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飯田橋駅周辺で進む再開発計画とは? 3地区で進められている事業計画を読み解く

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飯田橋駅周辺で進行する再開発とは

牛込見附跡(JR飯田橋駅西口から撮影) ※2025年6月撮影

皆さんは、飯田橋駅にどのようなイメージを持っているだろうか。意外に知られていないのではと思うのは、実は鉄道5路線が乗り入れており、23区内の主要駅と比べても交通利便性が極めて高いという点である。

その5路線とは、JR中央線、東京メトロ東西線・南北線・有楽町線、そして都営地下鉄大江戸線である。さらに相互直通運転を行っている東西線や南北線などを含めれば、同駅を起点に、東西南北いずれの方向にもダイレクトにアクセス可能であり、東京駅や新宿駅といった23区の主要拠点へも、乗り換え不要かつ短時間で到達することができる。

歴史的にも、飯田橋駅は重要な都市拠点であった。
JR駅西口には、かつて江戸城の外郭防衛線のひとつである「牛込見附(うしごめみつけ)」が設けられていた。見附とは、出入り口に配置された見張り場のことで、江戸城には全部で36の見附があったとされる。現在も駅西口には、当時の石垣が一部残されており、往時の都市構造の一端を読み取ることができる。

JR飯田橋駅東口付近、前方の高架部分は現在使われなくなったJR飯田橋駅旧ホーム、右手前の橋が「飯田橋」 ※2025年6月撮影

一方で、駅の東側は、その名のとおり「飯田橋」が架けられている場所である。もともとは「飯田町」と呼ばれていた一帯に、明治時代、橋が設けられたことが地名の由来となっている。昭和初期、牛込駅の廃止に伴ってこの地に飯田橋駅が誕生した。

こうした歴史的経緯からも、飯田橋駅は東西をつなぐ要衝であったことがうかがえるが、現在はそうした都市の記憶を内包しながら、歩行者施設や駅前広場、地下通路などの都市基盤の再整備と市街地再開発が一体的に進められている。

計画の全体像

整備計画の対象エリアと“今後まちづくりが想定されるエリア” ※出典:飯田橋駅周辺基盤整備推進会議(2025年5月)「飯田橋駅周辺基盤整備計画(案)」p.ⅳを一部加工

飯田橋駅周辺では、主にJR駅の東側エリアにおいて、駅構造上の課題の解決を目的とした、都市基盤の再整備と市街地再開発が一体的に進められている。とりわけ、交通結節点としての機能強化と歩行者動線の改善を中心に計画が構成されており、暮らしやすさ・利用しやすさの改善を目的に都市構造の再構築を進めている。

都市基盤の再整備計画については、東京都、JR東日本、東京メトロ等で構成される「飯田橋駅周辺基盤整備推進会議」において検討が進められてきた。2025年5月には、同会議により具体化された計画が「飯田橋駅周辺基盤整備計画(案)」として取りまとめられ、公表されている。

同計画案では、飯田橋駅A2出入り口付近の改良をはじめ、駅前の立体広場の整備、駅東側と文京区方面を接続する歩行者デッキの新設など、駅の構造課題に対する複数の整備方針が示されている。

都庁総合ホームページ 「飯田橋駅周辺基盤整備計画」の策定について

また、こうした整備計画と連動する形で、駅南側では2つの市街地再開発事業が計画されている。対象となるのは「飯田橋駅東地区」と「飯田橋駅中央地区」の2地区であり、いずれも都市計画決定はすでに完了している。このうち、「飯田橋駅東地区」においては、再開発組合の設立認可も東京都より受けており、法定的な段階を一歩進めている状況である。

飯田橋交差点から下宮比町地区、揚場地区を撮影 ※2025年6月撮影
飯田橋交差点から後楽二丁目地区等を撮影 ※2025年6月撮影

飯田橋駅東地区

飯田橋駅東地区市街地再開発事業のイメージパースおよび断面イメージ ※出典:東京都公式ホームページ、https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/machizukuri/shigaichi_seibi/sai-kai/saikaihatsu/ootemati_1_20

飯田橋駅東地区は、前述の基盤整備計画(案)において、駅A2出入り口の改良が位置づけられたエリアを含む、約0.7ヘクタールの施行区域である。同地区では、地下2階・地上26階建ての超高層複合施設の建設が計画されており、用途としては事務所、住宅、商業施設、公益施設、駐車場等が想定されている。清水建設など参加組合員が公表した計画概要は以下のとおり。

•延べ面積:約4万6,500m2
•容積率 :1,100%
•規  模:地下2階、地上26階
•建物高さ:約130m
•用  途:事務所、住宅、店舗、公益施設、駐車場、駐輪場
•総事業費:約367億円

住宅部分については、専有面積の平均が約70m2で、区分所有のLDK型住戸48戸が計画されている。加えて、駅周辺の都市基盤整備と連動し、地下および地上レベルに計画的な通路や広場空間が配置される見込みである。

