『ある魔女が死ぬまで』声優インタビュー連載第6回:折役・伊藤静さん |実は面白いだけじゃない? 祈の新たな一面が見えた第9話を振り返る
2025年4月より放送中のTVアニメ『ある魔女が死ぬまで』(以下、ある魔女)。電撃の新文芸で刊行中の坂先生によるライトノベルを原作とした作品で、呪いによって余命1年を宣告された見習い魔女・メグと、その師匠である魔女・ファウストが過ごす日々が描かれます。
アニメイトタイムズでは、『ある魔女』に出演するメインキャスト陣へのインタビューを連載形式で更新中。
連載第6回では、七賢人の『英知の魔女』である祈を演じた伊藤静さんから、アニメの第9話までに描かれたエピソードについてのお話をお聞きました。
【写真】『ある魔女』祈役・伊藤静が第9話を振り返る【インタビュー連載第6回】
面白い人と思っていた祈の真面目な一面が見えた第9話
――祈は前回の登場から少し間が空いての再登場となりました。
祈役・伊藤静さん(以下、伊藤):そうですね。収録としても、前回参加させていただいたのが第3話で、久しぶりに参加したらもう第9話になっていて(笑)。ただ、ここまでの台本は読ませていただいたので、話の流れは理解していました。
――第3話の時と比べて、キャラクターへの印象が変化した部分はありましたか?
伊藤:そんなに大幅に変わってはないんですけど、第3話は祈というよりはメグの話だったので、第9話ではより深くキャラクターを理解できたみたいな感覚はありますね。
これは今までの経験によるところだと思うんですけど、祈って結構俯瞰的な目線を持っていて、どうにかしてあげたいという想いはあるんだけど、それはそれとして自分ができること・できないことは冷静に判断するような一面を持っているんですよね。そういう物事への向き合い方は、がむしゃらなメグとの差が結構あるなと。
――結構ドライな面が見えた回でもありました。
伊藤:そうなんですよね。第3話の時は純粋に面白い人みたいな感じでしたけど、今回は大分真面目な面が見えたというか。
――伊藤さんご自身としては、メグと祈のどっちにタイプが近いですか?
伊藤:メグの方に寄り添ってあげたい気持ちはあるんですけど、実際にはやっぱり祈なのかなと。感情としてはメグなんですけど、やっぱり自分が当事者となったなら、できる範囲のことをやるという方に割り切っちゃいますね。
――祈って他人の面倒を見るのが好きなタイプだと思いますが、伊藤さんご自身はどうですか?
伊藤:実は、私は全然見ないタイプです。すみません(笑)。
――ちょっと意外な感じがあります。
伊藤:そう、周りからもなんかそういう風に思われているのか、頼られることは多いんですよ。もちろん聞かれたらできる限り答えるんですけど、あまりそれ以上のことはしないタイプというか。
そもそも私自身が理論よりも感覚タイプというか、言葉で教えるのが苦手な方なので、最初の1、2回くらいは聞きにきてくれるんですけど、それによく分からない感じの返答をしちゃって、もう来てくれなくなる……みたいなことが結構あります(笑)。
――第9話のエピソードについてはどのように感じられましたか?
伊藤:第9話は、メグの「助けたい」気持ちに、結果的に全員が救ってもらった回という印象ですね。
やっぱり強い想いは大事で。もちろん、それだけだと立ち行かなくなることもありますが、ファウスト様も言っていた通り、一度決めたことは貫くことが大切なんだなと。さすが、ファウスト様は良いことをおっしゃるなとも思ってました(笑)。
――収録としては、久しぶりに再会したメグの成長は感じましたか?
伊藤:相変わらず感もありつつ、芯がしっかり強くなっているような印象は受けましたね。何があったのかは知っているものの、やっぱり文字でしか読んでないので、成長していく姿を自分の目で見たかった気持ちあります(笑)。なので、オンエアで見るのがすごく楽しみですね。
――第9話は樹に関連したお話でもありましたが、伊藤さんは何か植物を育てらたりしたことはありますか?
