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新たなおでん種専門店『人形町光縁 足立江北店』がオープン!大正14年からの技とこだわりの詰まった練り物を

さんたつ

【東京おでんだね】人形町光縁(足立江北店)_1

足立区江北で、新たなおでん種専門店『人形町光縁(こうえん)』の足立江北店が営業を開始した。近日、本店も日本橋の人形町にオープンする。『人形町光縁』は大正14年(1925)から荒川区町屋でかつて営業していた「港屋かまぼこ店」が前身であり、熟練の技とこだわり抜いた素材を存分に詰め込んだ練り物の数々を楽しめる。日本橋人形町にオープンする本店に先駆けて、工場(こうば)を併設する足立江北店が2025年5月26日に開業した。

大正から続く手づくりの味を楽しめる『人形町光縁』(足立江北店)

場所は荒川にほど近い足立区江北の住宅地、緑豊かな江北平成公園の近くに『人形町光縁』の足立区江北店がオープンした。

『人形町光縁』はさつま揚げなどの練り物やおでんを中心とした飲食店で、足立区江北店では製造と販売、イートインスペースを併設する。本来は工場(こうば)のみの予定だったが、物件が広かったため飲食できる場所もつくったのだそうだ。

『人形町光縁』の店主のご一家は、かつて荒川区町屋で「港屋かまぼこ店」というおでん種専門店を営業しており、その3代目店主であったお父さまが現在練り物づくりを行っている。

「港屋かまぼこ店」は大正14年(1925)に開業した歴史あるおでん種専門店で、初代から東尾久や千住といった荒川区周辺で営業していたという。埼玉県の川口や鳩ヶ谷にも同名の店舗があるが、両店ともに親戚筋ということだ。

お店に入るとカウンターやテーブル席があり、ゆったりと食事を楽しめる。メニューはおでんや練り物のほか、きし麺など麺類やすり身を使った魚カツバーガー、酒類も揃う。

さつま揚げは通常14種類が揃うが、季節限定の商品もつくられる。訪れるたびに異なる味わいを楽しめるのはうれしいところだ。化学調味料や保存料、着色料やブドウ糖などは一切使わず、つなぎも最小限にしている。

店舗で調理するおでんはミネラル豊富な水と不純物を除去した天然の天日塩を使用し、北海道産の日高昆布を使用するこだわりようだ。暑い時期は冷やしおでんとして販売しているので、季節問わず楽しめる。

筆者が注目したのはしゅうまい(焼売巻)と、えび巻き(天然ブラックタイガー)の大きさだ。このふたつは子供の頃に憧れたごちそうのおでん種であり、このボリューム感は見ているだけでわくわくする。「せっかくつくるのだから、最高のものを提供したい」という思いから、このサイズになったのだそうだ。

もう一点、町屋の「港屋かまぼこ店」といえばフライ揚げが注目される。フライ揚げは南千住界隈では「にくまん」という名称で親しまれていた。『人形町光縁』で製造しているものはフライ揚げが生まれた戦後当時の味や食感そのものだ。

店主のお父さまは中学生くらいの頃から「港屋かまぼこ店」で修業に励み、現在も十数年のブランクを感じさせない技とこだわりで練り物をつくり続けている。『人形町光縁』(足立江北店)のInstagram(@coen.adachikohoku)でも冴えわたる技の数々を確認できるが、訪問した際は工場まで案内していただき、擂潰機(らいかいき)のお話を聞かせていただいた。

擂潰機は杵と臼を使って魚のすり身を擂(す)る機械だ。臼はステンレスのものもあるが、すり身のキレにこだわり石臼を使用しているという。さらに回転速度を変える変則装置を新たに取り付け、日々変わる室温や湿度、すり身の状態などに対応しているという。「ちょっと間はあいちゃったけど、意外と勘は鈍っていないもんだよ」と笑っていたが、練り物に対するこだわりは昔ながらの職人そのものだと感じた。

人形町の本店は近いうちにオープンする予定だ。目抜通りの甘酒横丁に店舗を構え、2階席もあるという。筆者ももちろん訪問したいと思っている。

『人形町光縁』(足立江北店)のさつま揚げを味わう

お店の方々に興味深いお話をうかがいつつ、複数種類のさつま揚げを購入した。

今回手に入れたのは10種類。時計回りに12時から、フライ揚げ、みやこ揚げ、うずらばくだん、カレーボール、4種串、いかボール、無農薬いんげん、しゅうまい(中央上)、しいたけ揚げ、えび巻き(天然ブラックタイガー)。

購入した際に添えてくれたリーフレットによると14種類があることがわかるが、実際にはもっと多くのさつま揚げが揃う。季節や日によっても異なるので、Instagram(@coen.adachikohoku)などをチェックしてお店をのぞいてみるといいだろう。

