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GOOD BYE APRIL シティポップのさらに向こう側へ、時間と愛とアイディアをたっぷり注いで作り上げた現段階の最高到達点 1stフルアルバム『HEARTDUST』を語る

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GOOD BYE APRIL 撮影=高田梓

メジャーデビューから1年半、時間と愛とアイディアをたっぷりと注いで作り上げた、これがバンドの最高到達点。GOOD BYE APRILの1stフルアルバム『HEARTDUST』は、デビュー曲「BRAND NEW MEMORY」や「ニュアンスで伝えて feat. ヒグチアイ」「ふたりのBGM feat. 土岐麻子」など、スマッシュヒット多数に新境地を拓く新曲をプラス。J-POPとシティポップのマエストロ、林哲司をプロデュースに迎えたリード曲「Love Letter」を筆頭に、アルバムという広いキャンバスの中で、それぞれの個性が引き立て合う珠玉の11曲。シティポップのさらに向こう側へ、明るく強く歩みだす4人の本音を聞いてみよう。

――ついに完成しましたね。記念すべきメジャー1stアルバムが。

倉品翔(Vo&G):できました。僕はアルバムを聴いて育ってきたこともあって、アルバムというフォーマットがすごく好きで、メジャーデビューしてから配信シングルを出すたびに“これをちゃんとアルバムにまとめたい”とずっと思っていたので、その念願がかなったことと、メジャーデビューをしたことで、いい曲を書きたいなとあらためて思ったんですよね。最近は、自分たちのサウンドをブラッシュアップしていく期間が続いていて、新しいソングライティングの切り口というか、“こういう曲はまだ書いていなかったな”というチャレンジをする月日が長かったんですけど、“シンプルにいい曲を作りたい”ということで、メジャーデビュー以降はシングルを出してきたので。アルバムになってみて、1曲1曲の普遍性みたいなものが出せていると思うし、曲の強度と言うとあんまりいい言い方じゃないかもしれないけど、ちゃんと長く聴ける曲が揃って、しっかり構成できたアルバムだなという実感はすごくありますね。

――間違いないです。

倉品:だからいろんなタイプの曲を選んだし、足りないものは新たに作りました。アルバムという形で聴いた時に、そこにちゃんと意味を持たせたかったので。先に出ている曲たちもよりよく聴こえる流れを作りたかったので、そこは相当こだわって作ってます。

――アルバム全体の手ごたえをメンバー全員に聞きましょう。どうですか、延本さん。

延本文音(Ba):アルバムを作れること自体が今は稀というか、フィジカル(CD)は出さないというアーティストもいる中で、“でもやっぱりアルバムが好きだな”って、作りながら思ってました。シングルって、ある程度は(ヒットを)狙わなきゃいけないじゃないですか。でも自分はどっちかというとB面曲のほうが好きなんですよね。いろんなアーティストの楽曲の中でも、結局好きになるのはB面曲だったりして、そう考えると、やっぱりアルバムを作らないと、このご時世ではそういう曲を生み出す機会がなくなっちゃうなと思っていたので。

――はい。なるほど。

延本:昔みたいにフィジカルのシングルだったらB面があって、2曲目や3曲目もあったんですけど、今はそれもないし、さらにアルバムもなくなっちゃったら、自分の持ってる灰汁(あく)みたいなところが出せなくなっちゃうので。逆に言ったら、そういう曲をアルバムに入れればシングル曲も締まるというか、私はそれが好きだなとあらためて思いました。

――同じようなことを僕も聴いて思っていて。語弊があるかもしれないけど、主役と脇役がちゃんと揃っているアルバムだなと思ったんですね。11曲を俳優にたとえると。

延本:めっちゃわかります。

――主役っぽい曲が真ん中にあるとすると、その脇にいていい演技をしてる、みたいな曲もあるというか。

延本:私も映画やドラマで、脇役の人のほうが好きだったりします。藤原釜足さんっていう俳優の方、いらっしゃったじゃないですか。

――はいはい。すごい渋いところを突いてきましたね。

延本:めちゃくちゃ好きなんです。最近だったら、野呂佳代さんとか。安心感があるというか。“あの人が出ているドラマは間違いないね”みたいな人が好きなんです。アルバムでも、そういう曲のほうが好きですね。

倉品翔(Vo & Gt & Key.)

