最新VR作品までを網羅する「雨宮庸介展|音まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」が12月21日~2025年3月30日、『ワタリウム美術館』で開催
現代美術家・雨宮庸介氏の2000年初頭の作品から、『ワタリウム美術館』を舞台に制作した最新VRまでを見通す展覧会「雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」が、12月21日(土)~2025年3月30日(日)、東京都渋谷区の『ワタリウム美術館』で開催される。
最初期の作品から最新VR作品を体感し、パラレルワールドを行き来する
美術家・雨宮庸介の活動の初期から現在までを見通せる本展。2000年初頭の作品に始まり、最新作として本展の設営期間に『ワタリウム美術館』で撮影したVRが展示される。
「話す、語りかける」「イメージを絵の具で描く」「歌や楽器やダンス的要素」など、さまざまなアプローチの作品を通し、“今”と“今ではない時”、“ここ”と“ここではない場所”の境界線を溶かす、パラレルワールドへと誘ってくれる。
雨宮氏は本展での試みをこう語っている。
「今回の展覧会タイトル『まだ溶けてないほうのワタリウム美術館』は『溶ける以前の状態が継続している』という、実はデュシャン以降のアートをアートたらしめている『過去完了』をそっと召喚しようと試みます。同時にこれは、平和にみえる無関心な日常さえもじつは『まだ戦争が起きていないほうの静寂』でもあることを顕在化せんとするものです。
本来『ここではないどこか』に自身をカジュアルに転送するために設計されているはずのVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使用しつつ、むしろ『どこかではないここ』に丁寧に連れ戻し、この世界そのものについて肯定を試み、仮に祝福にまでこぎつけると『この世界』と『この世界』が秘密裡に並走しはじめる。そんな仮説を今読んでいるあなたにそっと耳打ちすること、それこそが僕なりのアートの実践であり本展覧会で試みられることです」(雨宮庸介)
マルセル・デュシャン以降、新たな美術表現はどう存在しているのか。一見シニカルなようで、“今”と“ここ”に対する肯定感に満ちた雨宮氏の作品から、次の景色が見えてきそうだ。
会期中毎週土曜に作家による『人生最終作のための公開練習』を実施
会期中の毎週土曜17~18時に「For the SwanSong2024:雨宮庸介による『人生最終作のための公開練習』」が会場で行われ、雨宮氏の制作現場に立合うことができる。「Swan Song」とは、最終作や絶筆のことを、白鳥が死に際に鳴くことをなぞって表す言葉。当日有効の入場券で自由に参加できる。
関連イベントも開催
1月11日(土)「終電から始発までのトーク『生きているのに走馬灯』」
出演者としてアーティスト・梅田哲也氏と雨宮庸介氏を迎える「終電から始発までのトーク『生きているのに走馬灯』」が23時~翌5時頃、『ワタリウム美術館』で開催。参加費2000円、事前予約制。申し込みは『ワタリウム美術館』1F受付または公式HPの申込フォームから。
3月15日(土)トーク「まだ溶けてないほうの日本または美術」
出演者として美術評論家・椹木野衣氏と雨宮庸介氏を迎えるトーク「まだ溶けてないほうの日本または美術」が19時~20時30分、『ワタリウム美術館』で開催。参加費1000円、事前予約制。申し込みは『ワタリウム美術館』1F受付または公式HPの申込フォームから。
開催概要
「雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」
開催期間:2024年12月21日(土)~2025年3月30日(日)
開催時間:11:00~19:00
休館日:月(1月13日・2月24日は開館)・12月30日(月)~1月3日(金)
会場:ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6)
アクセス:地下鉄銀座線外苑前駅から徒歩7分・地下鉄表参道駅から徒歩9分
入場料:一般1500円、大人ペア2600円、学生(25歳以下)・高校生・70歳以上の方・身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳お持ちの方、および介助者(1名)1300円、小・中学生500円
【問い合わせ先】
ワタリウム美術館☏03-3402-3001
公式HP http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202412/
取材・文=前田真紀 画像提供=ワタリウム美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。