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巨大化ガンダム、シャアの変身など、完結した後だからこそ語れる『ジークアクス』の制作裏話|『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』再上映記念!舞台挨拶レポート

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

ついに最終話を迎え、大きな話題となった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』。その劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の再上映を記念して、スタッフ登壇イベントが開催されました。

最終話からの熱も続くなかで、会場は満席。オンライン配信も行われ、作品への関心と熱量の高さが改めて浮き彫りとなりました。

この日登壇したのは、アマテ・ユズリハ役の黒沢ともよさん、鶴巻和哉監督、そしてシリーズ構成・脚本を手がけた榎戸洋司さんの3名。最終話まで駆け抜けた制作陣が、それぞれの視点から語る“舞台裏”は、どれも聞きごたえのあるものばかりでした。

本稿では、そんな貴重な舞台挨拶の模様を、じっくりとお届けします。

【写真】『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』再上映記念!舞台挨拶レポート

20年以上の想い「シャリア・ブルにスポットを」

トークはまず、キャラクターの話題からスタート。『ジークアクス』で主役級の活躍を見せるシャリア・ブルに話がおよびました。

「最初の頃のインタビューでも答えたんですが、まず“シャリア・ブルを出したいよね”という話から始まっていたんです」と鶴巻監督は語ります。シャリア・ブルの登場については、かなり以前から構想があったようで、「榎戸さんとは、20年以上前に『フリクリ』をやっていた頃にもそんな話をしていました。でも、だいぶ前のことですよね」と当時を振り返りました。

榎戸さんも「その頃、小説版のシャリア・ブル、いいよねって鶴巻監督と話していたんです。もしガンダムをリメイクするなら、シャリア・ブルだよねって」と、長年にわたる思いを語ります。さらに「『ジークアクス』の企画が始まる前に、出渕裕さんと飲んでいたときも、“ガンダムをリメイクするなら、やっぱりシャリア・ブルだよね”って僕が話していたらしくて。なんだか、あちこちで同じことを言っていたみたいですね(笑)」と、思いがけないエピソードを明かしてくれました。

ララァの登場の裏では、カイとミハルの登場案も

シャリア・ブルに続き、テレビ放送でララァが登場した理由について、榎戸さんが興味深い制作秘話を語ってくれました。

「主人公・マチュの成長のラインが、この物語の核になっています。彼女は猪突猛進タイプで、人の言うことをなかなか聞かないところがある。そんなマチュが、どうやって人間的に成長していくのか。そこが今回のシリーズ全体を貫くテーマのひとつでした」と榎戸さんは語ります。

その成長を描く手法として重視されたのが、「年上の女性たちとの出会い」でした。「マチュが出会う同性の年上の女性たち――彼女たちとの関わりを通して、自分自身を見つめ、何かを受け取っていく。そんな経験の積み重ねが、マチュの変化を生むと考えていました」。

その上で、「10話からクライマックスに向けて、マチュの成長に決定的な影響を与える出会いを用意したかったんです」と話し、「その着想の元になったのが、『ファーストガンダム』でアムロがランバ・ラルやハモンと出会う場面でした」と明かします。

「富野監督は、アムロがニュータイプになる前に“一人の人間として完成するために必要な要素”として、愛し合い、信じ合う男女――ランバ・ラルとハモンの姿を描いていた。それがとても印象的だったんです」と、その意図を重ねます。

そうした背景から、当初はカイとミハルのカップルを登場させる案も検討されていたといいます。「ミハルがジオン軍情報部の上層部にいて、裏ではシャリア・ブルと通じている……そんなスパイ的なストーリーも考えていたんです」と明かしました。一方で、鶴巻和哉監督からは「マチルダ案」も出されたものの、最終的にはいずれも採用には至らなかったとのことです。

そして辿り着いたのが、ララァという存在でした。

「アムロは両親が別居していたからこそ、“寄り添うカップル”との出会いに意味がありました。でも、マチュは両親と一緒に暮らしている。だから違う形の恋愛を描くべきだと考えたとき、“ララァしかいない”と気づいたんです」と榎戸さんは語ります。

鶴巻監督も「9話は紆余曲折があったものの、やっぱりララァのエピソードが最適解だった」と、その選択に手応えを感じたことを振り返りました。

ゲルググへのこだわりと、シャア専用機が登場した経緯

モビルスーツへのこだわりの話題では、鶴巻監督が「ゲルググ」への熱い思い入れを披露しました。

「劇場公開時のインタビューでも“好きなモビルスーツ”としてゲルググの名前を挙げていたのですが、最終回でようやく思う存分登場させることができました」と鶴巻監督は語ります。

