日本版声優・梶裕貴さんが映画『サンダーボルツ*』の推しポイントを語る|「ヒーローたちの成長が詰まっていて、たまらないなと思いました!」
映画『サンダーボルツ*』が全国劇場にて絶賛公開中です! マーベル・コミックのヒーローたちが活躍するマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の各作品で、悪役やならず者として登場した6人のキャラクターがチームを結成し、己の過去と向き合いながら世界の脅威に立ち向かっていく姿を描いたアクションエンタテインメント。
「最強じゃない ヒーローじゃない――でもやるしかない」
人類破滅の危機を前にしても、チームのまとまりはなく、特別な能力もない。アベンジャーズのいない世界に新チーム「サンダーボルツ*」が登場します!
<ストーリー>
NYの街に突如として現れた大きな黒い影。瞬く間に市民を消し去っていく謎の敵・セントリーにより、世界は再び大きな脅威と直面する。しかし、数々の敵から世界を救ってきたアベンジャーズは、そのピンチに姿を現さない。謎多きCIA長官のヴァレンティ-ナは、誰がこの脅威から世界を救うのかを問いかけるが、絶望の中立ち上がったのは、かつて洗脳されヒーローと対立した過去を持つウィンター・ソルジャーことバッキーだった。彼が仲間に誘ったのは、悪事を犯した過去を持つエレーナ、USエージェント(ジョン・ウォーカー)、レッド・ガーディアン(アレクセイ)をはじめ、超クセ強な無法者たち。そこにボブと名乗る謎の男も現れ…
ヒーローじゃない彼らは、誰も空を飛べず、戦闘手段は肉弾戦のみ。しかも好戦的な性格の彼らはチームを組むも、事あるごとにぶつかりあう――。ヒーローとは程遠い…マーベルの新チーム「サンダーボルツ*」はアベンジャーズにかわって、この脅威から世界を救うことはできるのか?
映画公開を記念して映画『サンダーボルツ*』の日本版声優で、ボブ役を演じる梶裕貴さんにインタビュー。マーベル作品の魅力から、子どもの頃のヒーローの思い出話まで、たくさんお話をお聞きしました。
※まだ映画『サンダーボルツ』を観ていない人、記事で興味を持ち映画『サンダーボルツ』をこれから観る人は、ネタバレも含みますのでご注意ください。
【写真】映画『サンダーボルツ*』日本版声優・梶裕貴が作品の推しポイントを語る
憧れのマーベル作品に日本版声優として正式出演!
──今回の映画『サンダーボルツ*』で、日本版声優として出演が決定した時の率直な感想をお聞かせください。
梶裕貴さん(以下、梶):「アベンジャーズ」は、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース※1)における作品タイトルであり、最早そこから誕生したひとつの概念と言えます。「最強の存在が集結する」という意味合いで、今や一般社会でも当たり前のように浸透している言葉。それ自体がすごいことですよね。
ひとりの声優として、やはりマーベル・スタジオ作品や『アベンジャーズ』には、強い憧れがありました。以前ちょこっと出演させていただいたこと(『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)で、主人公の友人役)もあったのですが、今回『サンダーボルツ*』でもって、ようやくMCU作品に正式出演、という形になり、とても嬉しかったです。
※1:マーベル・スタジオが制作する作品群。アメリカの「マーベル・コミック」を原作としたヒーローが登場し、同一の世界観をクロスオーバー作品として扱う。実写の長編映画を基軸に、ドラマシリーズ、アニメーションなども展開。
──マーベル・スタジオ作品に対する印象をお聞かせください。
梶:MCUの構成がとても魅力的で、2000年代後期からの「映画の新しい楽しみ方」を提示してくれたシリーズ でもあるのかなと感じています。
ひとつひとつが単体の映画として面白いのはもちろん、やはり作品どうしの繋がりを感じられる瞬間がたまらないですよね。別のタイトルの人気キャラクターが登場したり、その世界観を匂わせるキーワードが織り交ぜられていたり。そんなところが大好きです。
──MCUの中で、特にお好きなシリーズ、キャラクターをお聞かせください。
梶:MCUの流れの中では第一作目となる『アイアンマン』が、特に印象に残っています。子どもの頃に『X-MEN』や『スパイダーマン』が流行ったんですけど、彼らは超人的な力を身に宿して戦うヒーローたちで。けれど『アイアンマン』は、自らが開発したパワードスーツを身に纏い敵を蹴散らすいう、新しいヒーロー像で。ものすごい新鮮味を感じましたね。
(『アイアンマン』の主人公)トニー・スタークのキャラクター性が最高!彼はいわゆる天才で、当然ながらカッコいいわけですが、並行して、どこか人間臭い部分も持ち併せていて。爽やかで正義感があるという王道のパターンではなく、ヒーローにもダメなところはある、という点に魅力を感じました。
――そこが人気の秘密なのかもしれませんね。
梶:『アイアンマン2』には、スペースX社のCEOイーロン・マスクさんご本人も実際に登場されていますが、そのせいか、「近い将来、アイアンマンのような パワードスーツが誕生するのも夢じゃないのかな?」とワクワクしちゃいますよね(笑)
──ヒーローも成長していくというのは魅力的ですね。
梶:ヒーローたちだって決して完璧なわけではなく、未熟で幼稚な部分もある。だからこそ、見ている人たちも共感できるのかもしれません。それこそ今回の「サンダーボルツ*」は“最強じゃない、ヒーローじゃない”と謳っていて。まさに、そんな醍醐味がつまっているような気がします。ずっとMCUを追って来られた方々にとっては、このメンバーが集結して映画を作るんだ!?というワクワクとドキドキ感があったんじゃないかなと思いますね。
日本人にキャラクター性がわかりやすいような役作り
