蒼井翔太「薺」インタビュー――花言葉は"私のすべてをあなたに捧げます"。大切な人を想う強い気持ちを「薺」に込めて
──新曲「薺」は、とても素敵な楽曲ですね。どんなきっかけで作られたのでしょうか。
「この曲は2026年1月17日と18日に開催する初のオーケストラコンサート『蒼井翔太 LIVE Orchestra 2026 Moments』に向けて制作を始めました。オーケストラコンサートはずっと前からやってみたかったので、夢が叶いました。オーケストラコンサートでは、どの曲もストリングスのアレンジが施されて、原曲とはまたひと味違う雰囲気をまとうんですよ。例えば、カジュアルな服装からドレスに着替えるような…そんな素敵な変身ができるので、僕がオーケストラコンサートで皆さんに楽曲を届けるとしたら、どんな曲になるだろう?と以前から想像していました」
──オーケストラコンサートで披露する曲となると、かなりドラマティックな曲を想像していたと思うのですが、最初はどのような曲を考えていましたか?
「今回、オーケストラコンサートという大きな夢が実現できるということで、2013年にアーティストデビューさせて頂いてからの“蒼井翔太”の大きな区切りになると考えました」
──それは、前向きな意味での区切りですよね。
「もちろんです。なので、次の新章を始めるにあたり、みなさんへの感謝をすべて詰め込みたくて。その想いにピッタリだった植物が“薺(なずな)”でした。薺の花言葉は、“私のすべてをあなたに捧げます”なんです。大きな花が咲くような派手なものではないですが、春の七草のひとつとして、小さいけれど、葉っぱがハートの形だったりと、とてもチャーミングなお花です。そこが、今の自分にピッタリだと思い、素直な気持ちを歌に残しました。そうすることで、次の“新しい蒼井翔太”…新章の大きなエネルギーになると嬉しいと思いましたし、応援してくださった皆様の人生に少しでも寄り添える曲にしたいと思いました」
──楽曲制作には、これまで蒼井翔太さんの楽曲にかかわりのある方の名前がずらっと並んでいますね。どのように制作されたのでしょうか?
「はい。今回、本当にたくさんの作家の方々が力を貸してくださりました。これまでお世話になっている方々に、僕のことを考えていただきながら、リレー形式で制作をしていきました」
──リレー形式での制作って、とても珍しいですね!
「そうなんです。みなさんに僕のイメージを考えながら順番に制作していただいて、最後に僕がワンフレーズを埋めて、パズルを完成させるように作っていきました。僕が作ったのはDメロですなんですけど、メロディが繰り返しの旋律になっています。そこには、僕が本当に想っていることを素直に綴っていきました。この繰り返しにもこだわりがあって、僕が自分で作った座右の銘があるんですけど、“変わらず変わる”。姿、形や、表現が変わったとしても、みんなの思っている真の想い、伝えたい想い、感謝というのは何十年経ったとしても変わらずあり続けるという想いで“蒼井翔太”の活動をしているからこそ、繰り返しのフレーズがピッタリだな思ったんです」
──鳥肌が立ちました。そこまで深い想いが込められていたんですね。
「はい。もしこれがディスカッションで作っていたとすると、誰かが先導したり、意見がすれ違うこともあったと思うのですが、リレー形式で一人ずつ作ることで、みんなの想いがひとつの線となって繋がっていきました。それもこの壮大な楽曲になった要因のひとつだと思っています」
──特に印象的だった言葉を教えて下さい。
「<言葉の壁 体の壁 乗り越える>というフレーズは、僕が自分の人生を通して少しでも皆さんに寄り添えるような、一種の愛が詰まっていると感じました。さらに、自分が書いた<たとえ僕が…幾千もの 泡になってしまったとしても>という表現も、“もしかするとみんなの前から姿を消してしまう時があるかもしれないけど、その時の蒼井翔太の概念、“うたいびと”という存在が皆さんの心と身体に刻み込まれていればいいな”と思って書きました。今のところ、いなくなる予定はないですけどね(笑)」
──安心しました。この曲が、オーケストラアレンジされる原曲になるんですね。
「はい。原曲は少しEDMっぽいリズムにもなっています。オーケストラコンサートでは、ストリングスアレンジになりますし、植物としての命、エネルギーを放出するように流れに身を任せ、想いのままに、心のままに、愛のままに歌わせていただきたいです。まだリハーサルをしていないのでどんなアレンジになるかはわからないのですが…すごく楽しみにしています」
──いろんなパターンの「薺」が楽しめるのも素敵ですね。
「そう感じてもらえると嬉しいです。いろんな変化をお届けしながら、ライブやコンサートから帰った時に、このデジタルシングル「薺」を聴いてもらった時に、1周回って“いろんな「薺」が聴きたい”と思っていただけたら嬉しいです」
──オーケストラコンサートのセットリストはどんなものになるのでしょうか?