なお、同地区については再開発組合の認可はすでに取得済みであるが、次のステップである「権利変換計画の認可」は現時点では未了であり、建築工事も未着工のままとなっている。当初の事業計画書においては、2023年9月の着工、2026年11月の竣工を想定していたが、すでに着工ベースで約2年の遅れが生じている。背景には、駅構造の複雑さや多数の関係機関との調整の必要性があり、前述の基盤整備計画(案)の公表が2025年5月となったことも含め、丁寧な検討が続けられているものと考えられる。

都市整備局 飯田橋駅東地区第一種市街地再開発事業

飯田橋駅中央地区

飯田橋駅中央地区市街地再開発事業の配置図 ※出典:東京都公式ホームページ、https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/machizukuri/shigaichi_seibi/sai-kai/saikaihatsu/chiyoda_01_24

飯田橋駅中央地区は、駅A4出入り口の改良が予定されている区域を含む約1.1ヘクタールの地区で、こちらも複合用途の再開発計画が進行している。2024年3月には市街地再開発事業の都市計画決定が行われており、2015年のプレスリリースによると、野村不動産が事業協力者として参画している。

再開発区域はA街区とB街区に分かれており、それぞれ以下のとおり。

【A街区】
•延べ面積:約7万4,450m2
•主要用途:事務所、店舗、駐車場等
•公益施設:JRおよび地下鉄飯田橋駅を地上・地下で連絡する駅前立体広場
      地区外周に沿った歩道状空地の整備

【B街区】
・延べ面積:約2万5,530m2
・主要用途:住宅、店舗、駐車場等
・住  宅:210戸(市街地再開発事業における住宅建設の目標値)
・公益施設:地域住民の憩いの場となる広場空間の整備

現時点では、都市計画決定がなされた段階にあり、今後は再開発組合の設立認可ならびに事業計画の策定・公表を経て、次の段階へ移行する見通しとなっている。このため、計画概要は変更となる可能性がある。

都市整備局 飯田橋駅中央地区第一種市街地再開発事業

富士見二丁目3番地区

富士見二丁目3番地区市街地再開発事業のイメージパース等 ※出典:東京都公式ホームページ、https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2024/08/2024080701

飯田橋駅西口の南側エリアの一部においても市街地再開発事業が進められている。本再開発事業を含めると飯田橋駅南側エリアでは、現在3つの再開発計画が進行していることになる。施行地区の面積は約0.5ヘクタール、A敷地とB敷地に分けてそれぞれ建築物が計画され、総事業費は約448億円を予定している。

【A敷地】
・延べ面積:約4万5,000m2
・容積率 :約850%
・規  模:地下2階、地上21階
・建物高さ:約130m
・用  途:事務所、住宅、店舗、駐車場等
【B敷地】
・延べ面積:約1,200m2
・容積率 :約500%
・規  模:地下2階、地上6階
・建物高さ:約33.5m
・用  途:事務所等

当該再開発区域は、早稲田通りに面しており、その向かいには2013年に市街地再開発事業により整備された「飯田橋サクラテラス(サクラパーク)」が位置している。サクラテラスは、外堀に面する桜並木と一体となった景観を生かし、オフィス・商業施設と広場空間が調和した複合施設として親しまれている。

今回の富士見二丁目3番地区の再開発計画においても、都市空間の連続性が重視されている。計画概要では、「飯田橋サクラパークの広場と呼応し、早稲田通りから大神宮通りへのにぎわいの入り口となる広場空間の整備」が掲げられている。

また、広場空間の整備により、通勤や通学、日常の買い物に訪れる人々にとって、立ち寄りやすく、滞在しやすい“ひらかれた都市空間”の形成が期待される。すでに整備されたサクラテラスと合わせて、複数の再開発が互いに連携しながら、一体的な都市景観と生活圏を形成していく動きが期待される。

都市整備局 富士見二丁目3番地区第一種市街地再開発事業

飯田橋サクラテラス ※2025年6月撮影
牛込見附跡と飯田橋サクラテラス(JR飯田橋駅西口より撮影) ※2025年6月撮影

再開発がもたらす新たな飯田橋駅周辺エリアは今後に注目

JR飯田橋駅西口駅舎および以前の再開発事業(飯田橋地区、富士見二丁目北部地区)で整備された高層建築物 ※2025年6月撮影

飯田橋駅周辺では、都市基盤の再整備と複数の市街地再開発事業が連動する形で進行している。
駅という交通結節点の改良と周辺の土地利用の高度化を同時に図る今回の取り組みは、都心の限られた空間の中で都市の更新を進めるうえで非常に重要であり、とりわけ、地上・地下を含む鉄道5路線が乗り入れる複雑な駅周辺において、それを実現しようとする計画は注目に値する。

一方で、駅構造の複雑さや関係者の多さなどから、一部では着工の遅れも見られる。こうした状況は、再開発が単なる建物の建て替えにとどまらず、都市基盤やインフラ全体の再構築を伴うプロジェクトであることを改めて示している。

歴史的にも東西をつなぐ要所であり、時代を超えて都市機能が重なり合ってきた飯田橋駅。ここで今、どのような変化が生まれ、駅を利用する人や周辺で暮らす人の生活がどう変わっていくのか、今後も注目されるだろう。

なお、今回は駅の南側エリアを中心に取り上げたが、北側でも再開発の具体的な動きがあれば引き続きレポートしていきたい。

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