――かつては“捨て曲”なんていう言い方もありましたが。あれも別に要らない曲という意味ではなくて。

吉田卓史(Gt):引き立たせる。

――そうそう。バイプレイヤーなんですよね。

倉品:やっぱり生姜焼きにキャベツは必要ですもんね。……ちょっと違いました?(笑)

つのけん(Dr):マヨネーズも必要だね。

延本:あと漬物。私は漬物が好きなんです。やよい軒に行きたい理由も、漬物食べ放題だから。漬物目的で行ってます。

吉田:大事やな。

倉品:それはただ漬物が好きなだけじゃないの(笑)。

延本:でもさ、肉とか魚とか、メインディッシュばっかり入ってるお弁当って、ずっと食べられないじゃない? やっぱり煮物があったり、端っこにひじきがあったりするほうが、彩りも綺麗だし、毎日食べるんだったらそっちのほうがいいだろうと思うし。ハンバーグからすぐ唐揚げに行っていい場合もあるけど、間にちょっと一回味を変えたほうがいい時もあるし、そういう役割は絶対に必要。

倉品:つまりB面曲は漬物なんだ。

――漬物理論で言うと、このアルバムの漬物はどれですかね。

延本:「Dusty Light」と「優しい歌」ですね。それが一番さっぱり系だと思っていて、米が進む小鉢が「Highway Coconuts」だと思ってます。これが入るか入らないかですごく変わったと思うので。

倉品:米が進む小鉢(笑)。具体的でいいな。

延本:いんげんのごま和えとか。

吉田:俺、今、春菊のごま和えって言おうとした。同じこと考えてた。

つのけん:ごま和え系やな。

延本:入ってたらめっちゃ嬉しいんですよね。

――素晴らしいですね。ええと、何でしたっけ。何の話でしたっけ(笑)。

延本:アルバム設計の話ですかね。脇役が好きだって。

――そうだそうだ。思い出した。でも言い切ってくれた気がしますね、今の話で。アルバムには小鉢も漬物も必要で、それで美味しく食事ができる。見事な例えですね。お待たせしました吉田さん、アルバム全体の印象はどうですか。

吉田:もちろん僕もアルバム好きなので、やっと出せるという喜びが大きいですね。出来上がってどこがどうというよりは、アルバムを出せたことのほうに感動があります。あとは何かあるかな。

倉品:ギターソロ、いっぱい弾いてるじゃないですか。頭3曲、いきなりギターソロ連チャンですから。

吉田:確かに。ギターソロって要るんか?論争も、個人的にはどっちでもええやんって思ってたんですけどね。個人の好みなので。でも、増えましたね。

延本:特に意識してはいなかったけど。

倉品:そういうこと、考えたことないもんね、俺ら。たとえば“この曲にイントロは要るのか”とかじゃなくて、その曲が欲しい形をただ探すだけだから。“ここにギターソロ来たらいいよね”ってなったらギターソロを入れるし、時代がどうこうとかは別に考えない。

吉田:さっきの話で言うと、シングルはギターが印象的な曲が多いんですけど、新曲の5曲はメインディッシュじゃないところもあって、春菊のごま和えみたいな感じで弾いてる曲が多いですね。全部が“添えてます”みたいな感じ。「Dusty Light」とか、添えすぎて、簡単すぎるというか(笑)。でもたぶん、これがなかったら足れへんやろなというか。

