韓国の国民的テレビ局KBSに何が?時代劇ドラマは短く、アイドルオーディション番組まで
韓国の国民的テレビ局KBSが、体制を刷新しようとしている。
日本のNHKに例えられることもある本国最大規模の放送局に何が起こったのか。
大河ドラマの名家、週末ドラマの看板局として、主に長編作品で韓ドラ界を盛り上げてきたが、ここにきて話数を減らしはじめている。
それだけでなく、5月からはアイドルオーディション番組までスタートさせるなど、路線変更を示唆する新たな取り組みも。
加速するテレビ離れに加え、受信料の徴収方法変更に伴う収入の減少を警戒し事前の備えに余念がない。
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受信料の徴収方法変更とKBS
KBSはNHK同様、受信料が収入源の1つとなっており、その割合は全財源の45%。約半分を各家庭から受け取った受信料金でまかなっている。
しかし韓国政府が、徴収方法の変更を決定。これまでは電気料金とまとめて請求していたが今後は分離し、KBSが独自に支払いを求めることに。
生活に必須だった電気料金に含まれるのではなく、“受信料”という名目にいったいどれだけの人がお金を払うだろうか。
約6200億ウォン(約620億円)の受信料収益は、約6分の1の1000億ウォン(約100億円)にまで減少すると専門家たちは予想。ただでさえテレビ離れが進み視聴率が獲得できない状況で、新たな徴収方法の実施を前にKBSは戦々恐々とせざるを得ない状況だ。
看板枠の見直し
そんななか最近、トレンドを意識した編成が目立ちはじめている。その代表例が大河ドラマ『高麗契丹戦争』(2023)だ。
かつては全200話で構成されるなど、長編ものの大河がKBSのトレードマークとなっていたが、本作は全32話に凝縮、激しい戦闘シーンを盛り込んでスケールの大きさを強調し、Netflixでも配信するなど、若年層にも受け入れられやすい工夫が凝らされていた。
また、9月から放送される予定の週末ドラマ『アイロンファミリー』も、KBSの戦略が見え隠れする。
同局の週末ドラマといえば50話前後で構成されるのがお決まりだったが、本作は全36話だという。
全10話~12話のドラマが増えている昨今、『アイロンファミリー』はまだ長編の部類に入る。しかし、視聴率が下がっても独自の道を走り続けてきたKBSとしてはかなりの冒険。
視聴率30%越えの超長編作品を次々と世に送り出してきたプライドを捨てるとともに、伝統を破り、話数の少ない作品を好んで観る側のニーズに合わせはじめた。
それに加え、作品と役者が変わるだけで、毎回ドロドロのワンパターンな展開を繰り広げ視聴者から「飽きた」との声が上がっていたストーリーも変化を見せる兆しが。
『アイロンファミリー』は、『パスタ~恋が出来るまで~』(MBC/2010)や『嫉妬の化身~恋の嵐は接近中!~』(SBS/2016)を手掛けた作家が脚本を務めており、ロマンティックコメディー要素が盛り込まれるのではないかと期待されている。
若年層を意識した新たな取り組み
また、MZ世代をターゲットにしたと思われる、ボーイズグループのオーディション番組『MAKEMATE1』もスタートした。芸能事務所に所属していない36人の参加者がアイドルを目指す過程を描いている。
彼らの指導にあたるコーチには、MAMAMOO(ママム)のソラや、PRODUCE 101でボーカルトレーナーを務めたキム・ソンウンなどK-POP界で活躍するスターが。また特別講師には今を輝くアイドルのENHYPEN(エンハイプン)やOH MY GIRL(オーマイガール)のメンバーを迎えたこともある。
しかしなぜか視聴率は1%にも達しておらず、KBSとしては深刻な状況。先に紹介した『高麗契丹戦争』も歴史歪曲議論に巻き込まれ、数字がさほど伸びなかった。結果がまだ出ていない状況だ。
先行きが不安ななか、果敢に体質改善を図っているKBS。保守的と言われた同局が、今後どのような変化を遂げるのか期待される。
(ライター/西谷瀬里)