「自分にささやかなご褒美の時間を。」エッセイスト・松浦弥太郎さんが実践する“毎日を豊かにする習慣”
日々の生活に追われて余裕がないと感じる人も多いのではないでしょうか。エッセイストの松浦弥太郎さんは、忙しい日々の中である時間を大事にしているそうです。詳しくお話を聞きました。
教えてくれたのは……松浦弥太郎さん
エッセイスト。セレクトブックストア「COWBOOKS」代表。2005年からの9年間『暮しの手帖』編集長を務める。その後IT業界に転じ、株式会社おいしい健康取締役就任。ユニクロの「LifeWear Story 100」責任編集。「Dean & Delucaマガジン」編集長。「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。
「過ぎない」ように自分を守っていく
――40代前後の女性は目の前のタスクや問題に日々向き合い、余裕のない日々を過ごしている人も多いと思います。松浦さんの近著『50歳からこんなふうに』で印象的だったのが、“日常に起きるいろいろな問題の原因をつきつめると、「過ぎる」に行き着くのではないかと、最近の僕はほぼ確信しています。”という一文です。
松浦さん 「働き過ぎない。がんばり過ぎない。食べ過ぎない。運動し過ぎない。真面目になり過ぎない。『過ぎない』ということは、すごく大事ですよね。過ぎてしまうと、何かしらの問題の原因になります。過ぎないように自分を守っていくのはとても大事なことだと思います」
松浦さん 「私たちの悩みのほとんどは、人間関係だということを考えると、『他人に期待し過ぎない』ということにも気をつけておきたいですね。期待すること自体は、悪いことではないんです。ただ、期待は、ときにエゴにもなる。相手に期待し過ぎると、苛立ちやストレスが生じる原因になります。『なんでわかってくれないのだろう』『どうして〇〇しないのだろう』という思いは、多くの場合、期待し過ぎです。人間関係においては、他人に期待し過ぎないということがとても大事な気がします」
食べ方と眠りは自分を知るバロメーター
――行き過ぎた自分に気づく方法はあるのでしょうか?
松浦さん 「もっともわかりやすいのは、食事ですね。食べる内容ではなく、どう食べているかを眺めてみる。たとえば、何かをしながら食べてたり、食事を楽しめていなかったり。食事を粗末にしているときは、ちょっと要注意。余裕がなくなっているかもしれません」
松浦さん 「もうひとつは、睡眠ですね。1日が終わってベッドに横になるとき、今日起きた出来事をふと思い出すものですよね。そんなとき、イライラしたり、急に怒りが湧きあがったりして、穏やかに眠れそうもない。1日をハッピーエンドで終われないときは、何かが『過ぎている』のかもしれません。眠ることは、自分の状態を知るバロメーター。今日1日を感謝して眠れるのが理想です」
ささやかなご褒美の時間を持とう
――心に余裕をもつために、日々の生活でできることはありますか?
松浦さん 「仕事をして、家事をして、いろいろな心配事と向き合って。そんな毎日を過ごす自分に、ささやかなご褒美をあげることは大事です。人によってはバスタイムかもしれないし、音楽を聴くことかもしれないし、映画を見ることかもしれない。僕だったら、食後のおやつがご褒美です。こうした自分に対するささやかなご褒美の時間を考えて、つくってみるのもいいと思います」
松浦さん 「日々を過ごすのは大変で、きっとそれはみんな同じだと思うんです。だから、1日の終わりや、もしくは朝いちばんなど、ほんの少し自分を現実逃避させてあげてほしい。嫌なことを忘れられる時間を1日数十分でももつことが、自分を大事にして、愛していたわるということなのだと思います」
「過ぎる」ことがないように自分を眺めて、ささやかなご褒美の時間をもつ。それが、日々の大変なことをやり過ごし、のりこえる一歩になるのかもしれませんね。次回は、悩みや不安にぶつかったときに松浦さんがよく使っているある言葉についてうかがいます。
saita編集部