倉品:1曲の中でも小鉢がある。

――ギターはメインにも小鉢にも回れる楽器ですよね。「Dusty Light」とか、サックスソロが間奏の主役みたいになっている曲では、ギターは小鉢で。

延本:みんなで支えて生かすみたいな。

倉品:そこは僕らの大事なポイントかもしれないです。サックスは客演だけど、それをバンドのメンバーがみんなで支えて盛り上げる。バンドというよりも音楽集団というか、曲に尽くすパーツとして機能しているというのが大事なスタンスかもしれないですね。

――お待たせしました。つのけんさんの、アルバム全体の印象は。

つのけん:最初に感じた印象は“洋楽の代表アルバムっぽいな”という印象ですね。“俺らはこういう音楽やってます”というものを1曲目で提示して、そこから“こういうこともできるんだぜ”みたいな、どんどん展開していくアルバムだなというのをすごく感じていて。

倉品:確かに。

つのけん:洋楽ではそういう、アーティストの代表アルバムってあるじゃないですか。そういうものになっていくんじゃないかな?ということを感じて、すごく手応えを感じていますね。ドラムに関しては、全曲攻めたなと思います。考えていた音色がばっちりハマったというのもあって、プレイは結構繊細なんですけど、ギリギリを攻めるというか、その曲の持ち味を引き出すリズムにとことんこだわった曲が多いなと。普段からこだわってますけど、より繊細なプレイを求められる楽曲が多かったなという印象はありますね。

――確かに。1曲ごとに、かなり音色も変えていますし。

つのけん:「優しい歌」とか、キックとスネアとハットとシンバル1個しか使っていないんですけど、その曲に寄り添うためにどれだけ引き算ができるかを考えてプレイしたので。思い出がいっぱい詰まってる楽曲が多いですね。

――ちなみに「ポートレイト・ラヴソング」って、どんなドラムセットですか。打ち込みっぽいですよね。

つのけん:「ポートレイト・ラヴソング」は打ち込みです。倉品から曲が送られてきた時に、これがいいんじゃないかなと思ったんですね。

――デモの段階で。

つのけん:そうです。これを生ドラムにすると雰囲気が変わっちゃうなと思ったのと、曲順を見た時に、その次に「Dusty Light」という深めのドラムが来るので、そことの差が見えやすくて、どっちも引き立たせられるから、生音じゃない意味がちゃんとあるなと思ったので。

――俺は叩かなくていい、というのは、チーム意識がないと絶対できないですよね。

倉品:さっきの、サックスをみんなで支えるというのも一緒なんですけど、やっぱり曲が求めるものを選ぶというのはありますね。

延本:「ポートレイト・ラヴソング」は、私も弾いてない。

倉品:ベースも打ち込みです。

倉品:それも、つのけんが叩かないことを自分で選んでいるんですね。一個一個ちゃんと意味があるので、有機的な打ち込みになっているというか、全て僕らの選択です。曲に尽くしてますね。

――名言出ましたね。曲に尽くす。

倉品:本当にそんな感じです。曲が全てなので。尽くしてます。

――素晴らしいです。そして倉品さん、アルバムのリード曲「Love Letter」で、デビュー曲に続いて再び林哲司さんのプロデュースが実現しましたが、これについては。

倉品:「Love Letter」は、メジャーデビューシングル「BRAND NEW MEMORY」と並行して用意していた曲で、ワンコーラス作った状態で寝かしていて、いつか出したいねと話していた曲ですね。最初に僕が作ったデモがあって、林さんが“サビを変えたらもっと良くなりそう”ということで、新しいサビを作ってくれました。それを合体させたワンコーラスのデモがあって、曲の土台は出来上がっていたんですけど、その先の展開は全然違うものだったんですね。でも1年ぐらい経って、いざこの曲を仕上げようとなったら、1番2番を繰り返して間奏に行ってラスサビに行くというめっちゃ王道の構成になって、それがすごく良かったなと思います。

