「余ったアオイソメは海に捨てない方が良い?」 釣りで使われる【虫エサの正体を解明】
イソメやゴカイなどの多毛類は、釣りに欠かせない虫エサとして広く利用されています。この多毛類には1mを超える大型種も存在し、形態や生息域の多様性が非常に高いです。この記事では、釣り餌として使われる代表的な多毛類や、虫エサの外来種問題について詳しく解説します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
多様な多毛類:1mを超える大型種も
イソメやゴカイは釣り業界で虫エサと一括りにして呼ばれていますが、環形動物門多毛網に属する生物であり、このグループを多毛類とも呼びます。
多毛類というとイソメやゴカイのようなミミズに似た生物を想像しがちですが、多毛類は非常に多様性が高いグループでオニイソメのような1m程の大型種、鰓冠(さいかん)と呼ばれる特殊な器官を持つイバラカンザシやケヤリムシなど様々な生物が知られているのです。
また、形態的な多様性はもちろんのこと生息域にいたっても多様性が高く、淡水域から深海まで幅広く分布。水深2800mから発見されたという Teuthidodrilus samae は普段目にする多毛類とはかけ離れており、まるでイカのようなシルエットをしています。
釣りエサとしての多毛類
多毛類は釣りに欠かせない生き物です。どこのお店にも売っている多毛類ではアオゴカイ(アオイソメ)、イソゴカイ(ジャリメ)、イワムシ(イワイソメ)が挙げられます。
イソゴカイ(ジャリメ):特徴と利用法
イソゴカイはジャリメとも呼ばれるゴカイ科の多毛類で、投げ釣りで頻繁に利用されます。イソゴカイはイシイソゴカイ Perinereis nuntia vallata とスナイソゴカイ Perinereis nuntia brevicirris の2亜種に分けられます。
イワムシ:世界に広がるイソメ科の多毛類
イワムシ Marphysa sanguinea は世界各地に分布するとされているイソメ科の多毛類。イワイソメとも呼ばれています。虫エサの定番でクロダイ釣りなどに用いられ、アオゴカイやイソゴカイと比較するとやや高価です。
韓国や中国からの輸入があり、国内産のものをイワムシ、外国産のものをホンムシと呼び区別しているとか。流通するものはほぼ天然物ですが、資源が減少していることから養殖も行われているようです。
アオゴカイ(アオイソメ):その実態は外来種?
アオゴカイ Perinereis aibuhitensis は韓国や中国からの輸入があり別名「チョウセンゴカイ」とも呼ばれています。釣り人には「アオイソメ」の呼び名が一般的かもしれません。
近年では中国からの輸入が多く天然物だけではなく養殖された個体も流通し、特に赤みの強いものはアカイソメとも。本種はゴカイ科に属する多毛類で朝鮮半島からインドに分布し、日本からは1908年に隅田川河口から記録があるそうです。
(参考:神奈川近海の干潟・汽水域に産する環形動物多毛類)
(参考:西日本における釣り餌として流通される水生動物の現状)
輸入品の虫エサを海に捨てるのはやめよう
外来種問題はあらゆる面で在来生物へ影響を及ぼします。
例えば今や日本各地に分布する北米原産のオオクチバス(ブラックバス)は日本在来の魚を捕食してしまうことから、長年問題視されている魚です。他にも外来種が在来種のニッチを奪ってしまうことによる在来種の減少、近縁種の間で起こる交雑は在来種の遺伝構造を破壊しています。
外来種による生態系への影響を考える
輸入アオゴカイによる在来種への影響は今のところ不明です。しかし、大陸から輸入されるアオゴカイを海へ廃棄することで遺伝的錯乱が起こる恐れがあるため、余った虫エサは捨てずに処分することが望まれます。
一口に虫エサといっても様々な種類があり、大陸から輸入された個体も多くいます。アオゴカイなどによる在来種の大きな影響はまだ報告されていないものの、こういった問題は長期的な目で見る必要があるため、無暗に外来種を投棄しないようにしましょう。
(サカナト編集部)