【特集】新潟こころの発達クリニック(新潟市中央区)臨床心理士、緑川ほのかさん 「発達障害の特性に寄り添う心の専門家」青陵大学卒業生を追う
緑川ほのかさんは新潟市出身。新潟青陵大学大学院 臨床心理学研究科卒業。現在は新潟こころの発達クリニックに臨床心理士として勤務
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初回掲載:2025年7月9日(再掲載:7月20日)
2006年に7,000人余りだった発達障害の児童数は、2019年には7万人を超えるまでに増加(文部科学省調べ)。これは発達障害の概念が広がったことで、診断がおりるケースが増加しているためと言われている。だが、それだけ発達障害という特性に向き合う子どもとその家族が増えていることは間違いないだろう。
そんな発達障害に悩む人たちに寄り添う新潟初の専門クリニックが、2014年に開院した「新潟こころの発達クリニック」だ。現在毎月約2,000人のクライエント(患者)に対して発達障害やそれに伴う二次障害の診断、治療、支援を行っており、医師と共に支援を行う臨床心理士の一人が、2020年に新潟青陵大学大学院 臨床心理学研究科を卒業した緑川ほのかさんだ。
新潟中央IC近くに位置する新潟こころの発達クリニック(新潟市中央区)。臨床心理士は6人在籍しており、これほどの人数の心理士が勤務している個人クリニックは非常に珍しい
発達障害に悩む人の人生に伴走する心の専門家
入職して6年目の緑川さん、発達障害もしくは発達障害の疑いがある方や精神的な辛さを抱える子どもの検査やカウンセリングに奔走する日々に「まだまだですが、最初は難しさを感じていた複数の検査を取って所見をまとめる業務で、検査を受けた方の全体像が少しずつ見えるようになってきたかなと思います」と控えめながら、成長を実感している。
実践的な対人援助を行う臨床心理には、カウンセリングを重ねる中でクライエントの変化を一緒に感じていけるやりがいがあるそうで、これまでには自分を責めるような思考だったクライエントが柔軟な考え方に変わっていった経験も。自らが選んだ道に確かな手応えを感じている。
「発達障害は早期から関わることが非常に重要なので、その部分に携われているところにもやりがいを感じますね」(緑川さん)
大学院でカウンセリングも実践し、資格を取得
一歩一歩丁寧に臨床心理士としてのステップを踏んでいっている緑川さんが、現在の働きの素地を作ってくれたと振り返るのが、新潟青陵大学での学びだった。大学および大学院での6年間で、特に発達心理やアセスメントの知識、そしてその知識がどのように生かされるかを実習で徹底的に身につけた。
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部(新潟市中央区)
新潟青陵大学大学院 臨床心理学研究科は、(公財)日本臨床心理士資格認定協会による臨床心理士養成指定大学院(第一種指定校)及び国家資格である公認心理師資格取得のための科目に対応した大学院であり、併設の臨床心理センターで実際にクライエントに対してカウンセリングを行い、指導を受ける実習「スーパービジョン(以下、SV)」が大きな特徴の一つになっている。
大学敷地内に併設されている、新潟青陵大学大学院附属臨床心理センター
同センターの様子。SVではできない自分と向き合う辛さも感じたが、苦手を把握し学びに変えていく力を養うことができた必要な時間だったと緑川さんは振り返る
専門の資格を取得して働きたいという目標を入学時から持っていた緑川さんにとっては、まさにぴったりな学舎だった。さらに青陵ならではの心理以外の学びも、緑川さんに大きな影響を与えている。
緑川さんは、新潟青陵大学 福祉心理学科(現在は福祉心理子ども学部 臨床心理学科)で大学時代の4年間、専門科目について学んだ。「福祉と心理の両方を掛け合わせて学ぶことができて、精神保健福祉士の資格も取得しました(現在、臨床心理学科では取得不可)。この両方の分野を学べたことが私の力になっています」(緑川さん)
目指す専門性を見出すことができたアルバイト経験
その大学院生時代に、アルバイトに入ったのが新潟こころの発達クリニックであり、この時の経験がその後の緑川さんの進路を決定づけることになった。
「元々医療機関で働きたい希望はありましたが、ここでアルバイトをさせていただいたことで、発達障害や児童精神という分野にとても興味を持つようになりました」(緑川さん)
その時の働きぶりは「最初から子どもの目線にかがんで話しかけていたり、検査結果をまとめるレポートも非常にわかりやすくて優秀で」と遠藤太郎院長の目に留まるところとなり、2020年に就職することが決まった。