――もっと複雑にするつもりだったんですか。

倉品:もうちょっとトリッキーにしようと思っていたんですよ。1サビの後に長い間奏に行こうかなとか、別のメロディに行っちゃうのもいいなとか、色々考えていたんですけど、やっぱり王道の展開が一番美しいなと思いました。それは林さんが作ってくれたサビのメロディが、めっちゃ強いからだと思うんですよね。あとは、間奏のコード進行。林さんが“こんなのどう?”って提案してくれて、それを聴いた瞬間にこのアレンジがバーッと浮かんできて、“見えました!”みたいな感じでした。“それで行きましょう!”って。

延本:イントロのシンセも林さんのアイディアなんですけど、あれで一気に時代感が出たと思っていて、“すごい!”と思いました。

倉品:間奏のコードは、林さんの曲によく出てくるコードなんですけど、この曲にそれが出てくると、ギラッとした高揚感が出るんですね。「BRAND NEW MEMORY」の時もそうだったんですけど、お互いのアイディアがいい感じに混ざり合って共存しているというか、間奏のコードに♪It's gonna be the loveというコーラスを乗せた時の聴こえ方の違いとかも、すごくいい形で作用し合っていて。僕らが言うとおこがましいですけど、林さんと僕らのシンパシーを感じます。

――林さんの名前が出たので、聞きたかったことを一つ。いわゆるシティポップとか、AORとか、メジャーデビュー以降はだいぶ言われたと思うんですけど、もちろんその部分はありつつ、アルバムでははみ出す部分もあるし、今どういう気持ちですか。自分たちの音楽のジャンル感に関しては。

倉品:実はもう「BRAND NEW MEMORY」を出したあたりから、シティポップという言葉は頭の端っこのほうにポンと置いてあるだけになっていて、あまり意識して作らなくなっていたんですね。一個前のアルバムまでは、やっぱりブームの煽りも受けていましたし、自分たちなりにアプローチできることはないかな?というトライアルはずっとしていたんですけど、正直、今回のアルバムのタームでそういうことはほぼしていないです。「Love Letter」という曲も、シティポップにもくくれるとは思うんですけど、どっちかというとその向こう側にある、80'sの洋楽のディスコ・ソウルの、日本のシティポップが影響を受けていたであろうグループのサウンドを意識しているんですね。その時点で、いわゆるシティポップという枠組みは自分の中ではどうでもよくなっていました。それよりも、バンドの中でずっと大事にしてきたコーラスワークだったり、普遍的なメロディだったりを、どうやったら生かせるか?というところがベースにある中で、今まで自分たちがやっていないジャンル感にトライしてみようとか、そういう発想で作った曲ばかりなので。もちろんシティポップやAORは今でも好きですし、そういう曲だと言われればそうなんですけど、それは自然に出てきただけというか。シティポップとの関わり方という意味では、本作はすごく自然体に、頭の片隅に置いてあるぐらいで、何かを意識して作ったりはしなかったですね。

――それもさっきの話のように、ただ曲に尽くした結果というか。

倉品:言ったら、今までのアルバムも全部そうなんですよね。なんだかんだやりたい放題で、本当に曲に尽くしているだけなので。

――時代は大事だけど、それよりも本質が大事。

倉品:ポップミュージックって、そういうものだと思います。あんまり形式にとらわれすぎると、狭まったものになっちゃうというか、何かを真似しても普遍性は得られないと思うので。本当の普遍性って、ちゃんと心から溢れ出たものじゃないと、時代を超える強度にはならないと思うんですよね。そのためには、やっぱり曲に尽くさなきゃいけないし、計算や打算では普遍性は得られないと思っています。

――極私的でいいですけど、一番気に入っているメロディはどの曲ですか。

倉品:「ポートレイト・ラヴソング」のBメロです。

――即答ですね。なるほど。

延本:英語のところ?

