「ここが、みんなの大切な場所であり続けますように」~MANKAI STAGE『A3!』ACT3! 2025 横田龍儀&永山たかしインタビュー
2018年の初演から7年、各組6人目の新劇団員を迎えた「ACT2!」を経て、さらに新たな季節、「ACT3!」へと突入したMANKAI STAGE『A3!』。最新公演はMANKAIカンパニー初代メンバーも登場し、期間を前期・後期に分け、A・B・C・D4つの公演からなるボリュームタップリの内容が実現した。毎回注目の劇中劇も第七回ミックス公演『永久に囚われた悪魔。』、第八回ミックス公演『新説・クロウ伝』、そして劇団員24名による第一回満開公演『Last Planet -ep01.Origin-』&『Last Planet -ep02.Home-』と4作を用意。これまでMANKAIカンパニーが培ってきた全てを注ぐ壮大な試みを前に、春組リーダーの佐久間咲也役横田龍儀と、今回初参加となる初代春組リーダー・雛森 霞役の永山たかしが初対面! 作品にかけるそれぞれの思いを語り合ってくれた。
ーー今作からMANKAI STAGE『A3!』もACT3!に突入。ここまでのエーステを振り返ると?
横田:エーステ、今年の6月で7年経つんですよね。それって小学1年生が中学生になってるほどの年月で……その間、僕自身もいろんなことを経験してきましたけど、咲也くんを演じながら「咲也くんはどんどん成長しているけど、自分自身も成長していっているんだろうか?」って不安は常にあったんです。でも前回のフォーライ(Four Seasons LIVE 2024)で、なんかいつも以上にすごくいろんな方に褒めていただいたんです。それがすごく嬉しくて。
ーーそれ、とてもよくわかります。ライブを観ながら「“始まりのひとり”だった咲也くん、こんなに立派になって……」という気持ちが自然に湧き上がってきましたし、その姿はもちろん横田さんの成長の姿とも重なりました。
横田:ほんとですかっ!? その言葉がすごく嬉しかったので、今回いよいよACT3!を迎えて——内容的にも最初に繋がる部分とか似ている部分が結構あるので、そういったところも最初の頃とはどう違う芝居になってるのかっていうのを自分自身も楽しみつつ、初演から観てくれているカントクにも楽しんでもらえたらなと思うので、もう、公演が楽しみで仕方ないですね。
ーー永山さんは今回がエーステ初参加。作品にはどんな印象を抱いていますか?
永山:やっぱりキラキラと、あとワクワクさせてくれるというのは第一なんですけど、役者目線として魅力に感じたのは、“ひと粒で何個もおいしい”感じ。役として舞台上に居られる時間、そして劇中劇でまた違う役として居られる時間っていう、そのてんこ盛り感が存分に詰まっているところがいいなぁと思いました。観ていてすごく楽しめるし、「これはみんな好きだよな」って。それはもちろん、やる方も。例えば結構我慢して感情を抑えなきゃいけないキャラクターだったとしても、劇中劇の芝居ではまた全然違うはっちゃけた役ができたりとかするから、1作の中でも色々なアプローチができるので、演じる人も楽しいだろうなって。
ーー演者としての愉しみどころが伝わってくる。
永山:そうですね。劇中劇が上手に見えないことすらも「その役としてそれを取り組んでるんだ」っていうことの見せ方ができるとか、面白いですよね。
横田:(頷く)。
ーー永山さんを含めMANKAIカンパニー初代組の出演が発表された時は、「夢のキャスティング!」と、2.5次元界隈が揺れましたが……。
永山:ハハハッ(笑)。僕らも「初代が出るんだよ」っていうのは噂では耳にはしていたんで、これ、この時の流れとともに自分にもそんな話が、もしかしたら?? っていうのはうっすら思っていたんですけど、まさか本当に声をかけてもらえるなんて、びっくりです。だってやっぱりちょっと……正直「怖い」っていう言葉も浮かんだので。それは、作品がここまで積み上げてきたものの中へ入っていく怖さもあるし、それを壊さないように頑張らなきゃいけないぞっていう怖さもあります。今はまだプレッシャーのほうが大きいですよ。でもこのタイミングで自分が新しいトライができるのは嬉しいです。
ーーちなみに噂の段階で「もし自分がやるなら……」的に気になっていたキャラクターはいましたか?
