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【自己判断注意】車によくある故障の症状は?整備士が解説

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車に乗っていると、思わぬ故障やトラブルに見舞われることがあります。
予兆のあるものから、突然発生するものまでさまざまですが、メーカーや車種を問わずよくある故障というものがある程度あります。
どんな故障が多いのか、具体例を示しながらその症状や対処法について現役の整備士が解説します。

車でよくある故障をランキングで紹介

車でよくある故障は、レッカーサービスの出動理由からある程度見えてきます。

こちらのJAFの「よくあるロードサービス出動理由」( https://jaf.or.jp/common/about-road-service/frequency )を参考に、わたし自身の日常業務も考慮したうえで、独自でよくある故障ランキングを作成しました。

1位. バッテリートラブル

バッテリートラブルは特に真夏、真冬に多いです。症状の大半は、バッテリー上がりによってエンジンを始動できないことがあげられます。。
単純なバッテリーの劣化であればバッテリー交換で済みますが、バッテリーが早期劣化する原因が他にあったり、発電機能に異常がある場合もあります。

2位. パンク、バースト

タイヤのパンクやバーストは不慮のものと思われている方が多いですが、日々の空気圧メンテ不良、タイヤの劣化や摩耗を放置しているケースも多くあります。重大な事故につながるリスクもあるトラブルです。

3位. 先進運転支援システムの誤作動

自動ブレーキに代表されるような先進運転支援システムは便利な反面、ドライバーの意図しない動きをしたり、逆に反応しなかったといった不安や不満の声が多く聞かれます。

4位. ナビ、コネクティドシステムの不具合

最近では、ナビ・オーディオシステムが車両システムに統合されている車が増えています。
CarPlayやAndroid Autoを接続したり、HDMIを接続して多様な使い方ができるようになりましたが、「正常に作動しない」「フリーズする」といったトラブルに見舞われることがあります。

5位. ライト類の球切れ

割と軽視されがちですが、ライトが正常に点灯していない状態も立派な故障のひとつです。「自分には支障がないから大丈夫」ではなく、周囲の車や人を惑わす恐れがある自覚を持つことがドライバーとしての責任です。

6位. エアコンの故障

特に夏場に死活問題となるエアコンの故障も、車種を問わず特に多いトラブルのひとつです。さまざまな故障のパターンが考えられます。

7位. ブレーキ鳴き

「ブレーキ鳴き=故障や異常とは限らない」という大前提ではありますが、その一方でブレーキ残量の低下やブレーキの引きずり発生によってブレーキ鳴きが発生しているケースがあります。

8位. エンジンチェックランプ点灯(警告灯点灯・点滅)

車の故障といえばエンジンチェックランプや警告灯点灯のイメージを持たれる方も多いでしょう。
ただし、体感できる不具合がない場合も多く、診断機を接続してどこの何が悪いか点検・診断していく必要があり、その原因は非常に多岐に渡ります。

9位. 異音

異音問題は厄介で、整備士にとっても難解な診断のひとつです。
また、その原因はエンジン、トランスミッション(ATやCVTなど)、サスペンション、ブレーキ、内装部品や電装品など多岐に渡り、中には正常範囲内での作動音というケースもあります。

10位. オーバーヒート

オーバーヒートは深刻な故障のひとつで、その異常に気付くのが遅れるとエンジンにダメージを与えてしまう可能性があります。
冷却水漏れの発生を思い浮かべがちですが、漏れていなくてもオーバーヒートするケースがあります。

11位. ATやCVTの故障

ATやCVTといった「トランスミッション」の不具合も深刻な故障となるケースが多く、場合によっては走行できなくなるような不具合につながることもあります。
また、修理費用が高額となるケースが多いです。

【独断注意】誤った対処で故障が悪化するケース一覧

車の故障を修理するためには、プロによる正確な診断が必要です。
ネットやSNSで検索した情報は誤ったものも非常に多く、要らぬ不安を煽ったり誤った対処法で故障がより深刻になるようなケースもあります。