──オーディション時のエピソードを教えてください。
梶:オーディションも収録も手探り状態でした。ボブは気弱で、いろいろな闇を抱えている人。心を閉ざしがちだけれど、ひょんなことから“セントリー”という、力を持った存在になります。そして、同時にヴォイドでもあるという……。ややこしいキャラクターなので、難しかったですね(笑)。なので合格のお知らせをいただいた時は、すごく嬉しかったです。そこからキャラクターについて自分なりに調べたりして、理解を深めていきました。
──本編の収録についてお聞かせください。
梶:オーディションの時から、日本語吹替版として、彼の持つ“気弱さ”や“口下手”な部分をどう印象的に表現するかが課題でした。コンセプトとして「日本人が共感できるようなキャラクター像を目指したい」というのが本国製作チームからの要望にあったようで。
ボブは言葉が詰まるシーンが多いんですが、原音の英語と日本語では喋るテンポが違うので、そのニュアンスを汲み取って日本語のセリフにはめていくのが技術的に難しかったです。「ここで3回詰まって、でもここは早口で…」みたいな(笑)。声のボリュームの調整も難しかったですね。吹替えのスタッフさんと相談しながら、模索しつつ作っていきました。完成したものを観て、絶妙なバランスで収まっていたので感動しました。スタッフの皆さんには心から感謝しています。
──収録の際、スタッフからのお話で印象的だったことをお聞かせください。
梶:収録が始まる前に、本国アメリカのスタッフさんからのメッセージ(オーディション時の音声と芝居について)をお聞きして。
その感想の中に「とても気弱な感じが出ていて、ボブの成長がすごく楽しみになりました」というものがありました。原音に寄せない形でのお芝居を求められていたので、「狙ったアプローチがちゃんと伝わるかな?」と少し不安な気持ちもありましたが、そういった激励のお言葉のおかげで、自信を持って収録に臨めたことを覚えています。
子どもの頃からヒーローに憧れ、夢を叶え続ける
──ボブ役のルイス・プルマンさんの演技(魅力など)をどのように感じられましたか。
梶:体格の大きな方なのですが、しぐさや姿勢だけでも弱々しい感じが伝わってくるんですよ。ものすごく徹底した役作りだなと驚きました。
特に目線でのお芝居が印象的でしたね。物語の中で、ひょんなことからボブはセントリーへと進化を遂げるのですが……いきなり超人になるのではなく、自分の中での戸惑いがありながらも、徐々に自信をつけていく。その変化を違和感なく、グラデーション豊かに表現されているところが素晴らしいなと感じました。
──本作『サンダーボルツ*』の中で、個人的にお好きなシーンや見どころ、聴きどころをお聞かせください。
梶:ボブを演じさせていただいた身からすると、やはり新たなヒーロー・セントリーが誕生するシーンがオススメです。まあ、いろいろな意味で一筋縄ではいかないんですが(笑)。その圧倒的なパワーにはワクワクすること間違いなしですし、MCUの今後に繋がっていく部分でもありますからね。
それから、今作の主人公であるエレーナと父アレクセイの親子愛。事前に『ブラック・ウィドウ』を観て予習しておくと、よりグッとくるものがあるかと思います。今作は、とにかくエレーナのことが好きになるお話だったかなと。ボブにもずっと優しかったですしね……(笑)。
『サンダーボルツ*』はシリアスなドラマを描きつつも、コミカル要素が多いのも特徴的な作品。“サンダーボルツ”結成の流れも笑えましたし、「ボブを助けに行こう!」とヒーローらしく敵地に乗り込んで、戦いながらビル最上階を目指すのですが…CIAの長官ヴァレンティーナから「エレベーターが普通に動いているから、それに乗って上がって来なさい」と言われて、ギュウギュウになりながら決戦の地に向かう姿がなんとも愛おしくて、たまりませんでした。思わず笑っちゃいましたけど(笑)。
聴きどころとしては、終盤、ボブが自分と対話をするようなシーンですかね。ネタバレになってしまうので詳しくはお話できないのですが…そのあたりが物語的にもすごく高まるところですし、「演じ分け」という意味でも、ぜひ注目していただければと思います。
──梶さんの子どもの頃のヒーローについてお聞かせください。
梶:子どもの頃のヒーローは、日曜日の朝でおなじみ『スーパー戦隊シリーズ』(※2)でしたね。その中でも、中心的人物のレッドに憧れがあって、TV放送も毎週欠かさず見ていましたし、幼稚園の友だちともレッドの座をかけて戦っていたりしました(笑)。
やはり正義の心を持って、悪に立ち向かうところがかっこいい。劣勢になってしまうこともあるけ れど、そこから立ち上がり、みんなのために、地球のために、力を合わせて戦い抜くという姿にすごくロマンを感じていました。
なので、ずっと「レッドになりたい!」という思いがありましたね。声優を続けていく中で、実際にスーパー戦隊シリーズに出演(『機界戦隊ゼンカイジャー』のガオーン役)することができ、まさに今も(放送中の『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』で、テガソードの声を担当)なんですけど、夢が叶ったという気がして、本当に幸せです。
今回のボブ役も、まさにそう。マーベルといったらヒーローですからね。あ、いや、まだボブとしての立ち位置は、ヒーローと呼べるかどうかわからない感じではありますが……(笑)。そういった意味でもまたひとつ、しかも吹替えという角度から夢が叶って、すごくすごく嬉しかったですね。
※2東映制作による『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975)から始まる日本の特撮テレビドラマシリーズ。5人の男女がチームを組み、色分けされたマスクとスーツで武装して怪人と戦うストーリー。
──ありがとうございました!
[取材・文]宋 莉淑(ソン・リスク)