Jリーグクラブが山口県の体力を向上させる!子ども・地域の未来をつくるプロジェクトとは?|レノファ山口FC×山口県×明治安田
文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」によると、ほとんどの体力テスト項目において、子どもの世代が親の世代を下回っているそうです。
身長・体重などの体格が向上しているにもかかわらず、体力・運動能力が低下していることは、身体能力の低下が深刻な状況であることを示しています。
この課題を解決するために、新たな取り組みに挑戦した山口県教育委員会。サッカー・Jリーグ レノファ山口FCとタッグを組み、昨年より「プロスポーツチームとの連携による体力向上推進事業」を始めました。
この取り組みは子どもの体力を向上させるだけでなく、新たな学びの場として、コミュニケーションの一環として、そして親世代の健康促進としても効果を発揮しているそうです。
子どもの体力を向上させるだけでなく、社会全体の活力へも繋がるプロジェクト。
このプロジェクトの背景や成果をお聞きするべく、今回は山口県教育庁学校安全・体育課 学校体育班 指導主事の有田敏広様(以下、有田)にお話を伺いました。
目指すは、子どもの体力向上
ーーレノファ山口FCさんとの「体力向上推進事業」が立ち上がった背景を教えてください。
有田)令和5年の2月に「体力向上維新プロジェクト」という県全体での体力向上に向けた取り組みがスタートしました。このプロジェクトは子どもたちの体力の向上や、運動習慣の改善・定着を図ることを目的として発足したものです。そして、その事業の一環として令和6年度から新たに始まったのが『プロスポーツチームとの連携による体力向上推進事業』であり、そのパートナーとしてJリーグクラブであるレノファ山口FCさんと一緒に取り組んでいます。
具体的な取り組みとしては、体育の授業で行う準備運動など、基礎となる運動を充実させていこうと、県内の小・中学校に推進をしています。
体力の課題と言っても学校によってさまざまです。県全体で見たときの課題と、それぞれの学校ごとに分析した課題とでは出てくるものが異なるからこそ、学校の課題に応じた取り組みをしっかりしてもらうための支援にも力を入れています。
ーー地域の教育課題としては、体力向上以外にもさまざまな課題があり、多くのことに取り組まれていると思います。「体力向上」という点にとくに着目されたのにはどのような理由があるのでしょうか?
有田)2点あります。
1つ目は、毎年行われる全国体力調査で令和4年度まで子どもたちの体力が減少傾向にあるという結果が出ているということです。コロナ禍で体育の授業が十分に実施できない運動制限や、外で自由に遊ぶことができない活動制限が減少の理由の一つとして挙げられます。この数値を増加させるためにも、子どもの体力向上は必要であると考えました。
2つ目は、子どもたちが将来健康で豊かに生きていくために「体力」が必要不可欠な要素であるということ。単に体が強いとか丈夫ということではなく、将来的に健康でより良く生きていくための力を教育現場で身につけさせることが重要だと考えています。
ーー今回の体力向上維新プロジェクトにおいて、レノファ山口FCさんと連携しようと思った理由を教えてください。レノファ山口FCさんについて、どのような印象を持たれていますか?
有田)レノファ山口FCさんは、地域に根ざした活動を積極的に行っているクラブです。地域ごとにホームタウン担当選手を置いたり、運動教室を開催したりする中で、子どもたちとの関わりや指導にも慣れていると感じました。また、山口県のプロスポーツチームの中でもスタジアムで大勢の観客を集めている様子から、子どもたちだけでなく、地域や保護者まで深く根付いている非常に温かいクラブだなと感じています。
プロスポーツチームと連携する価値
ーー実際にレノファ山口FCの選手が参加する体力テストをご覧になって、どう感じられましたか?