細部へのこだわりも強く、「公式設定ではビーム・ナギナタは黄色なんですが、(『ファーストガンダム』第41話の)映像では青白く見える。だから今回は“青白”にこだわって、土壇場でリテイクをお願いしました」と、制作現場でのエピソードも明かしてくれました。

さらに、最終話のシュウジの回想シーンに登場した“赤いモビルスーツ”についても触れ、「短い尺で複雑な背景を伝えるために、モビルスーツのデザインでガンダムの多様な世界観を表現しようと考えたんです」と語ります。

「ズダなんかも登場していますが、あれは半分おふざけです(笑)」と、制作陣の遊び心ものぞかせました。

鶴巻監督が、黒沢さんに求めたもの

アフレコ現場の雰囲気について、マチュ役の黒沢ともよさんが当時の様子を振り返りました。

「スタジオに入った瞬間から、ガンダムに詳しい先輩方が“どうなってんだよ!”って盛り上がっていて(笑)。誰かが”これ、何なんですか?”って聞くと、すぐに3人くらいの先輩が一斉に説明を始めるんです。まるで放送後のネットの盛り上がりが、そのままアフレコブースで再現されているようでした」と、世代を超えた熱量の高さを語ります。

収録時のディレクションについては「明確な指示というよりも、”ちょっともう一回”、“やっぱりもう一回”みたいな感じが多くて。私の方から”こういう感じでしょうか?”と提案すると、鶴巻監督がずっと頷いてるんです(笑)」と、少し戸惑いをにじませながら振り返ります。そして、「今日は非常にドキドキしています」と、本音を明かしました。

一方の鶴巻監督は、アフレコに関する“反省”と“狙い”を率直に語ります。監督は「キャストトークで、いろんなキャラクターを演じた方が“よくわかんないです、私このキャラクターのこと”みたいな話をされて、結構ショックだったんです」と率直な胸の内を明かしました。

鶴巻監督は、ご自身の「説明しすぎてしまう」癖に触れつつ、今回もその癖が出てしまったと後悔していたものの、後に「よくわからなかった」という話を聞いてさらにショックだったと打ち明けました。しかし、それは意図的な演出でもありました。

とくにマチュというキャラクターは、「各話で言うことが違ったり、矛盾することを言っちゃったりする」ように作られていたと明かします。「若い子って、目的に向かって一直線に進むというのはむしろ大人の考え方だと思っていて。昨日言っていることと違うじゃん、みたいなことをやらかすのが若い世代の印象なんです」と、鶴巻監督自身の若者に対する印象を投影していることを語りました。

そのため、マチュはキャラクターとして「一種の分裂状態」にあると言及。鶴巻監督は「僕の中では1話のマチュと5話のマチュは、同じキャラクターなのかと思うぐらい分裂している」とまで語り、「それを黒沢さんの演技の中で統一が取れていれば、それでマチュというキャラクターは成立する」と、黒沢さんに全幅の信頼を寄せていたことを明かしました。

これを聞いた黒沢さんは思わず「それ、2年前に聞きたかったです!」とツッコミを入れ、会場は温かい笑いに包まれました。

本人の知らないところで絶賛されていたマチュの演技

そんな黒沢ともよさんは、アフレコを重ねる中で、鶴巻監督の意図をマチュの演技に落とし込む“自分なりのコツ”をつかんでいったといいます。

「シナリオを読んで、“自分はこう演じたい”という階段の踏み方があるとすれば、その一段上か下に行くと、監督が頷いてくださる傾向があるなと気づきました」と語り、5話あたりから少しずつ手応えを感じ始めたと明かしました。

その手応えは、決して気のせいではなかったようです。榎戸さんが「アフレコの後、いつも鶴巻監督と杉谷プロデューサーが“黒沢さん、本当に毎回良かったよね”って話していたんですよ」と裏話を披露すると、黒沢さんは思わず「えーっ、そうだったんですか? もっと早く言ってくださいよ〜!」と笑顔で返し、会場は温かい拍手と笑いに包まれました。

鶴巻監督のこだわりが詰まった“階段演出”

演出へのこだわりについて聞かれた鶴巻監督は、本作における“階段のシーン”に特別な思い入れがあったと語ります。

「1話でマチュが屋上の神社に向かうシーン。階段の上にカメラを置いて、下から人が入ってくる構図が特に好きなんです」と語る鶴巻監督。その映像表現は、漫画『AKIRA』からの影響を受けたものであり、同様の構図は「ニャアン」の登場シーンでも意識的に取り入れたといいます。

さらに、エグザベとシャリア・ブルが軍警ビルで対峙する階段のシーンや、エピローグでのセイラの階段のシーンなど、作中に登場する階段の演出には、いずれも『AKIRA』のカメラアングルの影響が色濃く反映されているとのこと。

「階段のシーンは、本当に自分の中でもこだわりのある場面なんです」と、鶴巻監督はその演出意図を静かに、しかし力強く語ってくれました。

シャアの“変身シーン”は、なぜ生まれたのか?

