうやったってウマそうだ。

“赤いところ”の赤身は、シットリと、そしてネットリと肉のウマさが味わえる。なんと言えばいいのか……口に入れた瞬間に舌に“融合”するというか、身体との一体感が生まれるようなおいしさなのだ。

そして“脂のところ”の中トロは、ギラギラと脂が輝いて眩しいほど。箸先から脂で滑り落ちそうなところをベロンとひと口……う・ま・い! 分かってはいたが、ウマいんだよ、これがまたほんとに。舌に溶ける……というのは当たり前で、もはや舌の皮膚移植に近いほどすんなり蕩(とろ)ける。もうそれ以上の感想はない、バケモンですよ。本物のマグロのウマさとはこれだ。

漆黒の土鍋が迫力と共に現れた「牡蠣鍋」。鍋つったら牡蠣、牡蠣つったら鍋という方も多いことでしょう。私もその一員だ。牡蠣以外にはネギ、豆腐、シメジ、春菊と、好きなものしか入っていないワガママ鍋。

箸をズボリと入れると……いたいた、太っちょ牡蠣が頭を出した。重さで箸が折れる前に食べると、これがまたスゲーやつだ。蒸したての穀物のような食い応え抜群の咀嚼と共に、見た目以上にたっぷりの牡蠣スープが口中を洪水に至らしめる。この鍋においてはモブキャラの野菜や豆腐にも旨味が染み込んでおり、全員が主役級となっている奇跡の一杯だ。

あれ? やっぱり“いい昼酒場”ってここのことじゃない?……いや、少なくとも私は“断定”とさせていただきますからね。

「ごちそうさまー」

「ありがとうございました」

「2人、空いてますか?」

「はーい、いらっしゃいませ」

時間は15時半、まだまだ外は明るい。この街は有名ではあるが、横浜ほど人が多いわけでも、江の島や鎌倉ほど有名な観光地ではない。けれども、こんな時間にお客さんがひっきりなしで昼飲みを楽しむ酒場があったのだ。昼呑兵衛の私にとって、それ以上のことなんて必要ない。

フフッ、生ビールでもう一度。

“いい昼酒場”が当たり前に在る世界──ほんとにほんとにほんとにほんとに、戻ってよかった。

『つ久志(つくし)』

住所: 神奈川県逗子市逗子5-1-22
TEL: 050-5872-7501
営業時間: 12:00〜22:00
定休日: 月曜日
※文章や写真は著者が取材をした当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。

取材・文・撮影=味論(酒場ナビ)

酒場ナビ
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