永山:最初から雛森 霞一択でしたね。キャラクターを見たとき、僕が役をいただけるならこれかなって思っていたので。そしたらやっぱそのとおりでした。
ーー新規参加の初代キャストは他に日向 紘役の鈴木裕樹さん、栗生 善役の南 圭介さん、乙宮 柊役の新木宏典さんがいらっしゃいます。エーステレギュラーである神木坂レニ役の河合龍之介さん、鹿島雄三役の鯨井康介さんも加えての初代チーム、どうですか?
永山:それぞれ面識はあるんで、ズッキーに対しては役者として役に対するアプローチとか、お芝居の塩梅とか僕はとても信頼しているし、すごいなと思っています。ケイちゃんは場の空気を変えてくれる、とても周りを和ませてくれるっていう人間力があることをもう十分知っているし、あらやんに関しては、やっぱり彼のミステリアスさだったり彼にしか出せないあの雰囲気っていうものを感じさせてくれるすごい人だから、そこで共闘できるってのはすごい楽しみですね。今や深いことまでバンバン喋れちゃう鯨井くんとも新しい役で絡めるし、河合の龍ちゃんもこうやってまた舞台で会えるというのが嬉しくて、全てがすごく楽しみです。
横田:ちなみに初代キャスト、僕らもプロデューサーさんに「どなたに決まったんですか?」ってずっと聞いていたんですけど、「楽しみにしてて」としか答えてもらえず……わかった時はカントクと同じくらいの衝撃でした(笑)。こうして素敵な先輩方が揃って、これからの稽古でみなさんにいろいろ勉強させてもらえる。僕もすごく楽しみです!
ーーそして、春組同士のお二人は実は本日が初対面。
横田・永山:そうです。
ーーぜひその新鮮な印象をお伝えいただければ。
横田:永山さんは映像などで拝見していて優しい人だと思っていたけど、実際に会ったら怖い可能性もあるので、まずは永山さんとお付き合いの長い鯨井さんに探りを入れました(笑)。そうしたら「めちゃくちゃいい人。ふたりはなんか似てる気がする」って。他に会う人会う人に調査をしたらみなさん「いい人」っておっしゃるので、それを信じて今日を迎えたら……マジでいい人でほんっとに安心しました。だってもうメイクの時に永山さんからご挨拶に来てくださって。
永山:僕、いい人だって思われたくて、もう真っ先に行きましたからね、挨拶。いい人って思われたいがためだけに一目散に(笑)。
横田:(笑)。
永山:横田くんのことは鯨井くんがやってたユニットのお芝居に出演していたのを観ていて、とっても真面目で真摯なお芝居をするし、本人もそういう方なんだろうなって思っていたのが第一印象。あと先日のフォーライにも行かせてもらって……みなさんは「成長した」って言ってましたけど、僕は成長過程を見てなくて、もうしっかりMANKAIカンパニーを牽引してる、一生懸命前に走ってる姿を見て「頼もしいな」っていうイメージでした。でも実際の横田くんは可愛いし、ガッとくる人ではなさそうだし、僕の持っていた印象は彼の中の何粒ものうちのひとつなんだって、今日はちょっと驚きと発見がありました。
ーーご自身のキャラクターについてもお聞かせください。永山さんが演じる雛森 霞は初代春組のメンバーであり、今は演劇雑誌『Spotlight』の編集長を務める人物です。
永山:はい。だから今日は編集長として横田龍儀さんのことを知りたいな、という気持ちでもいます(笑)。役に対してはプロデューサーさんからも「とにかく永山さんにぴったりだから、どうしてもやってほしい」って言ってもらって、やっぱりそこまで言われたら意気に感じますからね。「ぜひやります!」ってお受けしたんですが、設定なんかをよくよく見ると「年甲斐もなくぶりっ子」みたいなことが書いてあって、「え、これ、どういうこと??」と。だから僕は今回、何の恐れもなく、全力でぶりっ子をやろうと決めてます。
ーーそこは、かつての得意分野だったような……。