新潟こころの発達クリニック院長の遠藤太郎先生
それから6年、冒頭で「まだまだですが」と緑川さん自身は謙遜していたが、その頑張りは周囲も認めるところだ。
「かなり忙しい現場で最初は特に戸惑いや迷いもあったかと思いますが、あまり周りにその不安を感じさせずに安定した様子で頑張って仕事をしてくれています。勉強熱心で積極的に研修や講習にも参加して、診療にフィードバックしてくれます。青陵からは緑川さん以外にもアルバイトや就職で入職してもらっていますが、きちんと検査を行ってくれて教育がしっかりされている印象です。今まで問題になったことも一度もなく、本当にありがたいです」(遠藤院長)
少人数制の指導による濃い学びと、育まれた「面白さ」の感性
実は、新潟こころの発達クリニックのアルバイトに入ったきっかけが、緑川さんの大学院時代のゼミの担当教授だった浅田剛正教授からの紹介だった。
新潟青陵大学大学院 臨床心理学研究科・新潟青陵大学 臨床心理学科長の浅田剛正教授。「学ぶ上で大事なことは『人と関わりながら学ぶこと、自分で体験すること、楽しむこと』。自分の心が実際に動くものをキャッチするセンスを大切にすることで、学ぶ力や専門家としての力がついていくのだと思います」
「緑川さんは学部生の時から、大学院に進んで心理の専門職としてキャリアを築いていきたいという力強い意志を持っていたのが印象的でした。大学院では私のゼミに所属していましたが、とても優秀かつ謙虚。努力や迷いを外に出さずに研究を進めていたので、相談を受けたことは数えるほどでしたが、その姿勢は専門家向きだと当時から感じていました。人間関係にすごくやわらかい視点を持っていて、それも今の仕事に生かされているのだと思います」(浅田教授)
新潟青陵大学大学院の臨床心理学研究科では、1学年10人・総勢20人の定員に対して9人の専任教員が指導にあたるという、非常に緻密な指導が行われている。
新潟青陵大学 臨床心理学科の卒業生は、緑川さんのように医療機関をはじめ、教育領域や福祉領域を中心に、一般企業も含めて幅広い分野で活躍している
なかでも新潟青陵大学 臨床心理学科長も務める浅田教授は、心理療法の中で用いられるイメージ・表現技法や臨床心理士の成長を専門としており、緑川さんは「浅田先生には日常の中で見出す面白いことから研究テーマを導くことを勧めていただいて、従来紙と鉛筆で行う検査をデジタルデバイスに置き換えた場合の差異について研究していました。手厚く研究を見てくださっただけでなく、大学に生えていた変なキノコの話を面白がってくれるなど、特に『面白さ』を大切に、柔軟に受け止めてくださった先生です」と、研究の忙しさなかにもオリジナリティとユーモアを大切にされてきた環境を懐かしんだ。
心理療法の一つ「箱庭療法」。「臨床心理学科は何をやっているか分からない、というイメージの人が多いと思います。簡単に分かってしまってはつまらない、むしろその『分からない』感覚を楽しめる人をお待ちしています」(浅田教授)
後輩に、クライエントに、頼りとされる臨床心理士へ
「病院の精神科、というとハードルを感じる方も多いと思いますが、ここへは『気軽に相談しやすい町のクリニック』という感覚で来てもらえれば」と遠藤院長
これから新潟こころの発達クリニックでは、新人が入職する予定ということで、遠藤院長からは、頼れる先輩として新人の指導やサポートの力になってほしいと期待をかけられている緑川さん。さらにこれからもっとクライエントの役に立てるよう、いろいろな視点や知識を深めていきたいと語る姿には、落ち着きの中にもプロフェッショナルとしての意志の強さと、丁寧に積み上げてきた軌跡が確かな力になっていることが伝わってきた。
確かな知識も技術も、ベースにある人柄があってこそ。緑川さんの“総合力”は、今後ますます特性に悩む人と家族の心と生活をより良いものへと導く、かけがえのない力になっていくだろう。
(インタビュー・文 丸山智子)
【学校情報】
住所:新潟市中央区水道町1丁目5939番地
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部 Webサイト
新潟青陵大学は2000年に開学し、新潟県初の看護、福祉、心理系の大学として1学部2学科を開設した。現在は看護学部看護学科と福祉心理子ども学部社会福祉学科・臨床心理学科・子ども発達学科の2学部4学科で構成されている。大学院臨床心理学研究科は、2006年に開設して以来、約20年にわたり心理臨床実践力を身につけた専門職を毎年輩出している。
【関連情報】
新潟こころの発達クリニック Webサイト
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