吉田:俺も好きやけど。

――僕も好きです。ビーチボーイズとか、そのへんのコーラスの美しさを感じました。

倉品:実はこれ、XTCですごい好きな曲があって、それがインスピレーションになっているんです。本当に自己満ですけど、コーラスと主旋律が交差するメロディで、あれを思いついた時にはさすがにうぬぼれましたね(笑)。XTCの曲は「キング・フォー・ア・デイ」というんですけど、その曲もコーラスが交差してくるんですよね。それに近いことを発明しちゃったなと思って、でもその後にちゃんと強いサビが来てくれたので、じゃあ歌詞も好き放題に英語にしようと思って、そこが自分の中では一番濃いポイントです。アルバムの中でそこが一番好きです。

――そういう細かい話は、面白いのでもっと聞きたいです。つのけんさん、アルバムのどのパーツが好きですか。

つのけん:僕も即答であるんですけど、「CITY ROMANCE」の最後の一音の、ハイハットとキックの締めは完璧です。今までの人生の中で一番完璧に決まりました。

――おおー。超ピンポイント。

つのけん:僕が今まで音楽をやってきた中で、一番うまく決まったんですよ。この曲が求める迫力を、ちゃんと最後の一音で全て出し切れたテイクで、録り終わった瞬間に“来た!”と思いました。

倉品:その時のこと、俺も覚えてる。プレイバックして、他のテイクと聴き比べていたんですけど、最終的に選んだテイクが一番“飛んで”きたんですよ。それってドラムが作っていたんだと思いましたね。

つのけん:僕が憧れてるドラマーに佐野康夫さんがいて、佐野さんが出している音の迫力にちょっと近づけたかな?と思ったぐらい、成長したなということをすごく実感しました。この一音は本当に今までの中で一番いいニュアンスが出せたなと思います。

――吉田さん、いまアルバムの歌詞を見ながら一生懸命探してますけど(笑)。どこですか、俺の推しポイントは。

吉田:思い入れ的なものですよね。何かあるかなー。

倉品:俺はギターの好きなところ、いっぱいありますよ。

つのけん:俺もある。

吉田:楽しかったというか、新鮮やったのは「Highway Coconuts」ですね。

倉品:レゲエっぽい刻みのところ?

吉田:ああいうの、結構なかったので。レコーディングもふわーっと楽しくできたんですよね、そんなに構えずに。あとは……何かあります?(笑)

倉品:全部いいんですけど、「Love Letter」のソロの最後の、チョーキングの上がるタイミングが、僕はこれがベストだと思います。だんだんコードに合っていくというか、ギリギリまで合わないんですよ。ギリギリまでちょっと不協和音で、最後にコードに合流してバチッと決めにいくのが、もうこれ以上ないなと思います。

吉田:そういうこと、あるんですね。

――他人事みたいに(笑)。意図はしていなかったんですか。

吉田:意図はしていないです。ここで合わせにいこうとかは。

倉品:彼は天然系なので。昔から、セッションで曲を作る時に、適当に乗っかってきたフレーズが一番いいんですよね。“こんな簡単なのでいいの?”とか言うんですけど、それがすごく曲に合っていて、いいアプローチをしているので。

吉田:「Love Letter」の、♪チャッチャッとか。

延本:刻み系ね。

吉田:ああいうのは、簡単すぎじゃない?ってなるんですよね。

延本:「ニュアンスで伝えて」のギターもいいよね。刻み系の。

つのけん:俺も好き。

――刻ませたら最強。延本さんにはまだ聞いてなかったでしたっけ。全体の中のどのパーツが好きですか。

吉田:歌詞がいいんじゃない?

