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「望まぬ妊娠をした女子高生」はどんな〈決断〉をするのか?若き映画人たちが「世界遺産の街」で紡いだ人間ドラマ『カフネ』

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「望まぬ妊娠をした女子高生」はどんな〈決断〉をするのか?若き映画人たちが「世界遺産の街」で紡いだ人間ドラマ『カフネ』

微増する未成年の中絶件数

国内の中絶実施率は年々減少しているという。厚生労働省によると、平成27年の人工妊娠中絶件数は17万6388件、令和元年は15万6429件、令和4年は12万2275件。そのうち未成年は19歳の届け出が最も多く、やや微増傾向にあるが、2023年4月に承認された経口中絶薬の影響が今後出てくる可能性も高い。

――唐突にデータの話を出したが、これらは決して数字上だけの話で片付けられるものでははない。身近な誰かに、もしくは自ら経験を持つ方もいるだろうし、とくに予期せぬ妊娠は女性の心身に大きな負担を強いるため、社会全体で取り組んでいくべき問題と言える。

〈心と心〉の通い合いを描く人間ドラマ『カフネ』

アメリカではロー対ウェイド判決が49年ぶりに覆されたことで“中絶禁止”のハードルが下がり、大きな社会問題に発展している。正直、日本とはかなり温度差のある事案だけにピンとこない部分もあるが、もし家族・親族を含め身近にいる未成年から妊娠した/させたことを相談されたら、どう対応するのが“正解”なのだろうか?

10月12日(土)より劇場公開となる映画『カフネ』は、望まない妊娠に直面した女子高生が悩み葛藤し、その相手や友人、家族とぶつかり合い、そして心をさらけ出し交流していく姿を描いたヒューマンドラマだ。大阪芸術大学在学中の杵村春希による長編初監督作品であり、世界遺産の街・三重県熊野市でオールロケを敢行したことでも話題を呼んでいる。

『カフネ』

「本音で語り合うことで生まれる真の対話」

高校三年生の瀬川澪は、彼氏である遠山渚との間に子を妊娠する。澪は妊娠したことを 渚や家族に打ち明けられずにいたが、たった一人、親友である峯田夏海には話すことができた。澪は様々な困難に直面しながらも、今まで言葉にしてこなかった気持ちを伝えるために、渚の元へ向かう――。

『カフネ』

映画『カフネ』は本作監督の杵村春希が、脚本の千葉美雨に「女子高生の妊娠について本を書いて欲しい」と話したことが全ての始まりだったという。コロナ禍において、若年層の“望まない妊娠”が増加したというニュースに、杵村が関心を持ったことから企画が動き出した。

『カフネ』

そんな本作が描き出すテーマは、「本音で語り合うことで生まれる真の対話」。高校生の“望まない妊娠”という一般的にはセンシティブな内容を扱ってはいるが、本質的なコミュニケーションを描く普遍的な物語でもある。心と心が触れ合う喜びと苦しみ――その中に確実に在る、人間の“美しさ”と“温かさ”を感じられるはずだ。

『カフネ』

オール地方ロケ! 日本エンタメの未来を担う若き映画人たち

助監督の大井薫幾の地元である三重県熊野市を紹介され、目の前に広がる大きな海と山、その間にある小さな街々、そこで暮らす人々と出会ったことで、杵村組は熊野市を舞台に映画を撮ることを決断したという。そして同市の観光協会ほか多くの協力や後援を得て、三重県熊野市オールロケが始動。クラウドファンディングによる有志からの支援もあり、2023年1月に完成したのが映画『カフネ』だ。

『カフネ』

2023年3月には、第18回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門に最年少監督としてノミネートされた本作。また2日間行われた上映ではチケットが発売開始から半日も経たずに完売し、シネ・リーブル梅田にて満席での全世界初公開を迎えることになる。その後、2023年11月に東京初公開となる第24回TAMA NEW WAVE「ある視点」部門での上映や、第1回きみの海南映画祭では観客賞・主演俳優賞を獲得。また海外では<Chicago Japan Film Collective 2023>特別上映プログラムにて、インターナショナルプレミアを行い、オランダにて実施された<CAMERA JAPAN 2023>でも上映された。

『カフネ』

コブクロ「卒業」MVで主演を務めた山﨑翠佳を主演に迎え、数々の舞台やモデルとして活動する松本いさな、太志、木下隼輔、澤真希らが出演。さらに元宝塚歌劇団の桜一花やベテラン俳優の入江崇史が重要な役柄で脇を固めている。

『カフネ』は2024年10月12日(土)より全国順次映画

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