イクラ、キャビア、カラスミ……おいしくて美しい魚卵たち どれがどの魚の卵かわかる?
キラキラと輝く海の宝石「魚卵」。お寿司やパスタの上に乗っているだけで、ちょっと贅沢な気分になりますよね。
では、イクラ、キャビア、カラスミ……それぞれ何の卵か知っていますか? また、イクラがきれいなオレンジ色をしているのはなぜなのでしょう。
日本で親しまれている魚卵の名前や色についてまとめてみました。
王道の魚卵<イクラ>
「イクラ」は、みなさんご存知サケの卵。語源はロシア語で魚卵を意味する「икра(イクラ)」が語源です。
スジコは一見して別の魚の卵のように見えますが、卵巣膜付きの状態のイクラを「スジコ」と呼びます。
イクラはオレンジ色をしていますが、これは天然の色素アスタキサンチンの影響。エビやカニ、オキアミなどに多く含まれており、サケがこれらを食べることで、卵にも色がつくのです。
また、マスの卵も「イクラ」や「鱒イクラ」などと呼ばれ、こちらはサケの卵より少し小さいのが特徴。飲食店のメニューをよくみてみると、時々「当店のイクラは鱒イクラを使用しています」といった注意書きが見られることもありますよ。
なお、ヤマメの卵は「黄金イクラ」と呼ばれていますが、これは川魚でアスタキサンチンが含まれている餌をとらないことで、黄金色をしていることが理由です。
ご飯のお供の代表格<タラコ>
「タラコ」はスケトウダラの卵巣のことで、それを辛子漬けにしたものが明太子です。朝鮮語でスケトウダラを意味する「ミョンテ(明太)」が名前のルーツです。
ちなみに、見た目が似ている「数の子」はニシンの卵。 一腹に数万個もの卵があるといわれています。卵の「数」が多いため、数の子と呼ばれるようになりました。
料理の飾り付けにも使用される<トビコ>
「トビコ」はトビウオの卵を塩漬けしたもの。トビウオの子だから“とびこ”と呼ばれています。
ちなみに、「とびっこ」は水産加工会社・かね徳の商品名(登録商標)です。
料理を華やかにする飾りつけとして使われることもあり、加工段階で着色されることが多いようです。本来の色はもう少し薄い色をしています。
世界三大珍味の一つとも言われる<キャビア>
「キャビア」はチョウザメの卵。トルコ語で「魚の腹子」を意味する「khaviar(カハービヤ)」が語源となっています。
キャビアの色は黒やグレーがかっていますが、これは自然の中で目立たないようにするためといわれています。
チョウザメは暗い場所で産卵するため、保護色となる黒っぽい色をしているわけですね。
高級食材<カラスミ>
「カラスミ」はボラの卵巣を塩漬け・乾燥したものです。
昔は保存状態があまり良くなかったため黒く変色することが多かったといいます。その色が、唐の墨の色に似ていたことから「カラスミ」と名付けられました。
イタリアでは「ボッタルガ」と呼ばれ、地中海料理などでよく使われています。もともとはやや黄みがかった卵ですが、乾燥させる過程で熟成が進み、色が濃くなり飴色へと変化していきます。
「キャビア」も「カラスミ」も高級な魚卵として有名ですが、どちらも希少で大量に手に入れることができないというのが理由。チョウザメは成熟するまで時間がかかり、ボラの卵巣が採れる時期や地域が限らています。
「ブリッ」と音が鳴る<ブリコ>
秋田県の郷土料理として有名な「ブリコ」はハタハタの卵。
塩や味噌に漬けて保存すると表面の粘液が硬化し、ゴムのような食感に。これを食べると「ブリッ」と音が鳴ることからブリコと呼ばれるようになりました。
ハタハタの卵(提供:PhotoAC)
ブリコは実にカラフルで、「虹色」と表現されることも。胆汁色素とビタミンA2アルデヒドが混ざると緑になりますし、これにカロテノイド系色素が加わると赤っぽい色になります。成熟度合によって色は濃くなっていくので、同じ緑でも薄緑のもあれば濃い緑もあるようです。
普段なんとなく口にする「命のかたち」
海の生きものたちの命のかたちが、こんなにも多彩で個性的だったとは気づかずに味わっていたという人も多いのではないでしょうか。
イクラやタラコ、数の子といったお馴染みの食材も、その由来や色の違いに目を向けると、実は奥深い存在なのです。
(サカナトライター:こやまゆう)