延本:歌詞は、単独で書いてるやつはめちゃくちゃ満足していて、全部いいなと思ってます。

倉品:単独じゃないのは満足してないんですか(笑)。(※倉品と延本の共作詞が3曲)

延本:それはほら、一緒に書いたから。お力添えしただけとか、あるじゃん。

倉品:自分で全責任を負ってるやつに対して、ということね。

延本:「ポートレイト・ラヴソング」は倉品が書く予定だったんですけど、体調を崩して書けないと言われて、レコーディングの2日前にバトンタッチされて書いたわりには、めちゃくちゃいいのが書けたなと思ってます。歌詞としては、アルバムの最後の1曲だったんですよ。フラれる曲とか暗い曲ばっかりだから、最後のワンピースは幸せなラブソングを入れようと思って書いたんですけど、一番の《ソフトクリーム》が、自分的にはベストかもしれないです。

倉品:そうなんだ。

延本:《ソフトクリーム》がメロディにハマった時の語感が良かったのと、あと林さんに褒めてもらったんですけど、「Love Letter」の《筆圧》というワードが、“いい意味でプロの作詞家からは絶対出てこない”って、それがすごくいいと言ってくれたのが嬉しかったです。ちょっと変かな?とは思ったんですよ。変えようかなと思っていたんですけど、“個性があるから、変えなくて大丈夫だよ” みたいな。

――それはめちゃくちゃ嬉しいですね。

延本:自分では満足していたんですけど、こういうテーマってちょっと変なんじゃないかな?と思っていたんですよね。ちょっとアブノーマルかな?と思ったんですけど、林さんが“詞がいいからこのテーマでいいと思う”と言ってくれて、自信を持って二番も書き上げました。

――いい話です。

延本:自分的なベストは《ソフトクリーム》と《筆圧》です。いい歌詞が書けたなと思うのは「ニュアンスで伝えて」と「Highway Coconuts」で、特に「ニュアンスで伝えて」は、(ヒグチ)アイちゃんが歌ってくれた2番のところとか、すごくいい歌詞が書けたなと思います。でもワードとして気に入っているのはその二つです。

――《ソフトクリーム》と《筆圧》。これから聴き返す時に、より深く味わえる気がします。さぁ、そして、リリースツアーがあります。1月から2月にかけて、名古屋、大阪、東京を回るワンマンツアー。題して『HEART PORTRAIT』。どんなツアーにしたいですか。

倉品:最近はライブがどんどん自由になってきていて、アルバムの曲たちもライブでしか聴けない形で届けていきたいなと思うし、ライブをイメージしながら作った曲も結構あるので。「Love Letter」や「CITY ROMANCE」とかは特にそうですけど、ライブでどんどん化けていってくれると思うので、今から楽しみにしています。あとは、今年はいろんな人の後ろで演奏させていただく機会があって、あらためてこの4人でしか出せないグルーヴとか、バンドとしての演奏の、自分の中では“もっちり感”と言っているんですけど。なんか、モチモチしてるなと思っていて。

吉田:へえええー。

倉品:いわゆる、上手な人たちがただ4人集まっただけじゃない、もっちり感がある。伝わるのかどうか、わかんないですけど(笑)。

延本:プロが集まると、みんなすごい上手だから、タンタンタン!っていう気持ち良さもあるけど、ロールしてる感じというか。

倉品:そう。ロールしている、歯ごたえがあるんですよ。バンドのグルーヴは年月で積み重ねてきたもので、そこは僕らのライブでしか体感してもらえないものだと思うので。丁寧に作ったポップソングを、そういう歯ごたえのある演奏で、生で浴びていただくと、すごい心の栄養になるんじゃないかなと思うので、それを受け取りに来てほしいなと思っています。もっちり感はちょっと、伝わらないかもしれないですけど(笑)。

吉田:余談ですけど、GOOD BYE APRILの曲を、違うメンバーで演奏したことがありましたよね。

倉品:あった。僕がたまたま遊びに行ったライブで、1曲歌ってよと言ってくれて、「plastic」という曲を、コードだけ見ながら演奏してくれたことがあったんですよ。上手いミュージシャンの方が。そしたら全然別の曲みたいになった。

吉田:ということやな。

倉品:解釈が違うんですよね。僕らは4人でずっと共通の解釈を積み重ねてきているので、独特なものになっているのかなと思いますね。いわゆる、王道にアプローチする感じとはちょっと違うと思うので、そこが持ち味かもしれないです。

取材・文=宮本英夫 撮影=高田梓

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