永山:そうですそうです。僕はもう20年前、とある役でぶりっ子として生きてきた……可愛いだけを求めて生きてきたんで(笑)、ピッタリです。年甲斐もなくまたそこに原点回帰です。原点回帰だけど、“成長した原点回帰”を求めてやっていけたら……と。
ーーシングルファーザーでありながら、端々に柔らかさや乙女心が滲むキャラでもあって。
永山:乙女心。そこはちょっと自分に足りていないので、これからリサーチするつもりですけど……今台本を読んでいて難しいなと思っているのは、彼は喪失、「失う」っていうことに対しての恐怖を常に抱えて生きてる人だから、そこの部分ですよね。どの塩梅でいけばいいのかを考えているところです。また、役者としては女形で活躍されていた人なので、劇中劇ではそのあたりをどう表現するのかもひとつの挑戦、かな。まだどうなるかわからないですが、あんまり型にハマりすぎず、楽しめたらいいなとは思ってます。
ーー咲也くんとしては、先輩たちの過去と今の歩みもあって、そして自分たちの今がある、という改めて劇団の歴史を紐解いていくようなストーリーにもなっています。
横田:今回、劇中に「永遠なんてない」っていう言葉がたくさん出てくるんですけど、それって、現実の僕たちにも繋がる言葉でもあり……今回で卒業するメンバーもいますしね。そういう変化も感じつつこの物語を演じられたらいいなって思いますし、また、「自分だけの居場所」っていうテーマもあって。僕自身30歳になって、自分という人間の今の立ち位置だとか、このカンパニーにいるときのポジションとか、そういうところも一つひとつしっかり振り返りながら、咲也くんへと結びつけて考えていくと、やはり人間としてもこの作品でさらに成長できるんじゃないかなって、自分ごととしてもすごく考えています。しかもすごい大作なので……。
ーー劇団の今後に降りかかる大きな課題と向き合いつつ挑みつつの物語となるMANKAI STAGE『A3!』ACT3! 2025は、公演期間も前期・後期に分かれており、まさに未知のボリュームに!
永山:いやぁ、すごいですよ。
横田:……はい。僕自身こんな作品はまだ経験したことがないので、全て乗り越えたときに自分は役者としてどういうふうに成長できるんだろうかっていうのも楽しみなんです。何カ月間も同じものにどっぷり浸かって、それになりきってやれる時間があるって、あまりない経験ですよね。自分にとっても勉強であり、チャレンジでもあり、みんなと協力して最高の作品を作っていきたいです。でもこういう試みが成立したのは、「たぶんこの作品だったらいける」とみんなが信じているからだとも思っています。
永山:うんうん。この作品をやり切ることは、僕ら自身も役者として次のステージに進めるんじゃないかなっていう期待は、僕もすごくあります。みんな大変だと思うけど、楽しみが勝ってますよ。
ーー咲也くんと雛森さんの絆も劇中でどんどん深まっていきます。
永山:深まってますね。でも僕は……霞は本当に咲也を見ながら、「もう1回、やっぱりお芝居したいな」って思うんです。だからね、これからの稽古でももうずーっと見てようと思ってます、彼を。咲也くんのいうことしか聞かないかも。
横田:ハハハッ(笑)。
ーー咲也くんはいつも「誰かの心を動かす存在」ですから。
永山:そうですね。
横田:そうなんです! だから僕も咲也としてお芝居をさせたいっていうか、僕はお芝居を見たい側なので、今回も相手を立たせる芝居ができるようにってところを考えながら作っていかなきゃなって。
永山:うん。
横田:いろんなことが進み出す物語なんです、ACT3! は。前に進みつつ、それが終わりに向かっていくっていうような感覚にもなるのがACT3!。その中でメンバーみんなの成長もすごくあると思うんです。それは現実の僕たちの成長でもあるんですけど……だから大きな見どころは、一人ひとりのキャラクターの成長なのかなって思いますね。また、全体的にも今までとはちょっとテイストが違う部分が多くあって。