『人形町光縁』のさつま揚げはスケソウダラとイトヨリダイのすり身を用い、つなぎは最小限にしている。はじめて食べたお客さんのなかには「さつま揚げの概念が変わった」と感想を伝えてくれる人もいるそうだ。

イートインでおでんとして提供する際は長い時間煮込まず、オーダーが入ってから温める程度にしている。おでんにせず、すこし炙ってから生姜醤油などをつけて食べると、練り物本来のおいしさを堪能できるだろう。

それでは、一品ずつ紹介していこう。えび巻は非常に大きな天然のブラックタイガーを贅沢に使用している。ふっくら、ぷりっとした食感が楽しめるだけでなく、すり身との相乗効果でふくよかな味わいを楽しめる。

しゅうまい(焼売巻)もかなり大きな焼売を使用しており、箸で持ち上げた感触もかなりのものだ。挽き肉がぎゅっと詰まっており、食べたときの満足感は「おでん種の王様」と称してもいいだろう。

フライ揚げは魚のすり身に衣をつけて揚げたおでん種。すり身にはほかの具材は入っておらず、昔ながらの素朴な味わいとなっている。加える澱粉や水でのばすのは最小限にして、もっちりとした食感を生み出している。

おでんにすると衣がふやけ、とろけるような味わいを楽しめるが、フライパンなどで炙ってすこし焦げ目をつけると香ばしく、酒のつまみにもなる。

カレーボールも東京の下町を代表するおでん種だ。一説では千葉県銚子あたりが発祥ともいわれるが、東京ローカルといえるだろう。カレーのスパイシーさと玉ねぎの甘み、魚のすり身のまろやかな味わいが調和し、いくつでも食べられる。

みやこ揚げは刻んだ人参や玉ねぎ、切り昆布が入っている。野菜の甘みと香り、昆布の食感に個性を感じつつ、上品な味に仕上がっている。このような野菜中心の具材がいろいろ入った揚げ蒲鉾を「利休揚げ」と呼ぶことが多いが、みやこ揚げという名の由来をうかがったところ「先代からそう呼んでいたので由来はわからない」とのことだった。

無農薬いんげんはみやこ揚げと見た目が似ているが、インゲンのきゅっとした食感と鮮やかな香りが存分に感じられる。すり身のふわりとした歯触りが心を和ませる。名前の通り、インゲンは無農薬のものを使用しているが、例えばしょうが揚げは自家製の赤酢と新生姜を使い、ウインナー巻きには新潟県産の豚肉と天然羊腸の無添加ウインナーを用いるなど、すべての商品にこだわりが詰まっている。

しいたけ揚げはころんとした形状がかわいらしい。ひと口で食べられるように小ぶりのシイタケを用いているが、肉厚のためぎゅっとシイタケの魅力が詰まっている。魚のすり身も厚めに成形されているので、シイタケとすり身のおいしさを同時に楽しめる。

うずらばくだんはいわゆるうずら巻(巣篭もりともいう)だが、うずら卵がすべてすり身に隠れた「バクダン」と呼ばれる形状をしている。この形は他店ではあまり見られず珍しい。鶏卵とは異なるうずら卵のやさしく上品な味わいを堪能できる。

いかボールは刻んだイカがたっぷり混ぜ込まれているので、噛めば噛むほど旨味があふれ出してくる。すり身との相性も抜群で、酒のつまみとして生姜醤油やからしなどをつけて食べてもおいしい。

4種串はカレーボール、つまみ揚げ、イカボール、コーンのさつま揚げを一度に味わえるお得な商品だ。食べ歩きなどで楽しんでもいいだろう。おそらく種類の組み合わせは時期によって変わると思うので、毎回購入して異なる味を楽しむのもおもしろいだろう。

工場(こうば)を見学させていただいた際に、さつま揚げだけではなくはんぺんづくりも視野に入れていると教えていただいた。はんぺんは東京を代表する練り物であり、手づくりしている店舗は数軒ほどしかなくなってしまった。ぜひ商品として販売してほしいところだ。

近年、東京のおでん種専門店が姿を消しつつあり、昔ながらの手づくりの練り物が手に入りにくくなっている。こうした背景のなかでふたたび練り物づくりを復活させ、飲食店として多くの人々にその味の素晴らしさを伝えようとしている『人形町光縁』には大きな期待を寄せている。人形町本店のオープンも含めて、懐かしい味わいと新たな挑戦の数々を楽しみにしたいと思っている。

『人形町光縁 足立江北店』の基本情報

人形町光縁 足立江北店
東京都足立区江北4-7-26
050-5799-9273
定休日:日・月
営業時間:11:00~18:00
Instagram:@coen.adachikohoku

取材・文・撮影=東京おでんだね

東京おでんだね
東京のおでん種・蒲鉾・練り物の魅力を紹介
「おでん種やさんでおでんを買って、家で調理して食べる」文化を盛り上げるべく、都内各地を奔走中。ビジネスでなく趣味でちまちま活動しています。

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