「僕は日頃からライブのセットリストを考えるときに、“蒼井翔太がライブをするなら、どんな曲を聴きたいか?”を第三者の目線で考えています。蒼井翔太って、アーティストとしてあまり普通を好んでいなくて(笑)。だから、ジェットコースターのようなライブにしたくなって、ギャップを重視することも多くて。ただ、オーケストラコンサートとなると、僕が作詞作曲させていただいた壮大なバラードやラブソングは聴きたいですし、ゴリゴリにロックな曲をオーケストラで歌ったらどうなるだろう?というギャップも見せたいですし。そうやってみなさんへのサプライズを考えて組んでいるので、必ず楽しんでもらえるはずです! “初めて”って、この機会しかないので、ぜひ楽しんでもらいたいです」
──このオーケストラコンサートを終えると本格的に2026年がスタートしますが、どんな1年にしたいですか?
「先ほど、新章と言いましたが、新しい事を始めようとすると、覚悟が必要になります。なので、自分で表現したいことをもっと磨いて、“蒼井翔太”という存在の中心に立つ人物として、いろんな演出にも挑戦したいと思っています。そして、このオーケストラコンサートが終わる頃には、みなさんから頼られるような、中心人物になっていたいです」
──クリエイティブな部分や、プロデュースなどがより楽しくなってきたのではないでしょうか?
「もともと、クリエイティブなことが好きなんですよ。“蒼井翔太”という人物、アーティストって、誰にも被らない、オンリーなものでありたいとずっと考えていて。だからこそ切り開く力はものすごく大切で。これまでは本当にたくさんのファンのみなさん、スタッフたちのおかげでいろんなことを表現する機会を与えていただきました。これからは、もっと自分が剣を持って切り開いていく…そのために精神面、技術面を磨いていきたいです。もともと挑戦が大好きで楽しいですし、それができる環境にいること自体をありがたいと感じているので、そこは全力で楽しんでいきたいです」
──蒼井翔太として活動をし始めてから15年が経つからこそ、その精神面の成長をすごく大事にされているのではないでしょうか?
「そうですね。この業界に入った頃は、本当に若かったですし、ただ守ってもらうだけの存在でした。その時は自分もただただ必死で、歌が自分を生かしてくれると思っていましたし、歌うことで“生きていていいんだ”と思っていて。僕の存在意義の場所が、歌だったんです。ただ、そこで必死にあがきながら歌い、ファンのみなさんに届くように歌っているのは変わらないんですが、当時はものすごくがむしゃらでした。それから少しずつ大人になり、蒼井翔太の名前をたくさんの人に知ってもらう中で、ようやく今、改めて人生のスタート地点に立っているように感じています。そこで感じたのが、ファンの皆さんの愛だったんです。僕もファンの皆さんを信頼しているからこそ、歌に挑戦できますし、僕のことを信じてくれる皆さんとの、目に見えない固い絆が必ずあると実感できているので、ありがたく変化させていただきながら、皆さんが求めているような蒼井翔太を届けていきたいと強く思っています」
──とてもストイックに感じ取れるのですが、オンとオフはちゃんと区別できていますか?
「それが…僕の中でオンとオフが本当にないんです。以前、『「蒼井翔太LIVE 2023 WONDER lab. Garden」』で、ステージの中心に象徴となるような大樹を置いたんです。それは、お仕事の合間の時間に行ったカフェで見たオブジェがきっかけで思いつきました。このように、ひと息ついている時間にも蒼井翔太の活動についての考え事は常にしていますし、目に見えたもので“いいな”と思うことは写真に撮って次に活かしたりすることが日常茶飯事です。だから、“オフってなんだろう?”と思うくらいで(笑)」
──もしかして、眠るときも…?
「はい! ベッドに入ると、いろいろ想像力が働いてしまって…“やりたい!”と思ったら起きてノートに書き出したりしていて(笑)。常に落ち着きがないのかもしれません(笑)。先日、アニソンフェスが6時間くらいあって、その時も椅子に座ったのは5分もなくて! それくらい、短い時間でも、“どうしたら蒼井翔太を知っていただけるか?”、“どうやってコミュニケーションをとるか?”を考えていました。だから、僕はずっとオンなのかもしれません(笑)。でも、次の日は動けませんでした!」
──あはは。最近、何か気になったものはありましたか?
「またカフェの話になってしまうんですが(笑)、カフェの素敵な照明や面白いオブジェなどを見ると、“ステージセットにしたい”と思ってしまうんです。今、僕のバッグの形を見てもステージセットに見えるくらいなんですよ!」
──それは…すごい! すべての世界が舞台に見えるんですね。
「そうなんです。目に入れば、すべて僕のアイディアの細かい一部になるので、頭がパンクしそうになります(笑)。なので、本当によくいろんな人と話して、アウトプットするようになりました。いま、欲しいのは頭のキャパシティです!(笑)」
──2026年も、そのアイディアがたくさん採用されたステージを楽しみにしていますね!
「はい! まずはオーケストラコンサートを無事に成功させて、2026年の新章をスタートさせたいと思っています。楽しみにしていてください!」
(おわり)
取材・文/吉田可奈
RELEASE INFORMATION
2025年12月5日(金)配信
蒼井翔太「薺」
LIVE INFORMATION
Day1: 2026年1月17日(土) 15:00開場16:00開演
Day2: 2026年1月18日(日) 14:00開場15:00開演
会場:立川ステージガーデン
蒼井翔太LIVE Orchestra 2026 Moments