【韓国時代劇】朝鮮王朝一の女性遍歴「燕山君」は意外なロマンチストだった(暴君のシェフ)
新作ドラマ『暴君のシェフ』(tvN/2025)が、本国はもちろん日本でも熱い視線を浴びている。
主人公を演じるユナ(SNSD)の繊細な感情の演技はさることながら、相手役イ・チェミンの説得力ある表現の1つ1つが大きな話題に。冷徹でありながら、心に深い傷を抱えるヨンヒ君イ・ホンを立体的に描き出すだけでなく色気まで放っているとし、ファンを量産している。
そんな彼が演じているのは、燕山君(ヨンサングン)をモチーフにしたと言われているキャラクター。映画やドラマなどで取り上げられる機会が多く、韓ドラファンや韓国の歴史に詳しい人ならご存じだろう。朝鮮王朝一の悪名高い暴君で、華やかな女性遍歴を持っていることで知られる有名な歴史的人物だ。
どちらかというと世間には良いイメージを持たれていないが、どうやら意外にも、ロマンチストな一面を持っていたよう。史実から、あまり知られていない彼の素顔を覗いてみた。
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『暴君のシェフ』と燕山君
『暴君のシェフ』に登場するヨンヒ君イ・ホンは架空のキャラクター。制作者側は、燕山君をモチーフにしたとは明言しておらずあくまで架空の人物だが、ヨンヒ君という名前が燕山君を彷彿とさせる。
また、原作がウェブ小説『燕山君のシェフとして生き残ること』である点も、彼との関連性を感じずにはいられず、最大の特徴である“暴君”というポイントまで同じだ。
その他、母親との悲しいエピソードやトラウマを抱えている点も共通しており、ドラマファンの間では、イ・ホンは燕山君をモデルにしたとみられている。
王妃をこよなく愛したロマンチスト
そんな彼の素顔は、暴君というワードからは連想しにくい、“ロマンチスト”。
どうやら王妃シン氏をとても大切に想っていたようで、彼女との間にできた子どもたちにも並々ならない愛情を注いだという記録が残っている。
朝鮮王朝一の女性遍歴を誇る王と言われるだけに、後宮は全部で21人。驚くべき数字だが、そのうち子どもをもうけたのは3名のみで各1人ずつだ。
シン氏との間に8人の子を授かっているのをみると、彼の王妃への愛が格別であったことを物語っているといっても過言ではない。
多くの女性と浮名を流したものの、本当に愛したのは、1人だけだったと言わんばかりだ。
強い絆で結ばれた燕山君と王妃
また朝鮮実録には、彼の異母弟である晋城大君が王に擁立されて燕山君が廃位、彼と王妃はそれぞれ別の場所へ流刑されることになったのだが、王妃は「燕山君と一緒に行かせてほしい」と泣いてすがったと記録されている。
側室がいてもおかしくない時代であったとはいえ、21名も後宮がいる男性を愛し続けたシン氏。2人の強い絆を感じさせるエピソードの1つといえるだろう。
そして燕山君もまた、シン氏を深く愛していたようで、死に際には「王妃に会いたい」という言葉を残してこの世を去ったのだとか。これ以外には特段話したことはなかったと記録されている点も、王妃への強い愛情を感じさせる。
本作で紹介した内容は、歴史書によって一部異なる部分があり、実際にどうであったのか真実は分からないが、燕山君はプレイボーイな一面を持ちながらも、王妃を特別な存在として大切に想っていたよう。
どんな人物であったのか、遠い昔に思いを馳せながら『暴君のシェフ』をご覧になるのも面白いかもしれない。
(ライター/西谷瀬里)