俳優・安藤玉恵と錦糸町。“とんかつ屋のたまちゃん”が好きな墨田区のこと
朝ドラをはじめドラマ、映画、舞台で活躍中の俳優・安藤玉恵さん。隣接する荒川区のご出身とあって錦糸町にも足を運ぶそう。そんな安藤さんに錦糸町のお気に入りスポットを教えていただいた。
安藤玉恵(あんどうたまえ)
俳優、東京都荒川区出身。今後の主な出演に、Eテレ『未病息災を願います』(レギュラー)、映画『でっちあげ〜殺人教師と呼ばれた男』、舞台『リア王』[東京] 2025年10月9日(木)~11月3日(月・祝)THEATER MILANO-Za、[大阪]11月8日(土)~16日(日)Sky シアターMBS など。エッセイ集『とんかつ屋のたまちゃん』を上梓。
墨田区のお隣・荒川区のあの頃の風景
——安藤さんといえば尾久のとんかつ屋の『どん平(ぺい)』さんのお嬢さん。ご実家のまわりも変わりましたね。
安藤 この前、よく行っていた「マルホベーカリー」さんがなくなったって聞きました。よく遊んでたひこうき公園もなくなってだいぶ寂しいですね。
——子供時代は商店街で遊んだり、よそのお店でつけ買いされてたとか。
安藤 ちっちゃい商店街ですから、宮前商店会は。キュッと狭いじゃないですか、車1台しか通れないぐらい。地域で育てるじゃないけど、話しかけたらしゃべってくれるし、ダメなことしたら「やめなさい!」って叱られた。
『らんまん』でりんさんがいた長屋と私の幼少期の商店街の雰囲気が近くて。みんなに育ててもらった感じです。あの役はとてもしっくりと来ていました。
実は演劇関係者が多い錦糸町
——錦糸町に来られるきっかけは?
安藤 菩提寺があるので20年近く行ってます。芝居の稽古場もいくつかあるんですよ。『すみだパークスタジオ』とか。その中に『すみだパークスタジオ倉』という、公演ができる劇場というかスタジオもあって。だから演劇関係の方が実はいて、面白いですよね。
私が錦糸町の稽古場に通っていたのは新型コロナの時期だったので、お酒を飲みには行けなかったんです。あんなにおいしそうなお店がいっぱいあるのに……。いつもだったら終わってちょっと一杯とか、飲めたんですけどね。
——新型コロナの時でも、芝居はやらなきゃ! って思われてたんですね。
安藤 改めて問われるとちょっと照れてしまいますが(笑)、続けていたので、そうなんでしょうね。やれないと一層、やりたくなる。
——おすすめいただいたお店についてお伺いしますね、まずは『CAYU des ROIS(カユ デ ロワ)』さん。
安藤 いいですよね、おしゃれなお店です。お粥(かゆ)が好きなんですよ。緑色のお粥って、メニューを見たときびっくりでした。ホウレンソウの。「緑色のお粥を食べてるんだ!」っていう感動、体に効きそう。ホウレンソウと薬膳のお粥をよく頼みます。薬膳の方は内臓を元気にしたい時……まぁつまり二日酔いの時なんですけど(笑)。いつまでも元気にお酒を飲みたいですから。
——『SASAYA CAFE(ササヤ カフェ)』さんはどうですか?
安藤 あの空間が好きなんです。本をゆっくり読める場所が好きなんですよね。日本酒のおいしい居酒屋とかワインがおいしいお店とか、お店選びの基準はいろいろありますが、「本が静かに読めるかどうか」も決め手になります。
お店の一番奥の、革張りのソファーのひとりがけのところがお気に入りです。お店へのアプローチもいいんですよね、川のところの公園を通って。ここで初めて“ヴィーガン”って言葉を知りました。こちらはカフェの方の知識が豊富なので、質問をすると親切に教えてくださいます。
玄米もおいしいですよね。いっぱいおかずがあって、全部おいしいんですけど、玄米はそれだけでも食べられるよっていうぐらい甘みがあります。
——あと『大黒湯』さんですけど、銭湯とか行かれるんですか?
安藤 私は銭湯育ちですから! 生まれも育ちも銭湯ですから。
——えー!
安藤 大好きなのですが、何も着ていない時に「安藤さんですか?」って声をかけられると、ちょっと困ってしまいます(笑)。今度から、銭湯で見かけても知らんふりしてくださると助かりますね。
——サウナお好きなんですか?
安藤 サウナよりは湯船が好きなので、サウナは必須ではありませんね。あ、いつでも銭湯に行けるようにね、銭湯グッズを持ち歩いてるんですよ。
——ちなみにどういうものを?
安藤 (グッズを出す)これだけなんです、軽いんですよ。タオルとか手拭いは1枚だけでいいんです。あとヘアブラシ、湯シャンだからシャンプーはいらない。トリートメントと、顔に塗るやついろいろ。
——これはプロの持ちものだ!
