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80年代ファン必携の書『ビートルズ・フォーエヴァー』|ビートルズのことを考えない日は一日もなかったVOL.23

Dig-it[ディグ・イット]

1982年のデビュー20周年特需はレコード業界だけではなかった。その影響は出版業界にも及び、この年はビートルズ関連の魅力的な出版物が数多く刊行された。当時わたしは高校1年、小遣いとバイト代によって捻出されていたビートルズ費は主にレコードに当てられていたが、この年出た書籍は気になる内容のものが多く、そのなかのいくつかを購入した。

未発表写真をメインに添えた豪華本

『ビートルズ・フォーエヴァー』の表紙

まずは、『シャウト・ザ・ビートルズ』。ハンター・デイヴィスの『ビートルズ』以来の濃い伝記ということで、発売前から話題となり、多くのメディアで取り上げられた書籍であった。高価本ゆえすぐに購入することはできなかったが、コンプリート・ビートルズ・ファンクラブの会報で良書と紹介され、「それまでの定説であったジョンとポールが初めて会った日を57年7月6日と訂正した意義は大きい」と評価されていた。確かに『ビートルズ』を読み返してみるとジョンとポールが出会ったのは56年とあり、さらに『これがビートルズ』まで遡ると55年とされていた。ビートルズの歴史が調査と研究によって訂正されていくことを知った最初であった。

『シャウト・ザ・ビートルズ』の発行元だったCBS・ソニー出版が同じ年刊行した書籍で忘れられないのがビートルズゆかりの地を紹介した『ビートルズ・イングランド』という観光書。海外旅行なんて夢のまた夢だった時代、この本に載った写真を見て、まだ見ぬイギリス・ロンドン、リヴァプールに思いをはせ、アビーロードを横断する自分を夢想した。後に出た『ビートルズの歩き方』に比べると情報も少なく、情報誤認もあったりするが、同書で特筆すべきは写真の素晴らしさで、91年に初めて渡英した際は同書を持って同じ構図で写真を撮ったりしていた。

続いては、前回テーマにしたビートルズ・シネ・クラブが編集を手掛けた『ビートルズ・フォーエヴァー』。未発表写真をメインに添え、ビートルズの歴史やディスコグラフィで構成した豪華本である。発売前からの大々的な宣伝展開が、購買意欲をかり立たせ、発売日に神保町の三省堂で購入したことをよく覚えている。買った日から毎日のように眺め、読みふけっては情報を頭の中にインプットしていた。80年代ファン必携の書という意味では、80年代の『ビートルズ事典』といった存在かもしれない。発売元が旺文社ということもあるのか参考書的な存在だった。

世界初公開写真で構成された驚きの写真集

『ジョン・レノン家族生活』

そしてこの年ビートルズファンの間で最も話題をさらった出版物といえば『ジョン・レノン家族生活』だろう。ハウスハズバンド時代の家族生活を収めた写真集ということで発売前から期待値は高く、これも発売日当日に神保町の三省堂で購入した。今まで見たことのない写真と普段着のジョンの、つきものがとれたような穏やかな表情に驚いた。かつてのカリスマのオーラは感じられず、どこにでもいる父親の姿が印象的。また、日本で撮影された写真も見どころのひとつで、その中の上野動物園での写真は自分も何度か行ったことのある場所だったゆえ、否応なしにジョンを身近な存在に感じさせた。版元は角川書店。そういうこともあって、この写真集の中の1枚が創刊間もない『ザ・テレビジョン』の表紙に使われたりしていた。

メンバー関係の書籍ということではマイク・マッカートニーが書いた『素顔のマッカートニー』が出たのもこの年のこと。ポールの実弟の著作ということでタイトル通りの貴重なエピソードが多く書かれているのだが、構成の問題か、マイクのひねくれた性格による文章の癖の問題か、それによる翻訳の難しさなのか、文章が読みづらく内容が頭に入ってこなかった。断片的に読めば貴重な内容が満載なのだから実にもったいない。
実はこの本、今手元にあるものは発売されてから間もなくしてビートルズ友達だったHくんから「自分はもう読んだからあげる」と譲ってもらったもの。それはきっともう読んだからだけではなく、今ひとつおもしろくないからという理由だったのではないだろうか。その感想は最近手に取り読み返してみても同じだった。

人生初のエレキギター、グレコのテレキャスター購入

読みやすくておしゃれな装丁の『ザ・ビートルズベスト曲集(コピー&タブ譜)

書籍は読み物や写真集だけではない。この年は楽譜についても特筆すべきシリーズが発売になった。もちろんそれまでもビートルズ関連の楽譜は多種刊行されていたが、この年登場した『ビートルズ ベスト曲集(コピー&タブ譜』は、イントロまで含めたリードギター完全コピータブ譜というのが売りで、コード弾きができるようになった初心者に毛が生えたプレイヤーたちにとってはとてもありがたい内容であった。コードの押さえ方表とタブ譜が見やすいというのがよかった。かくいうわたしは前年夏に初めてアコギを購入したものの、うまく弾くことができず、ほこりが被ったままになっていたが、ある日突然コードを押さえられるようになり、少しずつギターが手に馴染んできたタイミングで手にしたのがこの楽譜だった。「イエロー・サブマリン」をどうにか練習していたら指が動くようになったことを覚えている。

練習を重ねリードが弾きたい欲が高まるとともにエレキギターが欲しくなり、明けて83年の1月、ついに購入を決意。アドバイザーとして中学校時代の友達、わたしのギターの先生でもあるKKくんに付き添いをお願いしてお茶の水に出かけることにした。最初に入店したのは明大通り沿いにあったイシバシ楽器で、購入機種は決めていなかったのだが、すぐに目にとまったグレコの茶色いテレキャスターTD500に一目惚れしてしまい、即購入の運びとなった。なぜその機種だったのかというと、ジョージが映画『レット・イット・ビー』のルーフトップコンサートで弾いていたものと似ていたから。

よく見ると全然違うし、KKくんは「グレコよりもTOKAIのテレキャスターのほうがジョージのやつに似ているんじゃない?」と言っていたとのことだが、気持ちが高揚していたのか、耳に入っていなかった。それでも人生初のエレキに興奮し、家に帰ってすぐに試奏。同時購入したグヤトーンのアンプに二台のギターをつないでKKくんと「ザ・ナイト・ビフォア」を演奏したことは今も忘れられない。

グレコのカタログより。右がテレキャスターTD500

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