例をいくつか挙げます


•バッテリー上がり
→バッテリーの経年劣化ではなく、発電機能の不良や、車を使用していない時の消費電力が大きくてバッテリーが早期消耗している可能性があります。

•ナビ、コネクティドシステムの不具合
→車両システム側の問題ではなく、使用しているスマホや有線ケーブルに問題があるケースが多いです。
•エアコンの故障
→エアコンが効かないとき、単にエアコンガスが抜けていると誤った判断をするケースが非常に多いです。
エアコンの故障原因は非常に多岐に渡ります。

•エンジンが掛からない
→バッテリーが弱くなってること以外にも、エンジンが掛からなくなる原因はあります。
後ほどくわしく解説しますが、バッテリーだと勘違いして対処したことで、車をより一層悪い状態にしてしまうことがあります。

•ブレーキ鳴き
→ブレーキ性能に起因するブレーキ鳴きと勘違いをして使い続けていると、その音が実はパッドに取り付けられたブレーキ残量の低下を知らせるセンサーがローターに接触している音だったというケースがあります。

よくある故障①.バッテリー上がりの事例や対処法

バッテリー上がりは単にバッテリーの寿命がきたことによるものだけではなく、ほかの要因で早期劣化してしまった可能性があります。
その場合、バッテリーを交換しても短期間の間に再びバッテリー交換をしなければいけないケースがあります。

バッテリー上がり事例の紹介


•ルームランプ等の電装品がONのまま
•ドラレコの駐車監視モード使用
•発電機能の低下、不具合(オルタネーター等)
•適合しないバッテリーの使用

ドラレコが原因でバッテリーが上がるケース

今ではドラレコの装着が当たり前になりましたが、駐車監視モードの使用はバッテリーの電力を消費するので、バッテリーの早期劣化やバッテリー上がりを招くリスクが高くなります。
そういったトラブルを未然に防ぐために、ドラレコ側にはバッテリーに負担を掛けないために一定の電圧を下回るとオフになる機能などがあります。
これらの設定が不適切であったり、そもそも設定ができないものなどもあり、ドラレコがバッテリーに負担を掛けている可能性があります。

ルームランプ等の電装品がONのままのケース

同じくルームランプやヘッドライトの消し忘れなどもバッテリー上がりの要因になります。
ただし、最近の車は灯火類の消し忘れがあった場合には警告音でお知らせしたり、一定時間経過後は自動消灯するようになっており、トラブルを未然に防げるようになっていることが多いです。
それでも、社外製品をUSBポートやアクセサリーソケットに挿して使っていると、エンジンを切った後でもその社外製品が原因で車が大きく電力を消費し続けてしまうケースもあるので注意が必要です。

発電機能の低下や不具合が発生しているケース

バッテリーを充電する発電機能が正常に働いていないパターンも考えられます。
この場合、走行中にメーター内にバッテリーの赤いランプが警告灯として点灯することがあります。
修理をおこなわければ、交換後のバッテリーがすぐにバッテリー上がりを起こす可能性が高いです。

トラブルを予防する対処法

バッテリー上がりの原因として寿命以外の可能性も考えられるときは、バッテリー交換を整備工場に依頼したうえで、懸念点を伝えて点検してもらうようにしましょう。
発電機能が正常に働いているのか、車を使用していないときの消費電力が過大でないかが要チェックポイントです。
いずれかに問題がある場合は、修理や修正が必要になります。

よくある故障②.先進運転支援システムの不具合事例や対処法

先進運転支援システムは、自動ブレーキ以外にもオートクルーズコントロールや自動ハイビーム機能、ブラインドスポットモニタリング機能など、さまざまなドライビングシチュエーションを車のシステムでカバーするものです。
非常に便利かつ、安心安全なドライブに役立つ機能ですが、一方でかならずしもドライバーの思い通りに車のシステムが作動するわけではないので、理解と注意が必要です。