安藤 厳選された最終形態です。これならどこへでも行けますでしょ? 本来だったらポーチもいらないんです。タオルに包んでハンドバッグに入れてしまえばいい。
『大黒湯』は露天風呂がよくて、奇数と偶数日で男女入れ替えなので、できるだけ大きい露天の日に行ってます。あとオールナイトもやってるので、早朝に行くこともありますかね。
——銭湯でマストなものあります?
安藤 うーん……あつ湯! いま炭酸泉とか比較的低温なものが増えてきましたから、あつ湯があるといいですね。
低温のお湯ではみなさん長く入っておしゃべりを楽しみますよね。お風呂の会話って地域によって全然違って、楽しいです。
銭湯に入れば細胞が変わる
——お風呂見つけたらフラっと入っちゃう感じですか。
安藤 職場から家に帰る時に喫茶店に入ったり立ち飲みで一杯とか、ちょっとワンクッション置くっていう感覚で行きます。気持ちの切り替えというか、最短15分ぐらいで入れますから。脱いで入って出てくる。だけど信じられないぐらいに細胞が変わりますよ、落ち込んだこととか全部忘れちゃうし。サッパリ、リフレッシュ! という感じです。
10歳までは家にお風呂がなくて銭湯だったので、銭湯でおばあちゃんを見ると反射的に「背中を洗いたい!」って思っちゃうこともあります。昔は「流しましょうか」と声をかけたこともあるんですが、最近はしてないです。私が小学生のときは、当たり前の光景だったんですけどね。
実はいまでも湯船から、ゴシゴシしてあげたいなっておばあちゃんの背中を見ていることもあります。
——今なら夜に錦糸町でお酒飲んだりもできるのでは?
安藤 錦糸町は昼間の時間帯に行くことが多いので、お酒はちょっと。
——今度舞台もされるんですよね。
安藤 舞台『リア王』での次女のリーガン役をやります。大竹しのぶさんがリア王で、私はその次女、王女様です。父であるリア王が、引退後、1カ月ごとに長女と次女の家で暮らしたいってプランを立てるんですけど、2人とも嫌がって押し付け合うという……。
王家の話ではあるけれど、家族の普遍的な話、そんな部分もあるのかな、と思います。まだまだ稽古開始が先なので、一体どんな『リア王』になるのか、演出のフィリップ・ブリーンさんがどう演出するのか。私も楽しみにしています
安藤さんのお気に入りスポット
おしゃれなお粥専門店『CAYU des ROIS 亀沢店』
フレンチレストランのように落ち着いた雰囲気のお粥専門店。クリーミーなホウレンソウお粥にベーコンをのせたPOPYE(ポパイ)980円は、295kcalと低カロリーながら満腹感が得られる一品。YAKUZEN(ヤクゼン)は10種類のきのこを使用した薬膳粥。
『CAYU des ROIS』店舗詳細
CAYU des ROIS(カユ デ ロワ)
住所:東京都墨田区亀沢4-17-17 I.T.O bldg1F/営業時間:10:30~21:00(土・日・祝は20:00)/定休日:無/アクセス:JR・地下鉄錦糸町駅から徒歩5分
子連れ歓迎テイクアウトOK『SASAYA CAFE』
メニューはオールヴィーガンで、取材時のToday’s Special 1600円は、豆腐ハンバーグ~温野菜添え~。ベビーカーでも入りやすいひろびろ店内が人気で、お隣が劇場ということもあり、日によっては混雑で列ができることも。公式サイトhttps://sasayacafe.com/からWeb予約が安心。
『SASAYA CAFE』店舗詳細
SASAYA CAFE(ササヤ カフェ)
住所:東京都墨田区横川1-1-10/営業時間:8:30〜18:00/定休日:不定/アクセス:東武鉄道東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅から徒歩10分、JR・地下鉄錦糸町駅から徒歩15分
多彩なお湯をオールナイトで『押上温泉 大黒湯』
薬湯や露天風呂など男女日替わりで楽しめる(大露天が奇数日男性、偶数日女性)。洗い場にシャンプーとボディーソープがありうれしい。大人550円、サウナ大露天側370円(土・日・祝400円)・炭酸泉側300円(土・日・祝330円)。
『押上温泉 大黒湯』店舗詳細
押上温泉 大黒湯(おしあげおんせん だいこくゆ)
住所:東京都墨田区横川3-12-14/営業時間:15:00〜翌10:00(土は14:00〜、日・祝は13:00〜)/定休日:火(祝の場合は翌水)/アクセス:私鉄・地下鉄押上駅から徒歩6分、JR・地下鉄錦糸町駅から徒歩12分
【INFORMATION】安藤さんが上梓!『とんかつ屋のたまちゃん』
個性派俳優の安藤さんが育ったのは下町の商店街。懐かしくておかしくてやさしい人々と街の思い出をつづった初めての書き下ろしエッセイ集。歯切れのいいリズミカルな筆致で、短編映画を見ているようにページが進み、じんわり胸があったかくなる。
取材・文=神田ぱん 撮影=牧野智晃(安藤玉恵)、丸毛 透
『散歩の達人』2025年8月号より