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カルト宗教の子供たちを通じて描く、詩森ろば新作『神話、夜の果ての』上演決定

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serial number11『神話、夜の果ての』

2024年7月5日(金)~7月14日(日)東京芸術劇場シアターウエストにて、serial number11『神話、夜の果ての』が上演されることが決定した。

詩森ろばの新作『神話、夜の果ての』は、カルト宗教の子供たちという視座を通じ、そのすべてを演劇のかたちで問いかける問題作。1995年地下鉄サリン事件と2022年元首相の銃撃事件、二つの事件は、それぞれ違う宗教団体が関わっていたことが判明し、社会に衝撃を与えた。直接的な関係を持たないこの二つの事件は、現代人の寄る辺なさが縋るものを求めた結果、前者は歪んだ正義のかたちで、後者は他者への殺意をともなう怨恨のかたちで噴出し、結果として、無辜の命を奪ったという点で通底している。1995年の事件では団体の本拠地から多数の子供たちが救出され、教祖の娘は、義務教育からさえ拒否され学校にもまともに通えないなか、大人になった。2022年の事件では、母親が宗教に傾倒していくなか孤独を深めた息子が、ついには人として超えてはいけない一線を越えてしまったことが白日の下に晒された。信仰とは、本来、人間をこえた存在(神)を前提とした教義に基づき自分を律し、幸福や安寧を得るためのもの。しかしその中で、多額の献金や過度の献身などが起り、狂信化していくことがある。それはどこで一線を越え、カルト化し、暴力へと転じていくのか。

上段左から 坂本慶介 川島鈴遥 田中亨 下段左から 杉木隆幸 廣川三憲 

詩森作『secret war-ひみつせん-』で登戸研究所で戦時研究に従事し人体実験を行った科学者を演じ、その後、『Angels in America』『デカローグ』と新国立劇場制作の大作への出演が続く坂本慶介、NHKドラマ『仮想儀礼』などで演技の実力が高く評価されている次世代ヒロイン川島鈴遥、『レオポルトシュタット』、二兎社『パートタイマー・秋子』『デカローグ』など話題の舞台への出演が続く田中亨、詩森作品に数多く出演している実力派 杉木隆幸、そしてナイロン100℃所属、舞台や映像で活躍中の廣川三憲という充実のキャストで挑む。

詩森ろばコメント

神を持つという生活をしたことがありません。なので1995年に起った事件に足元が崩れ落ちるような衝撃を受けました。高校の同級生にいそうな同世代の頭のよい、優し気な若者たちが起こした無差別テロ事件。しかし演劇にすることもなく30年はあっという間に過ぎました。そこにまたひとつの衝撃的な事件が起こりました。書かなきゃいけないんじゃないか、と思いました。
と同時に、何十年も前に、うちの母と祖母が、不思議な集会に出ていた姿を不意に思い出したのです。たくさんのひとが泣きながら自分を救ってくれた奇蹟の話をしていた。小学生のわたしはその様子を窓の向こうがわから見ていた。
「ムカンケイナンカジャナカッタジャナイカ」
寄る辺ない夜、母が恋しくて自分の身体を傷つけていないと保てなかった子供や、朝、満員電車の中で、ビニール袋に傘を突き立てた若者が、わたしがどこかで捨ててきたもうひとりの自分なのだとしたら。わたしは書こうと思います。山奥にある「ニューヘイブン」という架空の宗教施設、そこで育った子供たちの物語を。

ものがたり

青年は目を覚ますと、精神病院にいた。自分がなぜここにいるのか、自分が誰なのかさえ青年はわからない。そばにいるのは、精神科医と夢とも現実ともわからない少女である。
ある日、精神科医の元を弁護士が訪ねてくる。国選で青年の弁護士となった彼は、保護室にあり「心身喪失状況」の青年と面会することもできていない。
4人の会話は迷走し、もつれ、記憶と現在と精神を行ったり来たりしながら、青年の苦しみと、結果犯してしまった犯罪のかたちが浮かび上がる。

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