ーーよりシリアスで、なかなかにビターテイストなエピソードになっていますよね。
横田:はい。だからこの作品の中でも何かちょっとでも道を間違えた瞬間に終わってしまう可能性もあるっていうヒリヒリ感、そういったところの表現の精細さっていう部分でも、役者同士の掛け合いとかをより大事にしていかなきゃいけない作品なのかなっていうのはすごく感じていますし、ここまで関係性を積み上げてきている今はそれがしっかりとできるっていうタイミングでもあるのかな、と。MANKAIカンパニーの中にある強い絆は、現実の僕たちの間でも確実に生まれてるもので、そういうことも全部利用しながら繋げながら作っていけるんじゃないでしょうか。
ーー新生MANKAIカンパニーに大人たちが入っていくことで生まれるさらなるリアル。若者たちのまっすぐさと大人たちの面倒くささ、みたいな対比も面白くて。
永山:これ……お芝居だけに関わらず、たくさん心に拾える言葉というか、今の自分に響くこともいっぱいあるんですよ。中でも「永遠の一瞬」って本当にすごいいい言葉だなって思う。特に僕なんかは役がね、奥さんを失っているというセンシティブな背景がある中で、「失いたくない。だからやらないんだ」っていう選択の理由をちゃんと浮き立って見えるようにできればいいな、とは思ってますね。それと、それこそ僕が20代で2.5次元作品をやっていたときに応援してくれていた人が、時を経て、たぶんまた今回、劇場に観劇しに戻ってきてくれるってこともきっと多いと思うので、そういう人たちに対して僕は会っていなかった期間の足取りもちゃんと見えるような、成長が見えるような自分でもありたいし、今僕が思ってる、感じてることが、思い続ければ長く続くんだっていうこととかも、なんか、やっぱ作品の中で気付かせてもらえるし。だから「永遠の一瞬」。そういう、みなさんにとっての永遠を僕らが作っていければいいなっていうのは、僕の中にはすごくありますね。
横田:今思うと、初演の時、あの時の自分を……力足らずだった自分を咲也くんに選んでくれた人はすごいなぁと思います。
永山:そこはさ、きっと今の龍儀くんを思い描いて選んでくれたんじゃないかな。
横田:ああ……それは本当にありがたいです、とても。
永山:これ、もういろんなところで何度も言ってるんですけど、やっぱりエーステは龍儀くんたちみんなやカントクが長い時を重ねながら大切にしてきた「居場所」みたいなものだと思うし、みなさんが盛り上げてくれたからこそここまで続いてるもので、そこに僕らは入らせてもらうわけで……だから僕らにとってもここがそういう大切な居場所になるように頑張っていけたらいいなと思ってます。エーステがこれからもっともっと長く続くように、僕らはここでしっかりいい活力に、いい力になれたら嬉しいです。みなさん、劇場で楽しんでくださいね。
横田:みなさんのおかげで、僕らはACT3!まで来ることができました。今回、本当にいろんなことが起こりますし、この大作に取り組むのが不安なこともありますけど、でもそれ以上にまた素敵なお芝居を作れるんだって喜びを感じています。カンパニーのみんなを信じ、(演出の松崎)史也さんやスタッフさん、関わってくださる全員のことを信じて全力で作ったものをみなさんに届けたいな。公演はA公演、B公演、C公演、D公演とありますが、もしかしたらどれか1公演しか観れないという方もいらっしゃるかと思います。でもひとつだけしか観られなくても満足していただけるよう4本全てに全力で取り組んでいきますし、もちろん4本見たら全てが繋がってもっと素敵だとは思いますけど、どんな形にせよ来てくださった方に喜んでもらえるように頑張ります。ぜひぜひ楽しみにしていただけたらありがたいです。よろしくお願いいたします。
ヘアメイク=山口かな子
スタイリスト=小田優士
衣装協力=seyto、remer(横田龍儀)/soerte、flaner(永山たかし)
取材・文=横澤由香 撮影=荒川 潤