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室生寺のそば、明治4年創業の「橋本屋」がストーリーに満ちていた / 良すぎる “旅館の例のスペース(広縁)” のある部屋

ロケットニュース24

奈良の室生寺のそばに、ガチでお勧めの料理屋がある。明治四年に創業の「橋本屋」だ

私は当初、食事だけが目的だったのだが、ここには興味深い要素が食事の他にもあることが発覚! 語られるべきストーリーに満ちたスポットだ!!

・いざいざ奈良

私が「橋本屋」を訪れたのは、JR東海「いざいざ奈良」大和四寺編のプレスツアーの道中。

室生寺の周辺にいくつかある食事処から、JR東海が昼食の場に選んだのが「橋本屋」だったのだ。

山菜や、大和芋を使った とろろ料理で評判のお店ということで、私もこちらの山菜ランチ(2300円)を頂いた。

室生寺の境内は広い。歩けば疲れてお腹もすくことだろう。ここの山菜料理は丁寧な味付けで、内臓から四肢に染みわたるタイプの美味さだ!

大和芋の磯部揚げはねっとり&むっちりな初めての食感で、こういうものもあるのか……と、食の経験値があがった。

・土門拳

そんな感じで食べ終え、周囲が歓談に興じはじめた時、私はその場を抜け出し、1人お店の人の元へ。ここはもっとよく見て回るべきスポットな気がしたので、詳しく話を聞きたくなったのだ。

理由は座敷の壁に複数飾られている、写真家土門拳による書だ。

私は特に作風が好みとかではないので、彼の業績を細かく把握しているわけではない。ただ、小学生の頃から名前は把握していた。雑誌や資料集などに載っている歴史上の著名人の写真に、撮影者としてクレジットされていたからだ。

まあ、当時やっていたガンダムの主人公を想起させる名前だったから強く記憶に残っていたという可能性も、否定できないが。

何にせよ写真に興味のない小学生がしょっちゅう名前を目にする写真家は、間違いなくレジェンドだ。その書が飾られている料理屋なのだから、料理だけに注目するのは勿体ないというもの。

・老舗旅館だった

ということで話を聞くと、「橋本屋」は明治四年(1871年)からコロナ禍までの約150年間、旅館として営業していたそう。

緊急事態宣言の発令に伴い、2020年に宿泊営業を自粛したのだ。以後、食事のみ提供となっている。

廊下の一角に、宿泊した著名人の名前が書かれていた。そうそうたる面々だ。高浜虚子に水原秋桜子、池田満寿夫など、文化人が多いようだ。

中でも土門拳は特に「橋本屋」を気に入ったようで、室生寺の撮影に際し、たびたび宿泊していたという。壁にかけられた額入りの書などは、そういう縁によるものだったのだ。

旅館は再開しないのですかと聞くと、もう風呂を焚くのも止めてしまって久しく、なかなか難しいとのことだった。

そのような会話をしていたら、2階へ案内された。良い部屋を見せてくれるという。やってきたのは、「石楠花」という部屋だ。

かつては宿泊部屋だったことが構造から察せられる。

こちらの部屋だが、窓側の眺めが特別なのだ。旅館の “例のスペース” こと広縁の外は室生川。そして目の前に見える赤い橋!

この橋は、実質的に室生寺への玄関な、太鼓橋だ。これほどの完成度が高い眺めを持つ広縁は、そう無いだろう。

この部屋は、どの季節も素晴らしいに違いない。個人的には、特に真冬の雪が降る日の眺めは、最強に渋くて格別のものな気がする。

今となっては泊まることのできないのが残念だ。しかし美味い料理は健在。泊まれずとも、眺めの良い部屋で食事はできる。このあたりを訪れた際には是非とも利用してみてくれ!

参考リンク:橋本屋、いざいざ奈良
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

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