先進運転支援システムの不具合事例

先進運転支援システムの場合、不具合ではなく機能上での限界やオーナーの認識違いによるトラブルが多いです。


•何もないところで自動ブレーキが作動した
→正面にあるガードレールや反射板を障害物として認識してしまい、自動ブレーキが作動する
•自動ブレーキが作動しない
→車によって自動ブレーキの作動条件に歩行者や二輪に対応しているか否か、夜間に対応しているか否かなどが異なります。
また作動シチュエーションには限界があり、周囲の環境や悪天候、急な飛び出しといった状況によっては作動しないことは十分中考えられます。

•荒天時にレーダークルーズコントロールで前走車を正確に認識できない
→先進運転支援システムは様々な外的要因により、その性能を十分に発揮できないシチュエーションがあります。
(例:前走車との距離を測るレーダー波が荒天時の雨や、センサー部に付着した汚れなどにより乱れて正確に受信できない)

先進運転支援システム不具合発生時の対処法

上記で解説した事例はほんの一例で、あくまで車の運転はドライバーが主体であり、人間の感覚と車(機械・システム)が検知していることは100%イコールではないことを理解して、うまくシステムと付き合っていくことが大切です。
先進運転支援システムの機能について不安に感じることがあった場合には、整備工場にくわしい状況を相談し、テスターによる診断やプロからのアドバイスを受けましょう。
中には制御システムのソフトウェアが改善されていたり、対策された部品が展開されていることもありますが、プロによる正確な点検や診断を受けずに安易にシステムに関連するセンサー等の部品を交換しても、何も変わらないことも十分に考えられます。

よくある故障③.ナビ、コネクティドシステムの不具合事例や対処法

ナビ、コネクティドシステムが正常に作動しない事例として以下のようなものがあります。


•バックカメラが映らないことがある
•CarPlayやAndroid Autoが途切れる
•音楽が途切れる
•ナビの案内や表示に不具合がある

対処法として、車両側のシステムソフトウェアのアップデートがあることを確認でき、そのアップデートの改善内容に不具合に該当するものがあれば、アップデートをすることで不具合が解消する可能性があります。
一方で、発生している不具合は使用している電子デバイス(スマホやUSBメモリ)や、通信用ケーブルに問題のあるケースも非常に多いです。
その場合、スマホのソフトウェアをアップデートしたり、別の通信用ケーブルに交換することで不具合が改善されることがあります。
また、別のスマホだと不具合が出ないこともあり、機器そのもののマッチ/アンマッチが原因の可能性もあります。
先進運転支援システムの問題と同様に、安易に車側の故障や問題と決めつけないように注意が必要です。

よくある故障④.エアコンが効かない事例や対処法

エアコンが効かないときに、エアコンガスを補充して欲しいと依頼いただく例が少なくありません。
まさに記事タイトルにあるように「独断注意」の分かりやすい例です。

エアコンが効かない事例紹介

エアコンが効かない理由はさまざまです。


•エアコンガス不足
•エアコンガス過充填
•エアコンガスに空気混入
•エアコンコンプレッサーの故障
•A/Cリレーの故障
•コンデンサの詰まり
•コンデンサファン(クーリングファン)の故障
•エキスパンションバルブの故障

ほかにもエアコンが効かない原因はたくさんあります。
A/CボタンがONになっていない、外気導入のままになっているといった操作ミスによる原因も意外と多いです。
また、エバポレータの詰まりや温度センサーの特性不良によるエバポレータの凍結、エアコンフィルターの過大な詰まり、ブロアファンの故障といった理由により、風量そのものが弱くなって効きが悪くなっている可能性もあります。

エアコンが効かないときの対処法

エアコンが効かないときは、独断で判断してエアコンガスを補充するのではなく、信頼のできる技術のある整備工場で正確な診断と処置をしてもらうことがベストな選択です。
整備をメイン事業としない車関連のお店もありますが、十分な知識がなく正確な診断ができずに、安易にエアコンガスを過充填してしまうケースが多発しているので注意が必要です。