伊藤:あるんですけど、私は枯らします(笑)。昔、観葉植物が欲しいと思って、ベンジャミンを置いていた時期があったんですけど、ベンジャミンって滅多なことじゃ枯れないらしいんですよ。にも関わらず……。
――枯らしてしまったと。
伊藤:そう、なのでそれからは、植物を育てるのは自分には向いてないなと思って。人からいただいた切り花をちょっと生けたりするくらいにして、自分で育てるのは無駄に命を散らして申し訳ないことになりそうなので、止めましたね。
――違った方向だと、子どもの頃とか木に登ったりされたことはありますか?
伊藤:あります……というか、もう子供の頃は大体木の上でしたね(笑)。
駄菓子屋さんで100円分くらいお菓子を買って、近くの公園にあった大きい枇杷の木に登って食べるのが日課でした。枝がいい感じに太くて、軽く寝っ転がれたりもするくらい、すごい登りやすかったんですよ。
でも、最近の木って登らせないようにしてるのか、低いところに枝がないんですよね。たまに衝動的に登りたくなる瞬間があるんですけど、できないようになっているという(笑)。
――言われてみると確かに……。街路樹とかほとんど登れるところないですもんね。でも、子供の頃に登った木とかがなくなってたりするのを見ると寂しくもなります。
伊藤:そうそう。昔あった大きな桜が、ある日切り株だけになっていたり、それから10年くらい経つとその切り株すらボロボロになっちゃったりして。そういうのを見ると本当に物悲しくなりますね。
犬好きの伊藤さんの琴線に触れたのはあの意外なキャラクター!?
――ご自身が出演されていない回も含めて、今までの物語の中で特に印象的だったエピソードはありますか。
伊藤:印象的だったのは、第8話の悪魔崇拝の一家の回ですね。あのラストでファウスト様が助けにくれたところで、台本を読みながらちょっとうるっときちゃいました。
――ファウスト様がああやって出てくるのってかなり珍しいですよね。
伊藤:そうなんですよ。だからこそ、助けにきてくれたことにより感動して。……いや、もちろん私のために来てくれたわけじゃないんですけど(笑)。
その時、まずは自分の手の中にあるものを守ることが大事といったことをおっしゃられていて。欲張って手を出して失敗するような経験は私の中にもあったので、すごく納得できたんですよね。
――キャラクターとしてはどうですか。
伊藤:キャラクターだと、第5話に出てきた狼の……そう、ウーフさんですね。
――なかなか意外なチョイスですね。それはどういったところがポイントに?
伊藤:さっき第8話のファウスト様にうるっとしましたとお話しましたが、個人的には第5話も感動した回で。読み終えた後に気持ちが温かくなったというか、すごい素敵なお話だなって。ずっと会えなかった二人が、メグの頑張りで再会することができて、メグのこともより好きになりましたし、ああいう違う種族同士の恋愛模様はロマンチックさを感じます。
あと、単に私は犬がすごく好きで、獣人も好きなので、それも影響してると思います。恋愛とかじゃなく、ただ純粋にお近づきになりたいです(笑)。
――これまでの収録で印象的だったことはありますか?
伊藤:私の話じゃないんですけど、木の精霊のセレナちゃん(CV.東山奈央)が魔力で汚染された時、さっきまでめちゃくちゃかわいい声で喋っていたのに本当に怖い声で喋るので、その時の落差がもう凄まじくて。
しかも収録中だと、「度合いどれくらいにしますか?」って演技の相談をする時は、また一瞬でかわいい声に戻るのがシュールで、「プロの現場だ」って思いながら眺めていました(笑)。
――祈を演じることについてはいかがでしたか? やっぱり演じやすさみたいなところはあったのかなと。
伊藤:そうですね。祈は割とさらっとした性格をしているのでやりやすいタイプです。意外とクールで深く他人に踏み込みすぎないところや、自分にできる範囲でできる限りのことをやろうとするところとか、共感できるポイントも多くて、演じていて気持ちいいキャラクターでしたね。
――前回の第3話、今回の第9話と、共に少人数での収録だったそうですが、少人数の収録の良さというのはどんなところなのでしょうか?
