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高校球児が学童野球の練習試合運営 試合待ちのチームは野球教室 “宝”を育てる初の試み

Shizuoka

富士高校野球部は学童野球チームの選手と交流

■学童野球3チーム招待 富士高校が野球振興活動

一見、週末のありふれた光景に見える。よく見ると、野球の将来につながる珍しい取り組みだった。静岡県富士市の富士高校で、学童野球のチームを招いた練習試合と野球教室が開催された。試合の運営も野球教室の指導も担当したのは野球部員。富士高校が進める野球振興活動の一環として初めて取り組んだ。

【実際の写真】富士高校野球部は大谷グラブをきっかけにした野球教室も開催

静岡県東部屈指の進学校として知られる富士高校は、野球を通じた地域貢献を積極的に進めている。チームを率いる稲木恵介監督は前任校の三島南の頃から地元の園児や野球未経験の小学生を対象にした野球教室を開いている。

競技の普及や地域貢献活動は富士高校で11回目、三島南時代を含めると47回目となった。今回は初めて、学童野球チームに声をかけた。その狙いを説明する。

「園児や野球未経験者の活動は参加者が増えて軌道に乗ってきました。一方、意外と交流を持てていないのが学童野球です。今回の取り組みは今までの競技普及ではなく、子どもたちに野球を長く続けてもらう目的があります」

審判やアナウンスは富士高校野球部の選手やマネージャーが担当

■審判やアナウンス 試合の運営は全て野球部が担当

学童野球チームの多くは土日に公式戦や練習試合を入れている。高校側から野球教室の開催を呼びかけられても、試合を優先するケースが多いという。そこで、稲木監督は富士高校のグラウンドを会場にして学童野球の練習試合を行い、野球教室と組み合わせて高校生と交流する機会を設けた。

富士高校が声をかけたのは、富士市で活動する大淵少年野球スポーツ団、今泉少年野球スポーツ団、三島南シャークスの3チーム。2チームが順番に試合をして、空いている1チームは野球教室に参加するスケジュールが組まれた。稲木監督は「違う地区のチームも招いて、新しい仲間ができれば良いなと思っています。高校生との交流をきっかけに野球の楽しさや達成感を知り、高校まで野球を続ける子どもたちが増えてほしいです」と語った。

試合の運営に稲木監督ら大人は一切かかわらない。審判や選手のアナウンス、ボールボーイやグラウンド整備など、全ての役割を野球部の選手とマネージャーが担った。

野球教室は稲木監督が大まかなタイムスケジュールと指導のポイントのみ選手に伝え、具体的なメニューは選手たちが考えた。稲木監督は「再現性が大切な高校生と違って、ゴールデンエイジと呼ばれる小学生は動きのバリエーションを増やす練習が重要になると選手にはアドバイスしました」と明かす。神経系が発達すると言われる小学生世代はゴールデンエイジと呼ばれ、様々な動きを経験することで運動能力が向上する。稲木監督は「極端な言い方をすれば、高校生は1つの動きを100回再現するための練習が重要ですが、小学生は100種類の動きを1回ずつ練習する方が将来に生きます」と説明した。

試合をしていないチームは野球教室

■参加した学童チームは感謝「野球への取り組み方学べた」

選手たちは一塁ベースの踏み方など、打球や場面に応じた走塁のコツを解説。守備ではフライを追う時の声の出し方などを一緒に練習した。声を出すのことに躊躇(ちゅうちょ)している小学生には「練習は間違えても良いから、『OK』、『任せた』というように声を出してみよう」と声をかけ、手本も見せた。

参加した大淵少年野球スポーツ団の鈴木克洋監督は「こうした取り組みは初めてで、有意義な時間でした」と富士高校野球部に感謝した。高校生との交流は小学生が技術的な指導を受けられる以上の効果があると話す。

「私たちのチームでは、時間がかかっても子どもたちがグラウンド整備をするなど、大人の力を借りず、できることを増やしていく方針で活動しています。きょうは高校生がグラウンド整備をしたり、ボール拾いをしたりする姿を見て、野球への取り組み方を学べたと思います。私たち指導者よりも年齢が近い高校生だからこそ小学生に響く部分もあります。高校生から教わることで、小学生も年下のチームメートへの声掛けや気配りが身に付くと考えています」

富士高校野球部は野球未経験者を対象にした野球教室に加えて、今後も学童野球チームと交流する機会をつくっていくという。「今、野球をしている子どもたちは高校野球や野球界にとって宝です」と稲木監督。せっかく始めた野球を小学生で終わらせないように、地域の宝を大切に育てていく。

(間 淳/Jun Aida)

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