ネット上でも大きな話題を呼んだ第11話の「シャアの変身シーン」についても、トークは及びました。この印象的な場面は、鶴巻監督の「ここで“士官服姿のシャア”をしっかり見せたい」という思いから生まれたそうです。

物語では“シロウズ”として登場していたシャアですが、鶴巻監督は「マスクをつけた士官服のシャアの姿を、このタイミングでどうしても出したかった」と、榎戸さんに相談したといいます。ただし、「シャアが自分で衣装を用意して着替えるのは、絶対におかしい」という強いこだわりもあったとそう。

その解決策として生まれたのが、「ゼクノヴァ現象」を利用した“変身”という演出。榎戸さんは「赤いガンダムが出現する不思議な現象の“余波”として、変身が起こるという設定にしました」と説明します。

鶴巻監督も「普通に考えれば、シロウズの姿のまま赤いガンダムに乗せればよかったんですよ。でも、“受けるんじゃないか”という思いがどこかにあって」と振り返りつつ、「結果的に“変身”という形で、象徴的なシャア像を描くことができた」と語りました。

巨大化は、富野監督へのリスペクトを込めた“ハイパー化”

ラストを飾る、白いガンダムの“巨大化”という衝撃的な展開は、多くの視聴者に強い印象を残しました。その斬新なアイデアは、どのようにして生まれたのでしょうか。

榎戸さんによれば、「白いガンダムをラスボスにする」という方針は、企画当初からすでに決まっていたといいます。しかし物語の設定上、一年戦争から5年が経過しており、「型落ちしているはずのガンダムを、どう“脅威”として描くか」が大きな課題だったそうです。

当初は“分身”という演出案もあったものの、過去作品で使われた手法であることから却下。「もう“ハイパー化”しか思いつかない。富野アニメだし」と榎戸さんが提案すると、鶴巻監督は慎重な姿勢を見せつつ、「コンテ作成までに、より良いアイデアが浮かべば変更する」という条件付きで採用されました。

この“ハイパー化”という発想の源流には、富野由悠季監督の『聖戦士ダンバイン』があるといいます。『聖戦士ダンバイン』の作中では、パイロットの負の感情によって機体が“ハイパー化=巨大化”するという印象的な描写がなされていました。

鶴巻監督は「ガンダムでこれをやるのは“禁じ手”かもしれない」と当初は懸念していたものの、放送後のリアルタイムの反応を見て、「富野監督のロボットアニメの文脈で捉えれば、富野ファンには“アリ”だな」と、手応えを感じたと振り返ります。

黒沢ともよさんも「まさかガンダムが大きくなるとは思わなくて。アフレコ現場でも、みんな“えっ!?”って驚いてました」と語り、視聴者と同じく衝撃を受けながらそのシーンを演じたと明かしました。

三者三様、それぞれの“ありがとう”

イベントの締めくくりには、登壇した3名それぞれから、作品への想いや観客への感謝を込めたメッセージが寄せられました。

アマテ・ユズリハ役の黒沢ともよさんは、アフレコ現場での印象的な体験を振り返りながら語ります。

「鶴巻監督が毎回、アフレコの前に1時間くらい世界観の説明をしてくださって。それが本当に熱のこもったお話で、毎回とても楽しく、“ずっと聞いていたいな”と思っていました。この作品には、たくさんの方の愛情が詰まっています。これからも何度も観ていただいて、いろんなことを語り合ってもらえたら、とても嬉しいです」と、感謝とともに観客へ語りかけました。

シリーズ構成・脚本を担当した榎戸さんは、創作を終えた率直な想いをこう述べます。

「もう作り終えてしまいましたので、評価は観てくださった皆さんに委ねるしかありません。でも、全12本、自分が“作りたいものを作りたいように作れた”という実感があって、本当にホッとしています」と、静かな達成感をにじませました。

そして、鶴巻監督は、作品の歩みとファンへの想いを込めてこう締めくくります。

「『ビギニング』の再上映で、この映画の興行収入が35億円に到達したそうです。これはひとえに、皆さんのおかげです。『ビギニング』は、今観ても時系列が素直で、とても見やすい映画だと思っています。もしまた、再上映や再々上映の機会があれば、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです」と、感謝の気持ちとともに語り、イベントを締めくくりました。

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