【市川市】おいしい井戸水が育む「一休しいたけ」福祉事業所きのこ栽培農園に匠の技あり
千葉県市川市の北部・梨畑が広がる自然豊かな地域に、株式会社一休堂が運営する「19(いっきゅう)工房/きのこ栽培農園」が誕生して11年。同市初の就労継続支援A型事業所として、主に知的・精神障害をもつ利用者がしいたけ栽培や農作業に携わっています。「おいしくて安全な市川産しいたけを広く知ってもらいたい」。事業所でサポート業務にあたりながら販路拡大を目指す、支援員の鷹野紘子さんにお話を伺いました。
※記事中の価格はすべて税込み
目次▼ 就労継続支援A型事業所とは?味自慢のしいたけが生まれる農園を訪ねて ▼ 大きくて肉厚ジューシー!「一休しいたけ」は、ここで購入できます ▼ 障害特性を受け入れ、生き生きと楽しく働き可能性を広げる場であり続けたい
「就労継続支援A型事業所」とは?味自慢のしいたけが生まれる農園を訪ねて
北総線「松飛台駅」から徒歩15分。
「19工房/きのこ栽培農園」(以下19工房)の無人販売所があります。
19工房は、2012(平成24)年10月、市川市で初めての就労継続支援A型事業所として開設されました。
就労継続支援A型事業所とは、障害や病気をもつ人と雇用契約を結び、就労機会を提供したり、必要な訓練や支援を行ったりする福祉事業所のこと。
19工房では、利用者を「従業員」と呼び、自立して仕事ができる環境づくりに取り組んでいます。
現在、37人の従業員がしいたけの栽培、収穫、検品、出荷までのすべての作業を担い、労働の対価として、最低賃金法で定められた時給を受け取っています。
こちらはハウス内の様子。
しいたけ栽培に望ましい自然環境を再現するため、霧を発生させています。
「事業所を開設した場所に井戸水が湧いていたので活用しています。水道水特有のカルキ臭がない、風味の良いしいたけに育つんですよ」と、支援員の鷹野紘子さんは胸を張ります。
ハウスで一年中収穫できる菌床しいたけですが、朝晩と日中の寒暖差が大きい季節には生育が盛んになり、出荷作業に追われる忙しい日々になるといいます。
従業員の約半数が、統合失調症やうつ病などを抱える精神障害者という19工房。
「それぞれの障害特性(特徴)に応じて、時にはひとつの作業を分解し、無理のないよう仕事を担当していただいています。一般就労していた方も多いので、知識や経験、得意なことを生かして互いに協力し合っており、中には『匠』と呼ばれるほどしいたけ栽培の技術がすぐれた従業員もいます」
鷹野さんは穏やかな笑顔でそう話します。
大きくて肉厚ジューシー!「一休しいたけ」は、ここで購入できます
19工房で栽培する「一休しいたけ」は、味の良さはもちろん、肉厚なカサの部分はジューシーで歯ごたえがよく、茎もやわらかいと評判です。
一休しいたけを購入できる場所のひとつ、市川市役所庁舎内の「福祉の店」。
同市内の福祉事業所が出店しており、19工房も月に一度、しいたけや小物、雑貨などを販売しています。
「販売の仕事が好き」と話すのは、同事業所に勤務して約半年の飯田さん。
梨農家に育ち、農業の知識が豊富で、生産現場において従業員らをけん引する存在です。
こちらは船橋市習志野台の「おやつカフェkoyausagi」。
カフェ店主の長島さんと鷹野さんが顔なじみだったことから月1~2回の出店が実現しました。
「しいたけを購入してくださったお客さまが新しいお客さまを連れて来てくださる、そんな口コミの力、住民の皆さんのつながりを感じる地域ですね。一日中とっても楽しいです」と、鷹野さんと飯田さんはそろって笑顔を見せます。
おやつカフェkoyausagiでは、一休しいたけ販売日だけの特別なお楽しみも!
「ごちそうしいたけバーガー」(390円)と、「しいたけの腸活スープ」(450円)です。
手づくり「ほっぺパン」の中には、歯ごたえを残し、つやっと照り焼きにした立派なしいたけ。
定番人気メニューのきんぴらも隠れています。
規格外のしいたけを使用したスープは、素材の香りを生かした優しい味わい。
相性は言うまでもなく抜群の、この日だけ出合えるぜいたくな2品をぜひ存分に楽しんでいただきたいです。
他にも、船橋市行田の「農産物直売所ふなっこ畑」、同市「押木養鶏場」、千葉大学柏の葉キャンパス「ノウフクマルシェ」でも一休しいたけの販売があるとのこと。
出店情報などの詳細はインスタグラムを参照してくださいね。
障害特性を受け入れ、生き生きと楽しく働き可能性を広げる場であり続けたい
一休しいたけをはじめとする農産物などの販路開拓や、従業員のサポート業務に携わる支援員の鷹野さん。
「みなさんが生き生きと働いている姿が印象的でした」と、初めて事業所を訪れた日のことをあたたかい笑みで振り返ります。
「10年以上、社会から離れていた方が『仕事が楽しい』と働く姿、一般就労を目指してがんばる姿や、新しい従業員が作業に参加すると教え合ったり励まし合ったりする光景にこちらが勇気をいただいています」
それぞれの得意分野を生かした新しい試みも進行中だといいます。
しいたけを栽培するハウス脇に、従業員が手ずから作った畑もそのひとつ。
「夏はゴーヤ、きゅうり、ピーマンなどを収穫し、無人販売所に並べることができました。これからの季節は大根、にんじん、ほうれん草などを育てる予定です」
「自分で誇れる仕事をする」という理念を掲げ、従業員たちが理解し合い、協力し合いながら運営を続ける事業所。
時に立ち止まりながらも、精一杯、自分の仕事に向き合う従業員の皆さんと、伴走する支援員の取り組みが実を結び周知が進む一休しいたけを、あなたも味わってみませんか。
株式会社一休堂 住所/千葉県市川市大野町3-1816-5 アクセス/JR武蔵野線「市川大野駅」より徒歩2分 電話番号/047-713-7364 ホームページ/http://www.ikkyudo.co.jp/ インスタグラム/@1910kinoko
就労継続支援A型事業所19工房/きのこ栽培農園 農園所在地/千葉県市川市大町81 アクセス/北総線「松飛台駅」(出入口2)より徒歩15分 電話番号/047-727-8835