伊藤:なんか、ごちゃごちゃしない良さ……みたいなのはありますね。掛け合いのところとか、人数が多いと、別に録らざるを得ない場面もあったりしますけど、人数が少ない時はちゃんと一人一人向き合った状態でできるので、より集中できる側面はあると思います。
あと雰囲気自体も違っていて、少人数の時は大人のバーのような空気感もあったりして、それも好きだったりしますね。
でも最終的には現場によるというか、皆が台本だけに集中してて会話がほとんどない時もあれば、ストーリーがめちゃくちゃシリアスでも、休憩中はずっとバカ話してることもあります(笑)。
――『ある魔女』の場合はどうでしたか?
伊藤:青山ちゃんが良い空気を作ってくれていたなと。メグのキャラクターもあると思うんですけど、青山ちゃん自身も色んな人に話しかけにいって、すごく居心地の良い現場だったと思います。
――その青山さんの収録での頑張りというのは、伊藤さんとしてはいかがでしたか?
伊藤:メグの収録って、本当に体力使うんですよね。時間も朝からで大変そうだったので、「頑張れ~」って応援の気持ちで見てました。収録で「わーっ」となった後、終わってちょっとホッとしている青山ちゃんを労うことも、私の密かな楽しみになっていましたね(笑)。
――伊藤さんの目から見てもやはりハードそうだったんですね。
伊藤:もう大変ですね。メグって、感情が急にバーンって上下したと思ったら、次の瞬間にはツッコんでボケてるっていう、1人で何もかもやっているフシがあるので。
演じるところだけじゃなく、座長として現場の空気作りとか、作品にすごくしっかり向き合っていることも分かりましたし、私自身もすごく刺激をもらえましたね。
――『ある魔女』は魔法や魔女が当たり前に存在している世界ですが、魔法や魔女に憧れのような感情を抱いたことはありますか?
伊藤:そりゃあ、魔法はあった方がいいに決まってますからね。私の場合は日々の生活の役に立つくらいの魔法なら欲しいです。火を点けられるとか、ちょっと空が飛べるとか、夜道で明かりを灯せるとか。
逆に、願いを叶えるとか死人を蘇らせるような大それた魔法は、なんか代償も大きそうで使うのを躊躇いますね。ささやかな魔法で良いです(笑)。
――もし『ある魔女』で伊藤さんが生きるなら、魔女にはどんな距離感で接したいですか。仲良くするのか、それとも怖がるのか……。
伊藤:やっぱり、仲良くしてくれるんだったら仲良くしたいですね。
ただ、それは魔女だからというよりは、純粋にその人との付き合いがしたいかどうかかなって。魔法の恩恵に預かりたいから仲良くしたい……みたいなことは、多分あまり考えないと思います(笑)。
でも『ある魔女』の世界って、基本良い人だらけなので、あの世界にもし行けたら楽しそうだなと思いますね。
――それで言うと、ファウスト様なんかはまさにお付き合いしてみたい人柄ですよね。
伊藤:そうですね。話していて人生の学びもたくさんありそうですし、特に40歳を過ぎてから、そういう人がいてくれるありがたみをようやく理解できるようになった気がします。私もメグみたいに若かった頃は、何かを言われた時になかなか良いようには受け取れなかったですね。
――物語もクライマックスに差し掛かる中、放送を楽しみにされているファンの方へのメッセージをお願いします。
伊藤:メグとファウスト様の過去など、話がどんどん核心に近づいていくタイミングなので、その中でメグがちゃんと嬉し涙を集められるのか、ご注目いただきたいです。
祈も再登場して、いろいろ活躍していくのではないかと思いますので、これからの展開をより楽しみにしていただければ嬉しいです。
――ありがとうございました。
[取材・文/米澤崇史]