有田)子どもたちはとても楽しそうにしていましたね。やはり、選手がいるのといないのとでは楽しさも大きく変わってくると感じました。「記録が伸びた!」など、笑顔を見せながら一生懸命テストに取り組む姿を見ているとこちらまで嬉しくなります。
選手もはじめは緊張しているようでしたが、慣れると選手の方から子どもたちに積極的に声をかけてくれていましたし、学校側の工夫もあり、授業の終わりには子どもと選手との距離感もグッと近づきとても良い雰囲気でした。以前より本当に楽しそうに取り組んでいる子どもたちの姿や、より一生懸命取り組むことができている姿を見て、このプロジェクトをやって良かったと心から感じました。
なかにはスポーツが苦手な子もいますが、そんな子たちも巻き込んでいくきっかけ作りにもなっていました。「今日はちょっと頑張ってみよう」と思ってくれるだけではなく、「プロの選手ってこんな風に身体を動かしているんだ」と身体の使い方に気づくきっかけにもなっていたので、この点も選手を派遣する一つの大きな意義になりました。
ーー今後の取り組みや、子どもの運動機会への繋がりはどのように考えられているのでしょうか。
有田)今年度は県内の10の学校をモデル校として試験的に進めていますが、2学期以降も継続して選手の派遣を続けていきます。年間を通じて選手と関わりながら、運動習慣の改善や体力向上に繋げていけたらと考えています。
また、子どもたちにより運動に親しみを持ってもらうために、今後はレノファ山口FCのホームゲーム観戦も計画しています。スポーツに触れる機会を通して、「もっとサッカーの試合を観てみよう」「サッカー選手になりたい」「他のスポーツの試合も観てみたい」など、子どもたちのスポーツに対する興味関心が広がっていけば良いなと思っています。
運動の習慣化だけでなく、「スポーツを観戦する」などさまざまな関わり方でスポーツが子どもたちの生活の中に根付いていくと良いですね。
ーーこれから新たに取り組んでいきたいと考えていることはありますか?
有田)現在このプロジェクトを実施している10のモデル校だけでなく、山口県全体に普及していきたいと考えています。レノファ山口FCの選手に協力してもらって運動動画を作成するなど、小・中学校やご自宅で活用できるようなコンテンツを作っていくことで、運動習慣の定着や体力の向上、運動好きな子どもたちの育成普及にさらに深く入り込んでいきたいです。
地域、社会へと広がる影響の輪
ーー今回のプロジェクトはレノファ山口FCさんだけでなく、明治安田生命保険相互会社さんとも包括連携協定という形で連携されています。そういった民間企業の協力に関してはどのように考えられていますでしょうか。
有田)外部のプロスポーツチームや企業さんと連携することによって、社会全体への広がりやインパクトが生まれると実感しています。私たちには持ち得ないようなリソースを持つ人々との繋がりが生まれ、その企業の一つが明治安田生命保険さんです。例えば明治安田生命保険さんが提供する『健康チェック』は、地域の方や保護者の方が体力テストを受けている子どもたちの様子を見に来られた際に、一緒にご自身の健康測定を行うことができます。
こうした協力によって、子どもたちの体力の向上はもちろん地域住民の健康促進も担うことができ、プロジェクトがもたらす影響力も非常に大きくなります。このプロジェクトや企業さんとの連携を通して、山口県全体がもっと元気になっていけば良いですよね。
ーー体力向上推進事業について、有田さんはどのような期待を込められていますか。
有田)この事業を通して、子どもたちの体力向上や運動習慣の改善ができるのはもちろんですが、身体を動かすことが好きな子どもたちがもっと増えてくれたら嬉しいなと思っています。
そのためには子どもたちだけでなく、ご家族の方や地域住民の方の意識も啓発しながら、学校や家庭や地域が一体となって進めていく必要があるんです。
その切り口として、プロスポーツチームとの連携は大きな意義があると思っています。このプロジェクトを通して、子どもたちから地域、そして社会全体へ影響の輪を広げていきたいです。
ーーありがとうございました。