”スカイラインレッド”をまとい今も現役で走り続ける箱スカGT-R
旧車は、減ることはあっても増えることは決してない。ある意味、自然界における絶滅危惧種のようなもの。しかし、それでも保有者によって大事に守られている個体もある。日本を象徴する日の丸のような、鮮烈な赤をまとったGT-R──。現存するニッポン・ヴィンテージカーの頂点ともいえる名車をご覧あれ。
現存台数も驚くほど少ない箱スカの「赤いGT–R」
日本車として数少ない世界的な名車となった日産スカイラインGT-R。市販のスカイラインをベースに当時としては非常に珍しい直列6気筒ツインカム2000ccのハイパフォーマンスエンジンを搭載したスペシャルティモデルとして ’69年に登場。先代のプリンスS54型スカイライン2000GTを始祖にもち、レースマシンであったR380のGR8型エンジンをベースとしたDOHCユニット、S20型を搭載し、レースで大活躍したモデルだ。
そんな箱スカGT-Rだが、イメージするのはシルバーやホワイトという人も多いはずだろう。それもそのはずで、当時からシルバーやホワイトの出荷台数が圧倒的に多く、今でもこのボディカラーをイメージする人が多いことから、この2色が集中的に現存しているためだ。ところがGT-Rのボディカラーは他にも少数ながら存在する。ここに紹介するスカイラインレッドを纏った個体も、そんな珍しいボディカラーを今に残す貴重な一台だ。
’70年10月、スカイラインに2ドアハードトップが登場すると同時にGT-Rもハードトップがベースとなった。この車両は’71年式のハードトップで、プリンスガレージかとりの香取代表の奥様、聖子さんが個人的に所有する個体。ホイールがワタナベに変更されているほかは、オリジナルディテールを色濃く残している。赤いボディカラーが大好きという聖子さんは’03年にこの車両を入手して以来、この「赤いGT-R」を溺愛し、ご自身の運転でドライブを楽しんでいるそうだ。
1971 NISSAN SKYLINE HARDTOP 2000 GT-R(KPGC10)|S20型DOHC直列6気筒ユニットのレースモデルのディテールをもっと詳しく拝見!
レース用エンジンをデチューンしたS20型DOHC直列6気筒ユニットは、160馬力を発生する。
ソレックス製キャプレターを3連で装着。純正の赤いエアボックスが付属。
標準でタコ足となる部分を見ても、当時GT-Rが如何にスペシャルなモデルであったかがわかる。
GT-Rのブレーキはブースターレスとなる。
マフラーはテールだけでなく中間パイプもデュアルパイプとなる純正形状を忠実に再現したステンレス製。
取材車両は当時人気だったFET製のショックを装着する。
装備されるパーツの有無など、細かな差異があるものの、ダッシュ周りは基本的に他のモデルと同じデザインがベースとなる。ステアリングは革巻きの3本スポーク。
レースでの使用が前提のGT-Rはラジオすらオプション扱いだった。かわりにパネルが備わる。
スピードメーターは7500rpmからレッドゾーン。時計のかわりにこちらもパネルになる。
センターコンソールシフター手前の黒いパネルは通常モデルでリアデフォッガーのスイッチになる部分。パネルが備わるのはGT-Rのみのディテール。GT-Rのみの赤いシフトノブは5速部分が“OD”になる。
ダッシュ下にあるのはチョークのレバー。
アクセルペダルは踵を軸に踏むことができるオルガン式となる。
リアシートが備わるのが、市販車ベースであるスカイラインGT-Rの大きな特徴のひとつ。
フロントシートは背もたれが固定されたGT-R専用のバケットシートとなる。リアシートへの乗り降りはシートごと前方に倒しておこなう。
取材車両は助手席側も備わるが、GT-Rは助手席側サンバイザーすらオプションとなる。ミラーは鏡面が幅広く広範囲を見ることができるワイドタイプ。これは日産スポーツコーナーのオプション。
ルームランプはGT-Rでも標準で装備している。
【SPEC】
●全長:4330mm ●全幅:1665mm ●全高:1370mm ●ホイールベース:2570mm ●車両重量:1100kg ●エンジン形式:S20型(直列6気筒DOHC) ●総排気量:1989cc ●最高出力:160ps/7000rpm ●最大トルク:18.0kg-m/5600rpm
取材協力:プリンスガレージかとり