よくある故障⑤.エンジンが掛からないときの事例や対処法

エンジンが掛からないとき、バッテリー上がりを疑いがちですが、他にもさまざまな原因が考えられるケースもあります。

エンジンが掛からない事例紹介

バッテリー上がり以外でエンジンが掛からない事例として、以下のようなものがあります。


•キーレスの電池切れ
•キーレスを認識できていない
•燃料切れ(ガス欠)
•エンジンに燃料が供給できていない
•スパークプラグかぶり
•センサーやコンピューターの故障

エンジンが掛からない原因のひとつに、キーレスの問題が考えられます。
いずれのケースもメーター内に警告やメッセージが出るので、焦らず確認してみましょう。
車両側に問題が起きていることもあれば、スマホやコインパーキングなどの特定の場所で発生している電波との干渉といった外的要因により、キーを認識できない状況も考えられます。
また、燃料ポンプ等の故障で燃料がエンジンに供給できていないケースや、センサーやコンピューターの故障によって、エンジンが始動できないケースも、レアなパターンではありますが十分に考えられます。
スパークプラグのかぶりは、プラグに燃料が付着し良好な火花が飛びづらくなり、エンジンが掛かりにくくなる現象です。

エンジンが掛からないときの対処法

エンジンが掛からないときは、冷静に車の状態を観察して把握することが大切です。

キーレス関連に問題があるとき

キーレスの問題でエンジンが掛からないとき、最近の車はプッシュボタンスタート式でキーを挿すところがないので、各車種・メーカーごとに応急の対処法が取説やメーカーHPで案内されています。
指定された箇所にキー本体を置く、または触れさせることでエンジン始動が可能です。

燃料システムやセンサー、コンピューター関係に不具合が疑われるとき

燃料システムの不具合、センサーやコンピューターの故障が疑われる場合はレッカーサービスを利用して整備工場に搬送する必要があります。
オーナー自身でその場で応急処置できることは基本的にはありません。

スパークプラグがかぶっているとき

スパークプラグのかぶりが疑われる場合、何度か始動を試みながら状況に応じてアクセル操作を行うことで、エンジンをかけられることがあります。
試す場合の判断基準として、エンジンの初爆があるかどうかの判断が必要です。
また、短時間の間に何度もエンジンを掛けようとスターターを回すと、スターターが焼けて壊れてしまう恐れがあります。
対処法を試すことが心配な方は、ロードサービスを呼んで対応してもらうことをおすすめします。
また、スパークプラグのかぶりはチョイ乗りが多かったり、車に乗る頻度が極端に少ないときに発生しやすいです。

よくある故障⑥.ブレーキ鳴きの事例や対処法

ブレーキ鳴きはブレーキの性能上、仕方のないものであることもあります。
しかし、中にはブレーキパッドに残量の低下をお知らせするセンサーが付いており、パッドの摩耗が進むとそのセンサーがローターに接触して、ブレーキ鳴きが発生してドライバーにパッドの摩耗をお知らせするものがあります。
これを独断でただのブレーキ鳴きと放置していると、ブレーキパッド残量が無くなってしまい、それだけではなくブレーキローターも損傷・異常摩耗して交換が必須となるケースが見受けられます。
これは非常に危険な状態です。
対処法は、定期点検を確実に受けてブレーキパッド残量を把握することです。
また、ブレーキ鳴きが発生した場合は整備工場に相談して、パッド残量の低下だけではなく引きずり等の異常がないか点検してもらうことをおすすめします。

整備士のまとめ

車にはさまざまなトラブルがつきものです。
これらのトラブルや問題は、不具合であることもあれば意外にも正常なものや、ドライバーの勘違いに起因するものもあります。
しかし、勝手な判断で対処したり放置することで安全を脅かすおそれも十分に考えられます。
特に最近はSNSで意見を募る投稿を見掛けることも増えましたが、素人による的外れなアドバイスで埋め尽くされている…ということも珍しくありません。
自分自身に間違いや勘違いがあっても、恥ずかしいことではありません。
すこしでも違和感を感じたり心配なことがあれば、信頼のできる整備工場に相談することをおすすめします。
プロによる見解や点検を通して、安心して納得のできるかたちでトラブルと向き合うようにしましょう。

Supervised by 整備士 ヒロ

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。

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